1995年11月発売
スターリンの粛清が再び激化した1950年代初期のモスクワ。一人の女性詩人がユダヤ人迫害の嵐の中で牢獄に送られ、銃殺された。彼女は父親の違う二人の息子を遺していた。一人は、同じ詩人である最愛の夫との間に生まれたアレクサンドル。もう一人は、その夫の命を救うためやむなく結婚したKGB将校との子供、ジミトリー。二人の兄弟はKGB将校の手にゆだねられるが、その男もやがて粛清の犠牲となった。だが、その時すでに彼は、アレクサンドルをブルックリンに住む妻の姉のもとに、ジミトリーをレニングラードの孤児院に送っていた。こうして二人の兄弟は、離れ離れになり、アメリカとソ連で生きることになった。兄のアレクサンドルはアレックスと呼ばれて育てられ、自由な空気の中で、しだいにソ連への不信感をいだき、ソ連の研究家としての道を歩んでいく。一方、弟のジミトリーは、孤児院で辛酸をなめて生き延び、やがてKGBに入った。互いに求め合いながら、まったく違った道を進む二人。やがて出会いを果たした彼らに思わぬ運命が襲い、アレックスはCIAに入り、弟と遺恨に満ちた対決を繰り広げることになるが…。
バブル崩壊後、銀行は多量の不良債権を抱え、不景気は本格化し、中小企業の倒産も日増しに増えていた。そんなある日、奇妙な宗教団体を率いる森川俊のもとにグループの一人、ビームファイナンスの社長・税所から妙な話が持ち込まれていた。九州のある商事会社の融通手形を、総計で五億程割り引いたという。九州の会社がなぜわざわざ東京の街金業者に…。森川達の巧妙な会社喰いが始まった。書下し経済小説。
元末、王朝は内訌に明け暮れ、各地で、白蓮教の反乱が起こった。淮西出身の流浪僧・朱元璋は反乱軍に身を投じ、めきめき頭角を現す。こうして長江流域に三つの反元勢力が鼎立することになった。集慶(南京)の朱元璋を挾み、西の陳友諒、東の張士誠である。天才軍師・劉基を三顧の礼を尽くして帷幕に迎え入れた朱元璋は彼の言に従い、陳友諒を討つべく、史上名高い〓陽湖の戦いに臨む。本格中国歴史長篇。
子供専門の精神科医サミュエルは、バレエ・インストラクターをしている恋人レベッカと5年間にわたって交際中。キャリアと愛に満ち、幸せの絶頂にいたが、ある日レベッカから妊娠したことを告げられ大あわて。「子供なんて欲しくない」。だが、レベッカの母になる決心はかたい。2人は出産を前に9か月にわたって愛の試練にたたされる。はたして恋人たちの間に何が起こるのか。おかしくて愛しい素敵な物語。
東日本独裁者、山多田大三の命令で父島海域を制圧し、星間文明の「黒い球体」奪取に向かう七隻の東日本艦隊。一方、東日本軍機の奇襲を受けながら、ただ一隻、父島海域に急行する西日本海軍イージス艦「新緑」。三宅島沖海戦の衝突が迫る…。さて、いきなり呼出をくって、空母「赤城」を発艦しF18ホーネットを駆る愛月有理砂は、敵の正体も分からずに、阿武隈山中の峡谷に突入していく。
平成元年、竹下登の後をうけて新総理となった宇野宗佑だが、女性スキャンダル、参院選での自民党惨敗で、あっけなく退陣に追いこまれる。後継総裁をめぐり隠然たる勢力をふるう長老たちの水面下の争いとともに、硬直化した党の改革を目指す若手たちとの世代間戦争もまき起こり、内部の混迷は深まる。橋本龍太郎、海部俊樹、河野洋平、小沢一郎、羽田孜などの名が新総裁候補として浮かび上がっては消えていく。
君原由紀恵の絞殺死体が発見された。捜査に当たった七尾中央署の島中は、由紀恵の部屋のカレンダーの事件当日の欄に、謎のSの文字が記されているのを発見。犯人はイニシャルがSの男とにらみ、捜査をすすめるが、島中たちが真犯人に行きつけないうちに、金沢市内の公園で第二の殺人事件が発生。浮かび上がった人物には鉄壁のアリバイが…。Sとは誰か。金沢発特急「きらめき4号」30秒のトリックとは。数学者・黒江壮の左脳が冴える。意表つく展開。斬新なトリック。著者会心の“逆転シリーズ”長編本格推理・書下ろし第6弾。
