1995年12月発売
ある年の春、スティーヴンとアンジェラは、アイオワに家つきの農場を購入して幸福な結婚生活をはじめた。だが、16年後のふたりはそれぞれの人生を歩んでいた。スティーヴンと離婚したあと、アンジェラは、ふたりめの夫の浮気癖と不良娘の言動に悩まされ、いっぽう、スティーヴンは農場で牛を育てながら、子連れの女性リアとつきあいはじめている…。人生で避けてとおれない、出会いと別れ、愛と死を鮮やかに描く傑作。
いったい、何があったの。ミセス・ポッターは、彼女が所有するアリゾナの牧場の管理人から電話を受けて愕然とした。重要な会合を開くので至急来てほしいというのだ。彼女は現地へ赴くが、到着早々、管理人と彼の孫娘が突然行方不明になった。さらに、ポッター特性のチリコンカルネを食べた男性が謎の死を遂げて…料理好きの未亡人ミセス・ポッターが腕をふるって殺人事件を料理するとびきりおいしい謎解きミステリ。
スペンサーのよき理解者で、二十年来の友人でもある、ボストン市警察殺人課のフランク・ベルソン部長刑事。その彼の若き新妻リーサが、ある日、何の痕跡も残さずに突然姿を消し、さらには単身で調査を開始したフランクまでもが、何者かに撃たれて重傷を負ってしまった。かつてのスーザンとの離別経験からフランクの心中を察したスペンサーは、病床の彼の前で、調査を引き継ぐことを誓う。捜査が進むにつれ、しだいに明らかになるリーサの秘められた過去。やがて、フランクとの婚結前につきあっていたヒスパニック系の男が、リーサをボストン郊外に監禁していることを突き止めたスペンサーは、ギャングの縄張り抗争に乗じて彼女を救い出すべく、ロス・アンジェルスから強力な応援を迎え入れた。ますます円熟味を増した筆致で、極限状態におかれた人間の絶望と勇気を描ききる、シリーズ中屈指の感動作。私立探偵スペンサー・シリーズ第22弾。
西暦2109年、火星のアマチュア天文家が太陽に接近しつつある未知の小惑星を発見した。惑星間天文学連合による追加観測の結果、おそるべき事実が判明する。この天体は約240日後に地球と衝突するというのだ。そうなれば爆発の被害はもとより、粉塵による太陽光の遮断と硝酸雨のために、地球は今後数十年間、居住不可能な死の星と化してしまう。小惑星は死と破壊の女神にちなんでカーリーと名づけられた。この危機に際して地球は、最新鋭のマスドライバーを搭載した宇宙船「ゴライアス」に特殊任務を命じ、カーリーへ派遣する。カーリーにマスドライバーを設置してその駆動力で軌道を変え、地球衝突を回避しようというのだ。だが、その計画がいよいよ実行に移されたとき、次々に思いもかけぬ障害が…。宇宙から飛来する鉄槌の一撃をいかにして防ぐことができるのか。現実に起こりうる災厄を、該博な科学知識と迫真のストーリーテリングを駆使して描きあげる、ファン待望のクラーク最新長篇。
めったに訪れる者もいないアラビダの僧院にシェイクスピアの血筋を研究するアメリカ人学者マイケル・パドヴィックと妻ヘレンが、パリから到着した。彼らを迎え入れた管理人バルタールは一目で美しいヘレンの虜となって言い寄り、博士には助手の若い女性ピエダーデを近づける。孤島の僧院でひそかに繰り広げられる善と悪の内なる闘い。巨匠オリヴェイラがカンヌ映画祭を感嘆の渦で包んだ同名映画の原作。
彼の目に浮かんだ一瞬の暗い影に心惹かれた彼女は、六区のアパルトマンの魅力的なしつらえの住まいに彼を迎え入れる。思いがけないほどの優しさに満ちた一夜を過ごしたふたりに、この世のすべての恋と同じ、甘く情熱的な日々が訪れる。愛のささやき、南仏での夜と昼、そして弁護士としての輝かしい未来への予感…何もかもが恋人たちの幸福を表わしていたが。この世のすべての恋と同じように、ふたりの恋にも、終わりが訪れる。知的で自立した女であったはずの彼女の落ちた嫉妬という残酷な罠…。
ジェーンはためいきをついた。せっかく女二人になれたというのに、娘のケイトときたら朝寝はする、バイトはする、そのあとだって門限一秒前までお出かけくださる。弱気の虫がうずいたそんな折り、ジェーン自身の母親が遊びにやってくる。滞在中、つきあって自分史執筆の講座を受けることにしたが、思いがけず毒殺事件が勃発し…。主婦探偵が生きがいと殺人犯を探索する第三弾。
私だけを見つめて下さい。そして「君を選んだよ」と言って下さい…。“今”を生きる23歳の女性3人。6年前、共に憧れた男性が現実の結婚相手となって現れた。友情も裏ぎる激しい恋のバトルの結末は。
核の恫喝を背景に、昭和大戦後の軍事再編成をもくろむ合衆国大統領マッカーサー。1948年、ついに米北太平洋艦隊は単冠日本連邦海軍基地に奇襲攻撃をかけた。乱れ飛ぶファントム、サンダーバード、ゴブリン。一方、連邦は遣外士艦隊でグアム急襲作戦を敢行する。太平洋の覇権を巡り、日米決戦の火ぶたが切って落とされた。合衆国の超重量級原爆搭載機B-30の影におびえるアジア連合はどう動くのか。CIA対明石機関・中華連邦情報局の諜報戦もきな臭さを増す。日本連邦に勝機はあるのか。大好評シリーズ、白熱の第4弾。
乱世の奸雄・曹操。南方の虎・孫堅。しかし、劉備はこの世にすでにいない。黄巾党の乱を平定する際に命を落とした劉備の名と志は、赤龍の血を引く少女、劉桃花に受け継がれた。その後、漢朝の御代は暗愚な帝・霊帝の崩御によって新たな混乱を招く。混乱に紛れ相国の座をつかんだ暴将・董卓は、策士・李儒の非情の献策を用い、洛陽を火の海とした。董卓の懐刀にして「人中の呂布、馬中の赤兎」と称えられる魔将・呂布が千里を駆ける赤兎馬を駆り、三国鼎立に向かう英雄の前に立ちはだかる。赤龍の血は英傑を引き寄せ、その色を濃くしてゆく-。
今はまだ群小プロダクションだが、いずれは芸能界の帝王にのし上がろうという野望に燃える槇真吾。密会した槇プロの売れっ子女優・絵島夏子が、高輪エンペレスから行方不明になった。西洋の古城を模したそのラブホテルに秘密の匂いを嗅ぎつけ、探索を開始する真吾。だが、ホテルの経営者で宗倉コンツェルンの総裁・宗倉頼三の陰謀と敵対することに…。都会の真中で起きた“神隠し”の裏に潜む驚愕の事実とは。
『白鯨』に続く、詩人原光氏の入魂熟成の新訳第二弾。ほぼ全中短篇を含む。細部と全体の結像力は強く鋭く精妙である。各篇は審美的に完結しながら含蓄深く、人間実存の秘奥の測深かつ啓示である。黒人バボは哂し首にされても奴隷主の白骨を幻視し、取付いた凝視で白人船長を殺す。その眼光の意味は何か。
堅い会社勤めでひとり暮らし、居心地のいい生活を送っていた深文。凪いだ空気が、一人の新人女性の登場でゆっくりと波を立て始めた。深文の思いはハワイに暮らす月子のもとへと飛ぶが。心に染み通る長編小説。