1995年11月発売
悪意のない、ほんの不注意から起ってしまった事件。しかも自分が手を下したわけでもなんでもない不可抗力的事故…。きっかけはそんな曖昧な出来事だった。しかしその残り火は、東京周縁部の町や村を炎でおおい尽くしていった。あたかもかつての田園地帯が近代に復讐するかのように…。社会心理の、微妙な、しかし本質的な変化を捉える名手・本岡類が放つ、新感覚ミステリー。
灰の国はいかにして甦ったか。九州高鍋の小藩から養子に入り、十七歳で名門上杉家の藩主の座についた治憲は、自滅か藩政返上かの瀬戸際にある米沢十五万石を再建すべく、冷メシ派を登用し改革に乗り出す。藩主や藩のために領民がいるのではない、との考えのもとに人びとの心に希望の火種をうえつけてゆく…。
重役の反乱を克服し、家臣や領民一人ひとりの共感をかちとりながら、地域と人を活性化してゆく鷹山の経営手腕とリーダーシップのすべて。“最も尊敬する日本人はウエスギ・ヨウザン”と、かつてケネディ大統領が語ったように、「愛と信頼の政治」を貫いた鷹山の不撓不屈、信念の生涯を描く。
死体の額には鋭い角で突かれたような痕があった。衆人環視のなか行なわれた謎の殺人。伝説の一角獣の仕業なのか。フランスの古城を舞台に、稀代の怪盗、警視庁の覆面探偵、HM卿が三つどもえの知恵比べを繰り広げる傑作本格推理。
郷里の先輩東大生を慕って東大受験に上京した美少年・米倉初穂であったが、先輩のマンションでハードセックスを見せつけられて価値観一変、受験などなんのその、大企業会長夫人にデートに誘われ熟女からの個人授業に欣喜雀躍、その楽しさを満喫し尽したかと思ったが、社内抗争・権力闘争の渦中に放り込まれるはめに…。若さあふれる悦楽フルコース志願。
古の昔、神と魔はひとつであった。だが両者はいついか袂を分えち、血で血を洗う戦いー神々の黄昏ーが起こった。その後、神々は地上を魔族は地下の国を分け合う契約が結ばれ、世界には平和が訪れた。しかし遙かなる時の流れの中、地上には再び戦禍が起こる…。邪悪な軍師シュタットの操るバンドール国に征服された母国を救うため、マリオン国少年騎士フィンはいま、立ち上がる。
錬金術師が料理をする話、僧侶が飼う悪魔猫が妙にかわいい話など、ウィザードリィでお馴染みの作家陣六人による冒険者たちの冒険譚。それぞれの作家が創り上げた冒険者は、苦しみ、戦い、時にはユーモーアたっぷりに旅を続ける。ウィザードリィファンに絶対オススメの短編集。
道に迷ったジェネットはトラックが突進してくるのを呆然と見つめた。絶体絶命。ところがなぜか敵は勝手に横転、混乱する彼女を尻目に、トラックは爆発するは、車は盗まれるは、避難先の無人の家は放火されるはー。新妻を襲った災難に騎馬警官のマドックは大慌て。かくて、雲をつかむような謎を相手に二人の探索が始まる。
どんな相談にも応じるという和尚が様々な難問に出した回答。対立する子供たちの間に出現した少女が引き起こす事件。パズル好きの父が遺した遺言。溺れかけながらも微笑む女の真実。探偵好きの少年たちが直面した本物の密室殺人。盗作の疑いがかけられたTVコマーシャルに隠されたメッセージー短編の名手が選んだ佳品六編。
ロンドン・シティの若い債券トレーダーのポール・マレーは、同僚から不審な取引のことを知らされた。その矢先同僚が死体で発見され、疑問を抱いたポールは独自に調査を開始。やがて彼の前に、巧妙に隠された国際金融詐欺が浮かび上げる。仕組んだのは誰なのか。“アンクル・サムのマネー・マシーン”とは何か。次から次へと新たな謎が生まれ、パラノイアに陥るポール。真相を探ろうとポールは渡米、ようやく証拠の片鱗をつかむが、帰国した彼を待っていたのはインサイダー取引の冤罪と殺人容疑であった…。
闇に葬られた「ジュラシック・パーク」事件から六年。科学が夢を実現させたかに見えたパークは崩壊し、恐竜も滅び去った。だが、まだ何かが生き残っている、というひそやかな噂は絶えなかった…。孤島にたどりついた古生物学者レヴィンは、胸を躍らせた。コスタリカ沿岸に流れついた謎の動物の屍体を見て以来、太古の恐竜が今に生き残る「ロスト・ワールド」を探してきたのだ。この島にこそ恐竜がいる。彼は確信していた。レヴィンが調査の旅から戻ってこないことを知り、工学者ゾーンは困惑した。レヴィンの依頼で製作した、科学調査用トレーラーのテストを行なう予定だったのだ。衛星電話で呼び出すと、ノイズの向こうからレヴィンの声が聞こえてきた。「とりかこまれた-兇暴-やつらのにおいがする-」接続は切れた。彼の部屋で見つかったのは、壁をおおう地図や航空写真、そしてその上に書かれた大きな文字-「サイトB」か。「サイトB」とは。レヴィンとともに「ロスト・ワールド」探しをしていた数学者が急遽飛んできた。〈ジュラシック・パーク〉事件からからくも生還した、イアン・マルカムだった。
秋が深まると、北国の空を、無数の銀色の糸をきらめかせて、蜘蛛が飛ぶー。仕事と家庭、愛と家族など、数々の困難の中で、“みずからの生き方”を求めて苦闘する二人の女性の“冬空への飛翔”を描いた感動の力作長編小説。
岸本勇二は、元銀行員。上司を殴って退職し、タクシードライバーをしている。学生時代、アメリカン・フットボールの選手だった彼は、いまも社会人のクラブチームに所属し、休日には仲間たちとフットボールを楽しんでいた。ある晩、勇二のタクシーに刑事が乗ってきた。スリの常習犯を追っているというその刑事に頼まれた勇二は、囮となって犯人逮捕に協力することになったのだが…。惜しまれて急逝した著者、最後の長編スポーツ小説。