1995年11月発売
「わたしは信仰を失った」そう自戒したイエス13番目の使徒は傷心の旅に出、先輩使徒たちを歴訪する。そして最後に、アフリカのメロエで、アリマタヤのヨセフの元奴隷に出会い、そこで目撃した事実とは…。そして現代、シカゴ大学の教授オハンランと大学院生ルーシーは、いまだ解明されていない古代メロエ語で書かれた福音書を解読する手がかりを得るために、ヨーロッパ、中東、アフリカを旅する。伝承によれば、その最終章に書かれている事実は、カトリック、プロテスタントばかりでなくユダヤ教、イスラム教をも大恐慌に巻き込み、終末に結びつくという。そのため、この福音書を巡る各宗派の争奪戦が繰り広げられることになった。ヨーロッパ、中東、アフリカ、アメリカを舞台に古代と現代が織り成す壮大な長編ロマン。
厳冬のシカゴの公園で、氷と雪に閉じ込められた男性の射殺死体が発見された。シカゴ市警の警部補ノラ・カラムは、被害者の指輪と腕時計に彫られた文字を手がかりに捜査を開始したが、事件の背後には、旧ソ連の宇宙探査機打ち上げ計画にまつわる驚くべき秘密が隠されていた。そして、捜査陣をあざ笑うかのように、同じ場所で第二の殺人が起きた。
仁明帝、東宮、在原業平、僧正遍照などとの様々な恋に懊悩し、情熱的な和歌の才能を発揮した六歌仙の一人、小野小町。絶世の美女とも謳われた華のごときその生涯を通して、平安時代の豊かな男女の関係のありようを浮かびあがらせた物語。
ー恋する者はたえず心の中で走り回っており、新たな奔走を企て、自身に対する策謀をめぐらしつづけてやまない(R・バルト)-“あちらこちらを走り回る”という意を表しもする“ディスクール”本来の「野性的な」実践を通して、“恋愛”をもっともピュアーなかたちで描き出した刺激的快作。
人間の飽くなき想像力が生み出した“ホラー”という暗黒の迷路。『フランケンシュタイン』『サイコ』『ゾンビ』『キャリー』『エイリアン』…古典・現代を問わず、あらゆるメディアにまたがって数多くの作品を一挙紹介。豊富な知識で語る案内人は、巨匠スティーヴン・キング。戦慄と恐怖の調べの中「死の舞踏」が今始まる。
戦国乱世を、智恵と度胸で生き抜き、太閤の位にまで登り詰めた、豊臣秀吉の一生と、彼をめぐる女性たちの姿を生々と描き切る…十四歳から苦楽をともにしてきたねね、永遠のあこがれお市、その影を追ってやっと側室のひとりとした茶々など、戦国期の女性像。
恋人に促されてアリスがたどり着いた場所は、人里離れた地の一軒の屋敷だった。そこには、仮面で顔を隠した主人と5人の少女たち。さらに、放尿、緊縛、レズ、と次々起こる出来事…。少女たちと男が交錯し、求め合い、絡み合う。ゲームの持つ淫靡で繊細な世界観を、新進気鋭の作家・藍里司が鋭敏な感覚で描写する。フェアリーテールが送る衝撃的名作を、ゲームを越えたクオリティとボリュームで小説化。
裁判官による説示。被告人ハリエット・ヴェインは恋人の態度に激昂、袂を分かった。最後の会見も不調に終わったが、直後、恋人が激しい嘔吐に見舞われ、帰らぬ人となる。医師の見立ては急性胃炎。だが解剖の結果、遺体からは砒素が検出された。被告人は偽名で砒素を購入しており、動機と機会の両面から起訴されるに至る……。ピーター卿が圧倒的な不利を覆さんと立ち上がる第五弾。
バブル崩壊後の銀行業界は、いま未曽有の危機にみまわれている。都心の支店長を命じられた片岡史郎は、あらためて士気の高揚、過剰融資の点検に追われる身となった。そこへ融資予定先の醜聞が耳に入る。どうしたものか。娘の登校拒否という家庭の悩みを胸に秘め、再建にむけて苛烈に闘いぬく男のドラマ。
公正取引委員会の審査官伊田は汚職の嫌疑をかけられた。何者の策略に嵌り事件に巻き込まれたのだ。ある所からの誘いによって彼はフィリピンへ行くことになる…。ODA(政府開発援助)プロジェクトに関する談合事件をマニラで調査する伊田の身に危険が迫る。期待の乱歩賞作家が放つ長編推理サスペンス。
モスクワ市内の高級住宅地で内務省の高官が殺された。死体から消えた勲章の行方を追っていたジャーナリスト・ニコライは、事件の背後に巨悪の匂いを嗅ぎつけ真相究明に乗り出す。ブラックマーケット、マフィアの暗躍、民営化スキャンダル…新生ロシアの闇をリアルに描く戦慄のサスペンス・スリラー巨篇。
「あーん。なめて…。手抜きしないで」若妻の舞衣子は今日も密会の真っ最中だ。長松部長は日本舞踊家の彼女を後妻に迎えた。だが、舞衣子はまだ若く、女盛りである。当然、夜の生活で60ちかい夫に満足しない。夫の部下、不動産会社の社長など次々に他の男をつまい食いしていく。二人はどうなる。官能ロマン。
名探偵・法月綸太郎に挑戦するかのように起こる数々の難事件。なぜ死刑執行当日に死刑囚は殺されたのか、図書館の蔵書の冒頭を切り裂く犯人、男が恋人の肉を食べた理由など異様な謎に立ち向かい綸太郎の推理が冴えわたる。〈ルーツ・オブ・法月綸太郎〉ともいえるミステリの醍醐味あふれる第1短篇集。 死刑囚パズル 黒衣の家 カニバリズム小論 切り裂き魔 緑の扉は危険 土曜日の本 過ぎにし薔薇は…… あとがき 文庫版追記 「図書館の自由」をめぐって
アンティーク・ショップ「魔法のお店」を訪れた佑一郎と摩由加の目の前で不思議なことが起こった。壁の絵から白いドラゴンが飛び出し、美しい蝶が舞う。いつしか二人は異世界へと導かれていった。摩由加は謎の「銀星石」を運ぶよう依頼される。佑一郎と力を合わせ冒険の旅に出た…。魅惑のファンタジーノベル。
ナニモシテナイ幸福な私がなぜだか自分では気に入らないのだった。十年間ずっと私自身はナニカヲシテキタつもりでいたのだった。-生きていることのリアリティを希求して、現実と幻想の間を往還するモノローグの世界を描いた表題作に加えて「イセ市、ハルチ」の2編を収録する芥川賞作家の第一小説集。
地球外知性探査計画は、ついに宇宙からのメッセージを受信した。深宇宙からアレシボ天文台が受信した謎のメッセージはふたつーひとつはメタンの触媒に関するもの。これにより燃料を完全燃焼させることが可能となり、人類は無限量のエネルギー発生装置を手にすることになった。ふたつめは、DNAの塩基配列に関するもの。この異星のDNAと人間の卵子とを結合させ、人類は新たな生命体を創りだすことに成功したが…。