1995年12月発売
西暦2109年、火星のアマチュア天文家が太陽に接近しつつある未知の小惑星を発見した。惑星間天文学連合による追加観測の結果、おそるべき事実が判明する。この天体は約240日後に地球と衝突するというのだ。そうなれば爆発の被害はもとより、粉塵による太陽光の遮断と硝酸雨のために、地球は今後数十年間、居住不可能な死の星と化してしまう。小惑星は死と破壊の女神にちなんでカーリーと名づけられた。この危機に際して地球は、最新鋭のマスドライバーを搭載した宇宙船「ゴライアス」に特殊任務を命じ、カーリーへ派遣する。カーリーにマスドライバーを設置してその駆動力で軌道を変え、地球衝突を回避しようというのだ。だが、その計画がいよいよ実行に移されたとき、次々に思いもかけぬ障害が…。宇宙から飛来する鉄槌の一撃をいかにして防ぐことができるのか。現実に起こりうる災厄を、該博な科学知識と迫真のストーリーテリングを駆使して描きあげる、ファン待望のクラーク最新長篇。
めったに訪れる者もいないアラビダの僧院にシェイクスピアの血筋を研究するアメリカ人学者マイケル・パドヴィックと妻ヘレンが、パリから到着した。彼らを迎え入れた管理人バルタールは一目で美しいヘレンの虜となって言い寄り、博士には助手の若い女性ピエダーデを近づける。孤島の僧院でひそかに繰り広げられる善と悪の内なる闘い。巨匠オリヴェイラがカンヌ映画祭を感嘆の渦で包んだ同名映画の原作。
彼の目に浮かんだ一瞬の暗い影に心惹かれた彼女は、六区のアパルトマンの魅力的なしつらえの住まいに彼を迎え入れる。思いがけないほどの優しさに満ちた一夜を過ごしたふたりに、この世のすべての恋と同じ、甘く情熱的な日々が訪れる。愛のささやき、南仏での夜と昼、そして弁護士としての輝かしい未来への予感…何もかもが恋人たちの幸福を表わしていたが。この世のすべての恋と同じように、ふたりの恋にも、終わりが訪れる。知的で自立した女であったはずの彼女の落ちた嫉妬という残酷な罠…。
ジェーンはためいきをついた。せっかく女二人になれたというのに、娘のケイトときたら朝寝はする、バイトはする、そのあとだって門限一秒前までお出かけくださる。弱気の虫がうずいたそんな折り、ジェーン自身の母親が遊びにやってくる。滞在中、つきあって自分史執筆の講座を受けることにしたが、思いがけず毒殺事件が勃発し…。主婦探偵が生きがいと殺人犯を探索する第三弾。
私だけを見つめて下さい。そして「君を選んだよ」と言って下さい…。“今”を生きる23歳の女性3人。6年前、共に憧れた男性が現実の結婚相手となって現れた。友情も裏ぎる激しい恋のバトルの結末は。
核の恫喝を背景に、昭和大戦後の軍事再編成をもくろむ合衆国大統領マッカーサー。1948年、ついに米北太平洋艦隊は単冠日本連邦海軍基地に奇襲攻撃をかけた。乱れ飛ぶファントム、サンダーバード、ゴブリン。一方、連邦は遣外士艦隊でグアム急襲作戦を敢行する。太平洋の覇権を巡り、日米決戦の火ぶたが切って落とされた。合衆国の超重量級原爆搭載機B-30の影におびえるアジア連合はどう動くのか。CIA対明石機関・中華連邦情報局の諜報戦もきな臭さを増す。日本連邦に勝機はあるのか。大好評シリーズ、白熱の第4弾。
