1994年9月発売
関が原の後、石田三成の義弟の妻だった真田幸村の実妹の於妙を娶り、睦まじく添いとげた滝川三九郎。その、運命に逆らわずしかも自己を捨てることのなかった悠然たる生涯を描いた表題作。父弟と袂を分かって家康に仕え、信州松代藩十万石の名君として93歳の長寿を全うした真田信之ほか、黒田如水堀部安兵衛、永倉新八など、己れの信じた生き方を見事に貫いた武士たちの物語8編。
恋があなたのパパなのに、恋は身を軽くするものなのに…。まり子は三人の男性に等分に恋をして、妊娠して、結婚した。ふわふわと膨らむ女の子の夢、膨らんだお腹、「生命」と「日常」の重さ。恋する「人魚姫」のせつない想いを結晶させた、野中柊ワールド。
あたしの名前はフライデイ。職業は戦闘伝書使ー秘密文書を正確かつ迅速に運ぶのが任務。でも、この仕事は危険がいっぱい。先日も謎の武装集団に捕えられ、手ひどい拷問を受けたばかりだ。はやく休暇を取って、ニュージーランドに住む3人の夫のもとに帰りたい。だけど、彼らはどう思うだろう。あたしが遺伝子操作で作られた人工人間だと知ったら…ハインラインの著作中、最も魅力的なヒロインが活躍する傑作長篇。
はるかな昔、幻獣たちが暮らすクレタ島の森ー。心優しきミノタウロスの若者ユーノストスは、美しい木の精コーラに恋をした。だが、いつか人間の恋人と結ばれることを夢見ているコーラは、ユーノストスに色よい返事をしようとしない。そんなある日、瀕死の重傷を負ったクレタの王子アイアコスが森に迷いこんできた。彼がコーラと出会ったとき、悲劇は始まった…。幻想の詩人スワンが贈る『ミノタウロスの森』の前日譚。
ここは英国のカントリーハウスの一室。一堂に会すは、退役大佐、伯爵夫人、神父、英国の大富豪、等々。この中に冷酷な殺人犯が潜んでいるのだ…と思いきや、実はここは老人ホーム。殺人などは起こっていない。すべては探偵小説好きの老女の妄想なのだ…と思いきや。英国ミステリ界きっての俊英が贈る、才知とたくらみに満ちた本格ミステリ。
縄田一男氏をして「逸品との心踊る邂逅。剣の修羅場を通して瞬時にして結ばれる高誼を、実に巧みに、そして確実に描いている」と評させた宮本昌孝。続刊を心待ちされた第二巻も、期待に違わず気合の篭った作品に仕上った。多言は無用。義輝の雄渾孤高の旅へいざ。
生体肝移植者が瞬時に老化し老衰死した。臓器移植企業クレアが開発したドナーアニマルが逃走し、弟子屈に現れた。道警本部刑事課長補佐の時、クレアに接触し左遷された摩周署防犯課長豊城警部は、世界新聞記者を偽称する軍畑泰司と組み、秘密保持のためドナーアニマル抹殺を企む巌童勉と部下のジラフに挑むが…。
〈夢宮殿〉、それは帝国中の臣民が見た夢を集め、選別し、解釈する調査機関だった。毎週金曜日には、帝国と君主の運命に関わる〈新夢〉が皇帝のもとに提出されるのだが…アルバニアの鬼才が描く迷宮の現代文学。
ある町で、ある外科医が妻を殺し、バラバラにしたその体の一部を四人の子供の体内に埋めこんだ。幼いころ、そんな奇怪な事件の話をしてくれたのは、三十年間の失踪から戻って死の床に伏していた祖父だった。いまわたしは裕福な中年となり、ここパラダイス・モーテルで海を眺めながらうたた寝をしている。ふと、あの四人の子供のその後の運命がどうなったか、調べてみる気になった…虚実の皮膜を切り裂く〈語り=騙り〉の現代文学。
なにか、おかしい。壁にかかった懐かしいこの写真も、愛読していたベッドの上のこの本も、覚えてるのとは違ってる。まるで、記憶が二重になってるみたい。そう、ことの起こりはたしか十歳のとき。大きな屋敷にまぎれこんだら葬式をやってて、そこでひょろっとした男の人、リンさんに出会って、そして、なにかとても恐ろしいことが始まって…少女の成長と愛を描く現代魔法譚。