1994年10月発売
明治のおわり。群馬県前橋市のちいさな織物屋の末っ子として、裕福ではないが暖かい家庭で育った小野沢智和。進学の夢をあきらめきれない彼は、東京本郷にある老舗の茶問屋・南条家で書生をしながら、一高へ通うことになる。智和が仕えるのは、帝大へ進む貴臣という涼しげな切れ長の目が印象的な青年であった。旦那様にも奥様にも似ていないような、怜悧な美貌の-。周囲を拒み憑かれたように勉学する貴臣に、慈愛と尊敬を込めて仕える智和であったが…。
突然もちあがった抗生物質博物館設立プラン。展示の目玉にすべく、わが国初のペニシリン菌株を追い求める旅が始まった。忍びよる妨害の手、迫り来る危難。一体なぜ。菌株に何かの因縁があるとでもいうのだろうか。五十年を経た今、医学界をわき立たせ、同時に震えあがらせるペニシリンの秘密とは何か。
北欧の都で駐在武官が入手した極秘情報-ベルリン陥落後も滅びへの道をひた走る日本が、世界地図から抹消される。ストックホルムから、情報を携えて地球を半周する苦難の冒険行。『ベルリン飛行指令』『エトロフ発緊急電』に続く、第二次世界大戦三部作、ついに完結。
「火は、消せる。あきらめるには早すぎる」「畜生、開け。どうして開かないんだ」「生きてるの、返事して、お願い」「誰か、助けて…誰か」。最大瞬間風速88メートル、未曾有の大型台風が上陸したその夜、風が、炎が、そして管理人の男が、リゾートマンションの宿泊客を襲う。一夜のドラマを描く驚天動地のパニックサスペンス。
一九九七年八月、長野県にある野辺山天文台は、小惑星トータチスが従来の軌道を変えて、地球に接近していることを発見した。このままでは九九年の七月には地球に衝突することになる。それを回避すべく、ケープ・ケネディ基地など世界四カ所の基地から、核ミサイルがトータチスに向けて発射された。
呉林俊《オ/リムジュン》。詩人、画家、評論家。在日朝鮮人の彼が逝って21年になる。47歳であった。ひとつの躯に収まりきれない情熱とエネルギーが溢れて、人々は困惑し、風狂の人、混沌の人とよぶ。ピアノ教師の日本人妻の愛に支えられて力のかぎり戦った彼。彼の生涯は何だったのか。いま、改めて問う。
20世紀末、地球は未知の異星種族の手になる惑星破壊機械の襲来を受けて炎上、壊滅した。べつの異星種族に救出された数千人の人々は、太陽の軌道上の宇宙船に収容されて“銀河法典”の教育を受ける。この法典によれば、破壊機械を送り出してほかの惑星を壊滅させた文明は、みずからもまた滅ぼされなければならないという。地球壊滅から八年後、生存者のなかから選ばれたマーティンら八十五人の子供たちが復讐の旅に出た。
“銀河法典”の定めに従って復讐の旅に出た子供たち。母なる地球の仇敵をもとめる旅を続けること五年、ついに探索チームが破壊機械の発進元と見られる星団を発見した。いよいよ復讐のときだー子供たちは勇躍戦闘機を駆って問題の星団をめざすが、はたしてそこで、本当に地球を壊滅させた文明を発見し滅ぼすことができるのか。俊英ベアが奔放な想像力を駆使して壮大に描くSFスペクタクル。『天空の劫火』続篇登場。
おのれの出自を求める旅の途上でナズュレットがヴェロンニャ国王の命を救ってから五年。彼は、アーリンと名乗り男装して行動を共にしていた幼なじみの男爵令嬢と結ばれ、人里離れた庵でひっそりと暮らしていた。そんなある日、五人の刺客が庵を襲った。ナズュレットを貴族の落胤と知って、その存在を邪魔に思った者が送りこんだらしい。ナズュレットとアーリンは刺客の送り手と対決すべく旅立ったが…。三部作第二弾。
湾岸戦争の戦塵もまだおさまらぬころ、特殊部隊員を乗せた輸送機がサウジを飛び立った。彼らの任務はイラクの研究所を急襲し、恐るべき生物兵器を破壊することだった。ウェスターマン大佐率いる輸送機はイラクに進入、闇をついて砂漠の道路に着陸する。だが、特殊部隊が研究所に突入してみると、生物兵器の容器二つが持ち去られていた。しかも撤収のため飛び立った輸送機を思わぬ事態が襲う。見せ場連続の傑作冒険小説。
ひさしぶりに帰郷した伯爵ジョン・ロセンデールは、ヴァンゴッホ初期の《ひまわり》を探そうとしていた。四年前、この名画は母が売却する直前に盗まれてしまった。その犯人であると疑われたジョンは、海を放浪する旅へと逃げだしたのだ。だが母亡きあと、障害をもつ下の妹の面倒をみるために、行方不明の絵を見つけださねばならない。そう決心したジョンは何者かに命を狙われる羽目に。日本冒険小説協会大賞受賞の傑作。