乱世の奸雄・曹操。南方の虎・孫堅。しかし、劉備はこの世にすでにいない。黄巾党の乱を平定する際に命を落とした劉備の名と志は、赤龍の血を引く少女、劉桃花に受け継がれた。その後、漢朝の御代は暗愚な帝・霊帝の崩御によって新たな混乱を招く。混乱に紛れ相国の座をつかんだ暴将・董卓は、策士・李儒の非情の献策を用い、洛陽を火の海とした。董卓の懐刀にして「人中の呂布、馬中の赤兎」と称えられる魔将・呂布が千里を駆ける赤兎馬を駆り、三国鼎立に向かう英雄の前に立ちはだかる。赤龍の血は英傑を引き寄せ、その色を濃くしてゆく-。
今はまだ群小プロダクションだが、いずれは芸能界の帝王にのし上がろうという野望に燃える槇真吾。密会した槇プロの売れっ子女優・絵島夏子が、高輪エンペレスから行方不明になった。西洋の古城を模したそのラブホテルに秘密の匂いを嗅ぎつけ、探索を開始する真吾。だが、ホテルの経営者で宗倉コンツェルンの総裁・宗倉頼三の陰謀と敵対することに…。都会の真中で起きた“神隠し”の裏に潜む驚愕の事実とは。
『白鯨』に続く、詩人原光氏の入魂熟成の新訳第二弾。ほぼ全中短篇を含む。細部と全体の結像力は強く鋭く精妙である。各篇は審美的に完結しながら含蓄深く、人間実存の秘奥の測深かつ啓示である。黒人バボは哂し首にされても奴隷主の白骨を幻視し、取付いた凝視で白人船長を殺す。その眼光の意味は何か。
都会の片隅でひとり暮らしをし、父親のコネで入った信用金庫で居心地のいい生活を送っている平凡なOL・鈴木深文。上司や同僚ともそれなりにうまくやっていたが、ひとりの新人の女の子が配属された時から、深文の周りの凪いでいた空気がゆっくりと波をたて始めたー。現実から逃げだしたいと思いながらも、逃げだすことをしない深文の想いは、短大時代の友人月子のいるハワイへと飛ぶ…。あなたの周りにもあるような日常を、絶妙な人物造形で繊細に描く、驚くほど新鮮なPL物語。
苦闘の末、倒幕はかなった。だが恩賞と官位の亡者が跋扈する建武の新政に、明日があるとは思えなかった。乱があるー播磨に帰った円心は、悪党の誇りを胸にじっと待つ。そして再び、おのが手で天下を決する時はきた。足利尊氏を追って播磨に殺到する新田の大軍を、わずかな手勢でくい止めるのだ。赤松円心則村を通して描く渾身の太平記。
ジンギスカンの秘宝が、中国北辺に流れついた男たちの暗い野望を煽る。新伝奇の名作として知られる表題作、天明期、シベリア探険を試みた日本人の異常凄絶な最期、中国紅軍に参加したドイツ人の酸鼻を極めた体験奇譚など、虚実ないまぜ、異境での人間の孤独な夢と暗い情熱を描く七編は、妖しいまでの魔力で読者を異次元世界へ誘う。幻想と幽闇の彼方に燦然と屹立する小栗伝奇ワールドの巨峰。
北多摩署刑事・相馬は、ある事件で知り合った少女・坪山千江と三年後の再会を約束していた。だが、三年後、相馬と対面したのは、全裸の死体となった千江だった。殺害されるまでの一年半の間、なぜか、千江は所在不明。懸命に千江の交友関係を追う相馬は、不審な動きを見せる組織の存在に気づく。さらに、その組織に失踪者が続出していることを知った相馬は、失踪者と過去の千江の足跡を求め、伊豆、そして福島へ。そこで相馬を待ち受けていたのは、驚愕の怪事件であった。
小森由紀江は、一夜の不倫を顔見知りの男に目撃されたことから強請られ、悩んだあげく赤垣美晴を訪ねた。男の目的は金か、それとも彼女の肉体か…。だが、男は約束の場所に現われず、やがて死体で発見された。特別秘密捜査官である美晴は、複雑に絡みあう事件の渦中に身を投じ、真相に迫る。