1994年3月発売
刑法39条-心神喪失者ノ行為ハ之ヲ罰セス、2 心神耗弱者ノ行為ハ基刑ヲ減軽ス-これによって起訴猶予になった一人の女性が失ったものは何か?精神鑑定の問題点を鋭く抉る気鋭の書き下ろしミステリー。
漢武威流闘術を身につけ、九寸五分の鎧通しを武器に死客人稼業を続ける“夜霧のお藍”こと藍三郎は、もともと旅芝居一座の名女形だった。その眉目秀麗な彼が、暗黒街に生きているのには理由があった。幼い頃両親を惨殺した悪党を追い続けているのだ。藍三郎はつぶやく。「親父とお袋の仇敵が討てたら…、あとは、生きてる気もないんだ」-と。世間の悪党を闇から闇に葬る殺し屋“お藍”の阿修羅道を描く。
シカゴの大学教授のもとにイスラエルから届いた一通の手紙。七年前、不倫を犯して別れた妻からの、手放した息子への助力を訴える声に応えて男は過去へと旅立つが、病に冒され残された命はわずかだった。欧米でベストセラーの〈愛〉の問題作。
実業界の大物、相川操一の娘、珠子は東京で一二を競う美貌の持ち主、そしてその兄、守は探偵好きの大学生だった。だが、その平和な家庭にある日突然、災いが降りかかってくる。大女優、春川月子を惨殺した「赤いサソリ」が、魔の手を珠子に伸ばしてきたのだ。神出鬼没の殺人鬼に対する名探偵三笠竜介は、しかし再三、敵に苦汁を呑まされる。果たして、最後に笑う者はどちらか?
「俺と来るか」小さく、そう尋ねられて、悠一の瞳が揺れる。男の巧みな愛戯に溺れて、躯が心を裏切ったのか。それとも…。男の名は竜二。悠一の恋人である直人が少年院に入っている間、彼の面倒を見るようにと組が遣わした切れ者だった。やがて七年の歳月が流れ、衝撃的な事件が悠一の身に起きる-。
最初に見えたのは喉だった。濡れた肌の色で綺麗にそらされた喉。それから少し開いた唇-。高校生活二年目も終わり、春休みが始まったある日。羽根智矢は中学時代からの友人四人と、冬から計画していた旅行を実行に移した。だが山荘に彼らが足を踏み入れた途端、洞院遥はある予感に襲われた。“ここに来てはいけなかった”と-…。時間を越えた哀しくも切ない愛を描いた表題作他、書き下ろしを含むモダン・ホラー傑作集。
イギリスでは「大切な友達」のことを「一杯の紅茶」と言う。お花見をかねて2年ぶりに集まる25歳、高校の仲良したち。この6人が揃えば、あの頃と同じ時間が流れるはず…。紅茶の味の書き下ろし。
ふとした出会いから玉のこしに乗った天涯孤独のヒロイン。そころが、夢心地の彼女の前に、兄だと名乗る史上サイテーの三兄弟が現われた。とんでもない兄たちのおかげで迷惑ばかり。しかし今までひとりぼっちで家族愛に飢えていた彼女の心に何かが芽生え始める…。「本当の幸せ」を問うハートフルコメディー。
バイカル湖から流れくるアンガラ河のほとり、マチョーラ村がダムに沈む。着々とすすむ故郷の焼却処分にあらがい、滅びゆく村と運命を分かち合う老婆たち。環境保護運動にも力をそそぐ作家がシベリヤの大地に生きる農民の姿に未来への希望を託した渾身の力作。
2010年、宇宙船アレクセイ・レオーノフ号はいま地球を旅立とうとしていた。10年前に遥か木星系で宇宙飛行士4人が死亡、1人が失踪した事件を調査し、遺棄された宇宙船ディスカバリー号を回収することがその任務だった。果たして真相は究明されるのか?そして、木星軌道にいまも浮かぶ謎の物体モノリスにはどんな奇怪な目的が秘められているのか…。前作を上回る壮大なスケールで全世界に興奮を巻き起こした傑作長篇。
12世紀英国。ハンティントン伯爵家では、十字軍遠征から生還した嫡子ロバートを囲む祝賀会が開かれていた。領主の娘マリアンは一縷の望みを胸にこの祝賀会に駆けつけた。ロバートなら、同じ十字軍で死んだ父の最期を語ってくれるはずだ。かくしてマリアンは出会った、後のロビン・フッド、己の恋人となる運命の男と…。伝説の人物たちの姿を生き生きと甦らせた新たなるロビン・フッドの物語、ここに登場。
「モンゴール軍・クム軍二万が、ケイロニア軍より三モータッドのラインに到着しだい、時をうつさずエルザイムの砦に総攻撃をかける」グインはついに決断を下した。誘拐されたシルヴィア皇女を救出するためには、目の前に立ちはだかるエルザイム城砦を、完膚なきまでに叩きつぶさねばならない。焦燥を内に秘めて、豹頭の戦士は黒竜騎士団精鋭の先頭に立った。シルヴィア姫の行方は?今ふたたび運命の変革の時が迫る。
英国地中海艦隊の本拠地マルタ島へ赴いたハーフハイドを、またもや過酷な任務が待ち受けていた。初の指揮艦を操り、ロシア海軍によって黒海へ連れさられた英国商船を奪回せよというのだ。ハーフハイドは黒海への入口を守るトルコ軍要塞からの激しい砲撃にさらされながらも侵入に成功する。だが、そこには彼に積年の恨みを抱くゴルジンスキー大公と彼の率いる強大なロシア艦隊が待ち構えていた。海洋冒険シリーズ第4巻。
アメリカの要人らを乗せた豪華客船ブラック・シーが、シンガポール出港直後ハイジャックされた。犯人は、イスラム王国建設を目指すカリスマ的指導者テンクと海の民たち。附近の海域を知りつくした彼らは、客船をいずこともなく連れさり、見返りに最新の武器を要求してきた。米海軍は捜索のためスチュアート中佐指揮のフリゲート艦デケーターを急派。かくして最新鋭の軍艦と海の民との知力を尽くした追跡線が開始される。
ハイジャッカーたちは、ハイテク兵器を嘲笑うかのように捜索の手をかわしながら、人質を一人ずつ殺害し続ける。デケーターは、彼らの攻撃で艦載ヘリを失い、さらには機関に損傷を受け、航行すら困難に。だがシンガポール当局が犯人グループの一人を逮捕し、しだいに彼らに近づきつつあった。はたして満身創痍のデケーターは人質が全員殺される前に客船を発見できるか?灼熱の多島海に展開する冒険サスペンスの一級品。