1995年12月発売
捨てられない記憶がある。見えない記憶がある…。敗戦から二年。沖縄の“荒野”で、人々はそれぞれに“蘇り”を試みる。戦場で記憶を喪った少女を中心に、占領下の基地の町で繰り広げられる叙事詩的長編小説。
スージーとピーターは、テレサとウィリーという天使といつもいっしょ。天使たちは、おとなの知らないことをいっぱい話してくれる。でも、おとなたちは、天使のことを分かろうとしてくれない。そんなとき、天使につれられて行ったのは、とても美しく、しあわせな「愛の世界」だった。「臨死体験」研究の第一人者キューブラー・ロスがはじめて書き下ろしたスピリチュアル・ファンタジー。
「人間の品性は生まれつきのものか、あるいは周囲の環境が作るものなのか、それを実際に実験してみようじゃないか」青年華族八島行秀が、友人の鷹岡紘一郎から持ちかけられた風変わりな賭け。偶然出会って上方訛りの粗野な美少年・郁也を実験台にして、ゲームは開始された。「給仕に」という名目で、郁也を屋敷へ連れ帰った晃行秀、ところが、しだいに行秀のなかで郁也の存在が大きくなっていく…。明治社交界をステージに、三人の舞踏会がはじまった。
織田信長暗殺の報を、毛利攻めの陣中で聞いた秀吉は、明智光秀を討つべく急遽反転。宿敵徳川家康は伊賀越えで難は逃れたが、天は秀吉に味方して…彼の数奇な運命をささえ、天下人にまで出世させた陰の勢力・日影一族との共栄を、斬新な視点から描く太閤記。
ひとりぼっちでは幸せになれないけれど、皆で一緒に幸せになるのもとても難しい。親の決めた結婚ゆえに自分の人生を歩むことができず、夢見がちに恋に恋することでしか自分を支えられない母。猫を溺愛して寂しさと痛みを紛らそうとする父。そんな両親に反発し、家を出てしまった兄。そして今度は姉までも。家族の再生を願う末っ子シューコの思いを綴ったノスタルジックでせつない長篇小説。
凍てつくような冬のニューヨーク。ひらひらと雪の舞うセントラルパークで名もなき女が無惨な死体で発見される。恐怖の殺人鬼ゴールトが遂にその姿を現わす。スカーペッタ、マリーノ警部、ベントン捜査官の必死の追跡が続く。やがて明らかにされるゴールトのおぞましい過去。
最果ての地でめばえた炎のような愛と憎しみー青梅の料亭旅館の女将雅代は、年来の愛人である流行作家の麻生と芸者駒太の仲に疑いを抱いていた。そんな折、近くの渓谷で駒太の夫が撲殺死体で発見される。そして今度は、雅代の親代わりの番頭甚助が行方を絶って…。旅情ミステリーの名手が贈る会心の長編。
ヴァートとは、新手のドラッグ。効用によって色分けされた羽を口のなかに差し入れて喉奥をなでれば、眼前にヴァート世界が出現する。マンチェスターの片隅でヴァート浸りの日々を送るスクリブルには、呪わしい過去があった。謎の黄羽でトリップし、妹をヴァート世界に置き去りにしてしまったのだ。最愛の妹を取り戻したい一心で、スクリブルは絶望的な探索を続けるが…A・C・クラーク賞に輝く、新鋭の超話題作。95年には最優秀新人賞にあたるジョン・W・キャンベル賞を受賞。
超能力を科学的に検証し、“ペガサスを乗りこなす”ように上手に操ろうという理念のもと、超心理学センターが設立された。人類の宇宙進出とあいまって超能力はますます重要になり、所長リューサは超能力者の人権保護に忙殺されている。そんな彼女の睡眠中に心に“侵入”してくるものがいた。強力なテレパスである彼女の心のシールドを破るとは、どんな能力者なのか…。超能力者の活躍を描く『ペガサスに乗る』姉妹篇。
貧しい下駄職人の息子平吉は、一家心中の企てが失敗した結果、サーカスに入団した。そこで師と仰ぐ丈吉に出会う。丈吉は手品や曲芸を平吉に仕込むが、ある日、忽然と姿を消してしまう。それからしばらく後、魔法のような手口で美術品を盗んでは世間を騒がせる謎の怪盗が出現したー昭和初期の風景のなか、明智探偵と怪人二十面相による数々の名勝負の真実が、いま二十面相の側から明らかにされる。痛快無比の冒険ロマン。
ダンカン・エアクラフト社のヘリコプターが墜落した事故の原因を究明するため、エンジニアのアランと整備士のティムは、アフリカのケニアに出張した。事故機のなかで死亡していたのは、悪名高い密猟者と世界的に著名な動物学者サーシャだった。調査をつづけるうちにアランは、19世紀に絶滅したはずの貴重な動物をめぐる陰謀の渦中に…アフリカの大草原を舞台に、人間の欲と思惑が交錯する、波瀾万丈の冒険アクション。
ある年の春、スティーヴンとアンジェラは、アイオワに家つきの農場を購入して幸福な結婚生活をはじめた。だが、16年後のふたりはそれぞれの人生を歩んでいた。スティーヴンと離婚したあと、アンジェラは、ふたりめの夫の浮気癖と不良娘の言動に悩まされ、いっぽう、スティーヴンは農場で牛を育てながら、子連れの女性リアとつきあいはじめている…。人生で避けてとおれない、出会いと別れ、愛と死を鮮やかに描く傑作。
いったい、何があったの。ミセス・ポッターは、彼女が所有するアリゾナの牧場の管理人から電話を受けて愕然とした。重要な会合を開くので至急来てほしいというのだ。彼女は現地へ赴くが、到着早々、管理人と彼の孫娘が突然行方不明になった。さらに、ポッター特性のチリコンカルネを食べた男性が謎の死を遂げて…料理好きの未亡人ミセス・ポッターが腕をふるって殺人事件を料理するとびきりおいしい謎解きミステリ。
スペンサーのよき理解者で、二十年来の友人でもある、ボストン市警察殺人課のフランク・ベルソン部長刑事。その彼の若き新妻リーサが、ある日、何の痕跡も残さずに突然姿を消し、さらには単身で調査を開始したフランクまでもが、何者かに撃たれて重傷を負ってしまった。かつてのスーザンとの離別経験からフランクの心中を察したスペンサーは、病床の彼の前で、調査を引き継ぐことを誓う。捜査が進むにつれ、しだいに明らかになるリーサの秘められた過去。やがて、フランクとの婚結前につきあっていたヒスパニック系の男が、リーサをボストン郊外に監禁していることを突き止めたスペンサーは、ギャングの縄張り抗争に乗じて彼女を救い出すべく、ロス・アンジェルスから強力な応援を迎え入れた。ますます円熟味を増した筆致で、極限状態におかれた人間の絶望と勇気を描ききる、シリーズ中屈指の感動作。私立探偵スペンサー・シリーズ第22弾。