トレドにある酒場「ロコス亭」に集まる奇妙な人々は、物語の内と外を、またそれぞれの物語の間を自在に行き来し、読者を虚構と現実のはざまに誘う。ナボコフ、カルヴィーノ、そして多くのラテン・アメリカの作家たちの原型ともいうべき、知的で独創的で、とてつもなく面白い小説集。
日本が初めて体験する海外からの侵攻ー元寇(文永・弘安の役)。日本の存亡をかけたこの最大の国難に、鎌倉幕府8代執権・北条時宗はいかに悩み、そして決断をくだしたか…。蒙古侵攻をひかえながら、北条一族の政権争い、朝廷の分裂に巻きこまれる時宗。さらに暗躍する海商、そして日蓮の不気味な予言。内憂外患の中で一国を預かるリーダーの姿を描く長編歴史小説。
1999年7月-その世紀末の日本において、話題の中心は二つだった。1年ほど先のトータチス飛来と急速に勢力を伸ばすシャンバラ教団。シャンバラ教団とは、現史に生きる“あの敷島英二”が率いる宗教団体だった…。10月23日夜、首相官邸や陸海空軍基地が一斉に制圧された。それは、シャンバラ教団による軍事クーデターだった。クーデターの目的は、トータチス迎撃を阻止し、もう一度時空転移することによって、日本を世界の先導者に育てあげることだった。教団に対する反撃の切り札は帯広実験基地。しかし、北海道沖には乗っとられた最新鋭の攻撃型潜水艦「玄海01」が姿を潜ませていた。はたして、日本は、そして世界は破壊から逃れることはできるのか。クライマックスへ向け、いよいよ最後の戦いの幕が開く。
1998年12月、大統領府へ向けモスクワの町中をリムジンが走り抜ける。国家情報相から大統領に、ロシア極東地域でのクーデターが報告された…。年が明けた、1月9日の日本。北関東地方は断続的に襲ってきた寒波によって山間部は積雪が徐々に増えつつあった。夜明け前の赤城山の北面道路の駐車場に、一機のヘリコプターが舞い降りた。それは陸上自衛隊の縮小改編にともなって結成された第一空中機動団に配備された新型機AH-3Fの訓練飛行だった。その頃、ウラジオストクでは反政府軍の反乱を逃れた巡洋艦・駆逐艦・強襲揚陸艦など20隻ほどの艦隊が流氷に閉ざされた港を脱出。日本海を南下し、日本政府に対し、救援を要請した艦隊は、平和という長い眠りにつく日本を無理やり覚ますべく新潟港を目指す…。
なぜかまだ続くカクテルショートストーリー。フランス人数学者が書いた、ご存じ笑いあり、ユーモアあり、恋もあり、そしてちょっぴり涙あり…の34話。舞台はニューヨークの場末のカクテル・バー“ジェイズ”で、いつもの3人の待つ店に、妙なお客が今夜も舞い込む…。1991年タイド・モニエ文学協会賞。1992年美食文学賞受賞。
警視庁歌舞伎町分室の警視・村木正は、妖刀“村正”と恐れられる強者。その村木の許にOL全裸殺人の知らせが入った。だが、被害者の藤咲霧子は、過去に傷害事件を起こし、村木が更生させた女だった。新しい就職先で、順調に勤めていたはずの霧子に何があったのか。彼女を殺した憎き犯人を追い、村正が闇の世界に戦いを挑む。長篇バイオレンス・アクション。
22歳になる美貌の青年フィオリーナは砂漠の国クシュの王の愛人だったが、次期国王のレイファムと許されない恋に落ちてしまった。王に身を弄ばれる日々に堪え、彼は密かにレイファムと逢引を重ねる。しかし、二人の仲にフィオリーナを慕う少年エリシュアが気づいて…。ひと味もふた味も違うファンタスティック・ロマンス。