1995年11月1日発売
烈しければ烈しいほど、その愛は、人を裏切り、自らを傷つけてしまう。-30歳になる絵本作家の静香を姉のように慕う挑発的な瞳の17歳の美少女、蛍。単身赴任で八ケ岳にやってきた40歳の男を二人はそれぞれのやり方で愛しはじめた。蛍の不可解な言動に当惑する静香。蛍との一切を沈黙する男。やがて蛍は一冊の日記を残して失踪する。錯綜する愛情とその切なさを紡ぎだす恋愛長編。
私の髪を憮でる、その指で、その腕で、彼女のことを抱くのですかー出会った日から22歳の今日まで、ミヤコは彼だけをみつめ続けてきた。そんなある日、偶然ひき合わせた親友が、一瞬にしてふたりの歳月を飛び越えて…。きっと、だれの心の底にも沈んでいる、冷たい恋の化石を胸に、何も言えず、ただみつめるだけのせつない愛。ひそやかな片想いのゆくえを描くラヴ・ストーリー。
叔父に連れられて入った森の奥には“何か”が潜んでいた。風の匂い、魚の影、樹の枝の音、獣の気配…。でも僕らが感じていた何かは、焚火を消した時に凄いスケールで空に姿をあらわした。表題作「星の降る森で」を始め、死の瞬間から大きさ、形、重さを刻々と変える熊の最期を写し取った「星屑のような命」など、森羅万象の底に流れる“静謐な激しさ”を見事に伝える9つの短編小説。
息子一家宅に居候中のおばあちゃんは、嫁に嫌味半分聞かされた、姥捨野とやらに想いを致しては、その奇妙な響きを反芻してみる。デンデラ野、デンデラ野、と…。老人問題、妻の蒸発、家庭内暴力といった、現代人の日常に忍び込む、ごく今日的な出来事に材をとりながら、生きてあることの不可解さ、哀しさ、滑稽さ、そして黒々と深い一瞬の闇を、鮮烈かつ軽妙な筆致で捉えた傑作3篇。
ボンの政府機関で働くエルケは有能な秘書で、38歳の独身。私生活での話し相手はペットの犬だけ、という孤独な彼女に、ある日ひとりの男が近づいてきた。KGBのセックス・スパイであるオットーは、ジャーナリストと身分を偽っていた。彼の任務はエルケを籠絡し、ドイツのあらゆる機密情報を手に入れることなのだ。オットーは巧みにエルケに近づき、その心を捉えたのだったが…。
夫のヴィトーがオスカーを受賞した翌朝、ビリーは怖いほど幸福な気持ちで目を覚ました。彼女の体の中に新しい生命が宿っていたのだ。だがその幸せは長続きはしない。前妻の娘ジジがヴィトーを訪ねてきた時に生じたすれ違いは、埋まるどころか広がる一方。そこにヴィトーの浮気と流産が重なり、二人の仲は決定的になった。さらに、彼女の全てであるスクループルズが火事になり…。
傷心のビリーはパリに渡るが、そこでの生活にも心癒されることはなかった。数年後再びニューヨークに戻ったビリーに力と希望を与えてくれたのはジジだった。ジジの若い情熱と自由な発想によって、失われたスクループルズはスクループルズ2として蘇った。全ての悲しみはやがて喜びに変わり、ついえた愛の中から再び新たな愛がはぐくまれていく。恋と夢、情熱と成功の華麗な物語。
1947年、ナチス・ドイツ崩壊後のベルリン。大戦を生き延びたグンターは廃墟と化した街で、細々と探偵稼業を再開していた。そんなある日、ソ連駐留軍の大佐から、殺人で逮捕された男の嫌疑を晴らしてほしいとの依頼を受け、グンターはウィーンに赴いた。彼は事件の核心に迫るにつれ、旧ナチの亡霊が蠢いていることを知った…。「ベルリン三部作」の掉尾を飾るスパイ小説巨編
私はゾラ、もうすぐ30歳。今度こそ一生続く恋がしたい。そして本気で歌の勉強をするつもり。ところがある日、フランクリンに出会ってしまった。彼こそ私が求めていた人。でも…。生活環境も、職業もまったく違うふたりが、出会った瞬間恋に落ちてしまった。人はどこまで人を愛することができるのか、愛する人のために何ができるのかー女と男のホンネで描いた新しい恋愛小説。
アメリカ南部の名家キング牧場の長女グレイスは、学生時代に恋の虜になったエディと結婚。28歳の今、35歳の夫と、やはり乗馬に夢中の愛娘と3人で完璧な人生を歩んでいた。そして運命が彼女を狂わせる。ある昼下がりの路上で、夫が赤いドレスの女と情熱的なキスをしているのを見てしまった。二人に愛の亀裂が走る。ジュリア・ロバーツ主演による同名映画のノヴェライゼーション。
江戸享保年間、材木問屋の「白子屋」のおつねはその浪費癖がたたって店の身代を傾けた。一人娘のお熊は母親似のドラ娘だが容姿だけは抜群で、そこに惚れ込んだ四十男の又四郎が五百両を持参金に婿養子となった。ところが母娘は又四郎を嫌い、あの手この手の追い出し工作。遂には毒殺まで企てるが…。大岡裁きとして名高い「白子屋お熊」ほか江戸時代を中心に、史上の有名人たちの真の姿を描いた時代小説集。
福岡・下原で「きつね」に出会った…。だれにも受けとめてもらえない心の傷をかかえ、神戸から福岡へ家出した画家志望の少年は、ひとり暮らしのおばあさんと知り合い、近くに住むことになった。ときどき占いもするおばあさんには「きつね」がつくことがあって…。第9回織田作之助賞佳作入賞作。
ついに“その時”がやってきた。関東全域に鬼畜の悪名を轟かせた伝説の暴走族MAD BUGが甦ったのだ。崩壊していく世界の中で、突如訪れた高熱に苦しみながら、神様・大土円は世界の修復を目指す。しかし気まぐれなフォースのコントロールは思うにまかせず、蛍を喪う最悪の結果を呼び寄せてしまった。世界を産みだす若き神々の瑞々しい恋を描いた渾身のマジカル・ラヴストーリー、ついに完結。