1994年9月15日発売
冬も間近いセント・ローレンス河を溯って、ペイラック伯爵の率いる船団はケベックへの旅を続ける。かつて二人を追放した祖国、フランスの領土ケベック。アンジェリクの不吉な予感の通り、敵は霧深い峡谷に、恐ろしい死の罠を用意していた。夫を救うため、彼女は敢然と敵に立ち向かうが…。
船団が寄港したフランス領の入植地ターダサクで、アンジェリクの許へ一通の手紙が届けられた。「忘れることのできない、あなたのエメラルドの目…」熱い思慕の情をつづったその恋文の主は彼女と夫ペイラック伯爵の運命を握るルイ十四世の特使であり、過去の世界から現れた意外な人物だった。
血みどろの戦乱をくぐりぬけ、卑弥呼は邪馬台国の王となる。盲目ながら気品と美しさを備えた女王に対して、周辺の国は並々ならぬ関心を寄せる。危い女王を全力で補佐する老将伊支馬の奮闘と異相の愛。そして卑弥呼の決断のときが来た。謎の王国と女王のありようを新しい視点で描き上げた、問題の秀作。
神楽坂の芸者桃太郎との出会いは、新進作家泉鏡花の前途に大きな影響を与えた。絶対的権力をもつ師の尾崎紅葉がこの恋に猛反対した件は、のちに「婦系図」のお蔦と主税に投影される。だが桃太郎は結局鏡花の妻となり、苦難の鏡花を側面から支え続けた。耽美小説の祖泉鏡花の原点と生涯を精密に描く評伝。
明朝未期の海商を父に、日本人を母に持った鄭成功は、海上貿易の巨利を背景に、父を屈伏させた清朝と対決する。〓門を奪って拠点にし、また台湾を占拠していたオランダを追放して台湾解放もなし遂げた。だが彼の願った明朝の復活は夢に終る。日中混血の海将の波瀾に満ちた生涯を日中双方の視点で描く傑作。
銀河のあちこちで謎のミュータント、リバルド・コレッロの暗躍がはじまっていた。強力な催眠暗示で人々をあやつり、生体フィクティヴ転送機ともいうべき能力をもつコレッロの正体をつきとめるため、ローダンは本格的調査に乗りだす。おりから、惑星アステラで人間があやつり人形のようになる事件が発生した。太陽系秘密情報局の特殊工作員ノーマン・ヨーダーは、自由商人の協力を得て単身アステラへの潜入を試みたが。
第一次大戦さなかの1917年、イギリスのスパイをしていた美貌のユダヤ系アメリカ人ルース・メンデルソンは、家族とともにトルコ軍に逮捕されてしまった。しかも、イギリスのエルサレム進攻作戦をスパイしろと命じられる。拒否すれば、父の命はない。ルースは、イギリス軍が駐屯するカイロに潜入するが…アラビアのロレンスなど実在の人物をたくみに織りこみ、非情な運命の渦にまきこまれたスパイの姿を描くサスペンス。
一週間千ドルで、コブラという男を捜してほしいーフラッドと名乗る小娘の依頼は、バークにはうまい話に思われた。だが彼女は、幼児虐待殺人鬼コブラに復讐を誓う女性武術家だった…前科27犯のアウトロー探偵バークが、聾唖の武術の達人、黒人の預言者、マッドサイエンティスト、魅惑的な男娼らをひきつれ、NYの暗黒街で最低のうじ虫を追いつめる。ポスト・ネオ・ハードボイルドの旗手ヴァクス、衝撃のデビュー作。
CIAを引退し、身辺警護コンサルタントをしているナーマンは、ホロコーストを生きのびたユダヤ人で、ナチ・ハンターとしてその名を轟かせていた。ある日、彼のもとにドイツ連邦情報局のフォアシャーゲが訪ねてきた。殺し屋がナーマンを狙っているから気をつけろというのだ。殺しを命じたのは、なんと現ドイツ首相ヴァルトナーだという。
ソロモンは飛んでいった。ソロモンはいってしまった。ソロモンは空を突っ切っていった。ソロモンは故郷に帰った。アメリカ中西部の町に生まれ育った黒人青年ミルクマンは、伝説の歌のごとく自由と幸福を手にすることができるのか。はたして旅の果てに何を見出すのか。生と死の幻想を鮮烈に描く、ノーベル賞作家トニ・モリスンの代表作。全米書評家協会賞&アメリカ芸術院賞授賞作品。
1995年11月23日の感謝祭当日、三沢・横田・厚木の米軍基地を、完全武装の自衛隊が突然襲撃、無血占領した。米国の経済的報復措置や、核燃料処理施設への米軍機墜落などに業を煮やした日本政府が、基地返還を求めて起こした行動であった。一方、奪還を宣言した米国は、先制攻撃でステルス爆撃機B-2から対地ミサイルを放つが、国産VTOL艦上戦闘機「海燕」によって撃墜されてしまう…。
日米経済界トップが和平工作に奔走する最中、米軍第7艦隊が政治的事情で日本の防衛ラインを強行突破した。無弾頭の対艦ミサイルでこれを迎え撃ち、米軍のイージス艦、空母「インディペンデンス」のほか、数多くを葬り去った自衛隊だったが、その腹中は両軍の被害を最小限に止めることと、戦争の政治的解決にあった。しかし、徒に時を費やす頑迷な両国首脳のために、戦局は最悪な方式へと進んでいく…。
変転きわまりない戦乱の世に、満々たる野望と闘志で天下を窺い、京へ上る野武士の一団があった。満身創痍の豪放な武士・中西太兵衛、その太兵衛に兄事を誓った美丈夫・豊田小隼人を先頭に、同道を願い出た牢人達がつづく。時は永禄元年、織田信長二十五歳、徳川家康十七歳、上杉謙信二十九歳の頃である。名将ひしめく戦国時代の歴史を塗替えたかも知れぬ男達の数奇なる運命を描く本格的長篇時代小説。
“太平洋一年戦争”のミッドウェー海戦で、大勝利をおさめた日本は、連合国側と対等な講和を結んだ。戦後の大不況で東北地方を中心にソ連の支援を受けた革命勢力は、東京都の東半分と茨城県、埼玉県から北に東日本共和国を建国し、西日本帝国と対峙した。-1998年12月、西日本帝国海軍中尉・愛月有理砂は非常呼集で、三宅島沖の母艦〈赤城〉に運ばれ、内容も知らされず出撃した。
柳生石舟斎に討たれた影丸、霧丸の忘れ形見萩丸は、肥前唐津で成人した。長ずるにつれ剣の奥義極め、やがて柳生の里へ。だが宿敵石舟斎はすでに他界。萩丸の怨情は嫡子宗矩に向けられた。江戸へ出た萩丸は、二代将軍秀忠の剣術指南を務める宗矩に、果たし合いを挑んだ。柳生新陰流の一閃に、萩丸の秘剣〈松の葉〉は…。
第5回鮎川哲也賞受賞作 平穏な生活を送っていた女子大生に送り付けられた写真。記憶の底になにやら蠢くものを感じたヒロインの身に、徐々に恐るべき災厄が降り懸かってくる。予断を許さぬ結末へと読者を誘う長編推理小説の秀作
この夏は、僕にいくつものことを教えてくれた。大人になるための方法を、人の愛し方や裏切り方を、家族のことを、かけがえのない友だちがいる幸福を、そして、どんな夏も永遠に続くことはないという悲しい真実を。