1994年発売
「娘さん、あんたには高貴な方の霊がついておる、闇の中の帝王が」みずきを見るなり高名な霊能者は叫んだ。見知らぬ土地の松の下に埋められたドクロが呼んでいる、みずきはそんな悪夢に毎晩うなされていたのだ。真偽を確めるべくドクロ探しに出掛けて驚いた、実際にそれはあったのだ。しかし警察は待っていたかの様に動き出しみずきを逮捕。五百年の時空を超えたドクロが暴く現代の殺人事件トリックとは?
慶長16年5月10日…、一人の嫖客が、江戸大橋の柳町を典雅な風情で歩く。豊臣・徳川の天下わけ目の戦いは東軍の勝ち。西軍の将は千々に身を処していた。岩見重太郎も、大坂城の茶々を偲びつつ諸国を歩き、やがて嫖客の歩みに合わせるが、その先にこそ。大御所・家康を睥睨する錬金術師と重太郎の不動剣が真田の六連銭とおり重なって時代に舞う。
弁護士の妻に前科が。若き弁護士・花吹省吾は驚愕した。妻の玲子によれば近所の奥さんに誘われて軽い気持ちで歌謡ショーを見に行きケーキとジュースを出されたという。ところがこれが巧妙に仕組まれた選挙の事前運動で、饗応の罪に問われたのだ。はからずも妻の弁護をすることになった花吹は必死の法理論を展開するのだが…。傑作法廷推理集。
倉敷令二は、車のローン返済の為、報酬の良い家庭教師の職を得る。しかし、その仕事は、次々と前任者が替わったという、いわく付きのモノだった。それもそのはず、教え子の日下部夕紀は可愛い顔とは裏腹の、超ワガママ少年で、令二は手を焼くばかり。そんなある日、夕紀の学校の授業参観に出る事になった令二は、夕紀のもうひとつの顔を予想外に発見し、次第に愛しく思い始めるが-。
休暇と家族サービスを兼ねて、林は秋盛りの日光中禅寺湖畔のホテルを訪ねた。彼は十年前の同じ季節に今の妻とは別の女とこの湖へやって来た。その旅は山湖の秋色を探るためではなく、許されぬ結婚を嘆いての心中が目的だった。結局は未遂に終わった、その熱烈な情愛の経緯をホロ苦く思い出しながら、ホテルのロビーでコーヒーを啜る林の隣りに座った女は。果たされぬ愛と殺意が名勝で繰り広げる傑作ミステリー。
「除夜の鐘を一緒に撞きませんか」の誘いに大晦日、警察庁直属の捜査官、宮之原昌幸は京都へ出かける。ところが、その鐘が何者かに盗まれてしまう。誰が何のために。深夜、とおくちかく除夜の鐘がひびくなか、寺の住職が殺される。真相を追う宮之原の前に現れる芸妓・染弥。そして、染弥のかつての恋人である有名な画家が死体で発見される。鐘に秘められた過去と連続殺人の謎に宮之原警部の推理が冴える。
小豆相場は天候によって左右される。体を張って気温変化を知ろうとする相場師“森玄”の調査を手伝った木塚慶太は、赤いダイヤ=小豆の魔力から逃れられなくなった。そして“森玄”に対して戦いを挑んできた松崎辰治の卑劣な手段。慶太を巻きこんで、「買い」と「売り」の壮絶な仕手戦がはじまる…。資料を駆使し相場のカラクリを暴く経済小説。
ガブリエルのもとにその手紙が届いたのは、聖アン祭の朝のことである。英国国教会の神父として完璧な人生を送る彼に、匿名の差出人は、過去のある事件を材料に聖職を放棄するように迫っていた。苦悩のあげくガブリエルは昔の恋人に助けを求めるが、調査の途上、事態は謎めいた変死事件へと発展した…。皮肉と悲しみ、そして生と死の交錯が感銘を呼ぶ、大型新人のデビュー編。
偶然手に入れた歌川広重の浮世絵が、敏腕TVプロデューサー朝比奈に過去の事件を思い出させた。十数年前、旧長浜駅舎で広重の原板が発見されたが、数日後に偽物との鑑定が下ったのだ。入手した浮世絵は、その一件と関わりを持つものではないか?朝比奈はディレクターの金井恵実と旅番組の取材をかねて、記念館となっている旧長浜駅舎を訪ね、殺人事件に巻き込まれるが…。
迷宮から帰ってきた冒険者たちは、束の間の休息をもとめてリルガミンのボルタック酒場に今日もつどう。二百年生きているともいわれている店主のドワーフから語られる武器やアイテムにまつまる冒険の数々。冒険文庫初の短編集。
乳白色の大気におおわれた世界アプロス。そこには精霊石が産み出すアームの力に支えられ、大空を浮遊するいくつもの大陸があった。人々は飛空船や飛空装甲に乗って大地の間を行きかう。そんな世界を舞台に、若き女法術師キースリンと、精霊石を産み出す天の巣で育てられた謎の少女ムタアの物語がはじまる。ログアウトが送り出す新進気鋭の作家、人魚蛟司の記念すべきデビュー作。
保根治(ほねおさむ)・男・三十六歳・高校教師。突然、彼のもとへかかってきた電話の主は、いるはずのない“弟”だった。空を飛び、スプーン曲げを職業とする、自称“弟”。いったい、その目的は…。死後、愛用したワープロのフロッピー・ディスクから発見された長編。
人気大関、横綱昇進を辞退。前代未聞の騒動に困惑する角界をよそに、当の大龍は死んだはずの父の姿を求めて街をさまよっていた。彼の身を案じる幼な馴染の恋人、親友。そして彼らの集団就職を世話した恩師の死体がー。貧困の故に薄汚い欲望の犠牲となって翻弄される彼らの悲劇と、未解決事件の犯人逮捕に異常な執念を燃やす老刑事の姿が交錯する、出色の相撲ミステリー。