1995年11月発売
苦労して夜学に通い昼間はパン屋で働く精神薄弱の陽気な青年チャーリーが、人工的に知能を高める人体実験の被験者になり、やがて彼の知能は超天才の域に達していく。同じ実験を受けた白ネズミのアルジャーノンに彼が見たものは…。人間社会の差別・被差別問題と科学することの意味を、二重人格というテーマに重ね合わせた異色SF。
フォレスト・ガンプはIQが平均より低いが、その純真さと持ち前の俊足のおかげで、不思議な人生を送る。フットボールで優勝し、戦争で勲章を貰い、卓球で世界を制覇し、エビの養殖で財産を築く。しかし、いつも彼が想っていたのは幼なじみのジェニーのことだった。人気俳優トム・ハンクス主演の同名映画は、全米にセンセーションを巻き起こし、1994年度「アカデミー賞」に輝いた。
土の龍と書いても所詮はもぐら。だがいつの日か雲を呼び風を起こして真の龍とならん。武士の世を終わらせ、技能者の世に-信玄の遺志を継ぎ、土龍組の旗印に結集した金掘り衆が、雇われて城を陥してゆく。
タクラマカン砂漠、エアーズ・ロック、カッパドキアの岩窟群、実現しなかったサバンナへの旅…そして東京の埋立地にも同じ陽が昇り、懐しい惑星の風景が広がる。著者の記憶と経験を、荒涼と美しい世界との出会いとして描く作品集。
浅草花川戸のトンカツ屋に生まれ、歌手となった高橋伸寿(しん)こと高橋三次郎。ジャズの盛衰、忘れえぬ芸人たち、良き江戸情緒-彼の波乱に満ちた半生とそれを彩った戦後の風俗を活写。樋口修吉7年ぶりの書き下ろし力作長編。
北国の藩、筆頭家老暗殺につかわれた幻の剣「馬の骨」。下手人不明のまま六年、闇にうもれた秘太刀探索を下命された半十郎と銀次郎は藩内の剣客ひとりひとりと立合うことになる。やがて秘剣の裏に熾烈な執政をめぐる暗闘がみえてくる。
十六世紀初め、土豪たちがひしめく中国山地の小領主、毛利元就のもとに、「鬼」といわれる吉川国経の娘が輿入れした。権謀術数うずまく乱世にあって、ふたりは否応なく戦国の夫婦として生きていくことになる。互いに支え合い、やがて元就は頭角をあらわし名将への道を歩み始め、ふたりのつむぐ明るい未来は近づきつつあった。
中国地方は大内氏と尼子氏の二大勢力が根をおろし、そのはざまで元就はたえまなく翻弄されていた。しかし、政略結婚でありながらまれにみるほど愛された妻の天性の明るさに支えられて、元就は次第に実力をつけ、一歩一歩戦国大名への階段を上っていく。乱世を生きぬく武将とその妻を描いた、長篇歴史小説。
郊外の一戸建てに住む城戸家は仲のよい夫婦と息子の三人家族。春、妻が妊娠した。後妻の絢子にとっては新婚の象徴ともいえる出来事だ。だが、十五も歳の離れた兄弟が出来ることになった息子は当惑し、夫は「まさか…」という言葉が出そうになる。やがて、絢子には思いもよらぬ事が次々と城戸家に起こって…。ガラスの家族が演じる偽りの“幸福物語”の終幕は-。書下ろし恐怖心理サスペンス。
日本の強制収容所で終戦を迎えた9歳のダーチャ・マライーニは、1947年、家族とともにシチーリア島バゲリーアへ帰郷する。祖父母の暮らす壮麗な館。咲き乱れる花々。はるかにつづくオリーブ畑とレモン畑。愛も死も性も、破滅も栄華も、すべてがあらわなこの島で、少女は目覚めてゆく。やがてマライーニは、一族と訣別し、島を出て作家として歩みはじめる。シチーリアを遠ざけて生きた長い年月。だが、数十年の時を隔てて館に足を踏みいれたとき、埋もれていた少女時代の記憶とともに、幾多の祖先の姿までが、あざやかに蘇ってくるのだった。もう一つのイタリア、シチーリアの過去と現在を描き、本国で好評を博した秀抜なノンフィクション・ノヴェル。
「わたしは信仰を失った」そう自戒したイエス13番目の使徒は傷心の旅に出、先輩使徒たちを歴訪する。そして最後に、アフリカのメロエで、アリマタヤのヨセフの元奴隷に出会い、そこで目撃した事実とは…。そして現代、シカゴ大学の教授オハンランと大学院生ルーシーは、いまだ解明されていない古代メロエ語で書かれた福音書を解読する手がかりを得るために、ヨーロッパ、中東、アフリカを旅する。伝承によれば、その最終章に書かれている事実は、カトリック、プロテスタントばかりでなくユダヤ教、イスラム教をも大恐慌に巻き込み、終末に結びつくという。そのため、この福音書を巡る各宗派の争奪戦が繰り広げられることになった。ヨーロッパ、中東、アフリカ、アメリカを舞台に古代と現代が織り成す壮大な長編ロマン。