1995年12月発売
岐阜県・長良川河畔で老舗の旅館を営む日野家の嫁、沙衣子は、主婦業に専念していたが、夫が急死したため、素人同然の身で若女将となった。悩みの種は姑の松乃。伝統や格式にこだわり、客よりも旅館側の都合を優先する松乃の考え方は、沙衣子と相反するものだった。やがて沙衣子は、理想のもてなしができる旅館を新たにつくろうと決意するが、その道のりはあまりに遠く険しかった。
自分の無力さを痛感した沙衣子は、かつて恋心を抱いた建築家・宗野徹也への想いを蘇らせていた。その想いが通じたかのように、沙衣子は十数年間、行方知れずだった宗野との再会を果たす。共に歩む運命を予感した二人は、出会いから長い時を経てようやく結ばれた。宗野は沙衣子のひたむきな心に動かされ、素晴らしい旅館を築きあげる。しかし沙衣子は、ある決意を固めていた…。
かつて十津川の部下だった私立探偵・橋本は奇妙な依頼を受けた。祖谷のホテルで、女性に現金五百万円を手渡せというのだ。だが、翌日その女が殺害され、彼女の身元を洗う橋本も何者かに襲われる。十津川の調べで、事件の鍵を握る妖しげな「秘密クラブ」の存在が浮上する。SM、クスリ、バクチなどあらゆる快楽を追求する会員たち。十津川の捜査の手は、組織を操る巨悪にまで及ぶ。
何としても関東軍の暴走を止めねばならないー昭和6年、柳条湖事件に端を発した「満州事変」は若槻内閣の不拡大方針に反して国際問題に発展。動乱の予兆が日本を被い始めた。時の元老・西園寺公望は元満鉄副総裁・松岡洋右を通じて関東軍解体の緊急手段を画策。それは「リットン報告書」を奪うべく“ある集団”を満州に解き放つ計画だった…。驚くべき状況下で展開する傑作長編。
少年の名はマーク、11歳。その日彼は弟のリッキーをつれてタバコを吸うために森へ行き、一人の男の自殺に遭遇してしまう。自殺した男は上院議員殺害の嫌疑がかけられているマフィアの弁護士で、死のまぎわ恐るべき秘密情報をマークに打ち明けた。秘密をしゃべったら自分も殺される。たった1ドルで弁護を引き受けてくれた女弁護士レジーと共に、彼は巨大な権力に追われ始めた…。
上院議員殺害事件の真相を知ってしまったマークは、マフィアに命を狙われている。その上、事件を解決して名をあげようとする野心家の連邦検事とFBIが何とか証言させようと追及する。マークが頼れるのは、女弁護士レジーだけ。黙秘し続けることはできない。でも証人保護プログラムも当てにはならない。この窮地を脱するにはー。熱い緊迫感をもって展開する感動のサスペンス。
抜群の推理力で事件を解決する警視庁捜査一課の筆頭管理者岩崎白日夢のもとへ、アパレル物産商事の重役たちが次々と自殺を強要されているとの訴えが入った。自殺者の保険金はどうやら会社の欠損に埋められているらしい。さっそく捜査に乗り出した岩崎だが、すでに社長は病院で息をひきとったあとだった。はたして病死か自殺か、それとも…。悪を憎み、真実を追う翔んでる警視正。大好評新世紀篇の第2弾。
混沌都市(ケイオスシティ)・新宿。超高層ビルの陰に生じた闇の舞台では、今まさに怪異な事件の幕が開かんとしていた。自ら大鴉博士と名乗る怪人からの大胆な犯罪予告。立ち向かうは未知の科学力を持つ不思議の少年蘇芳から、秘密道具を託された異能の中学生四人。果たして勝敗は。田中芳樹氏推薦の新冒険シリーズ第二弾。
嵐の中、義妹と共に山道に迷い込んだシナリオライターがたどりついたのは、山奥の古い洋館だった。世間から遠く離れて暮らす美しい5人の姉妹とメイドだけが住む不思議な館。そしてなぜか次々と姉妹たちが現われては、美しい肢体を使って誘惑してくる。そんな彼女たちやメイドに絶対的な権力を振るう、美しい謎の女…。館の人々の正体とは何か。彼らの目的とは何なのか。名作ゲームをもとに、新たなストーリーを加えてパワーアップした傑作アドベンチャー。
パリ郊外、低家賃団地が建ち並ぶ街サルセル。団地の人びとは誰もが鬱屈した思いを抱き、少しずつ常軌を逸していた。異常なまでに秩序にこだわる刑事シュナイダー、二重人格のその妻フランス、1日中、ラジオやテレビをつけっ放しにしている「ニュース狂い」の青年、九官鳥に人種差別的な言葉を教えこむ老人、巨大な双頭の鯉と格闘する下水道の掃除人、そして軍隊からごっそりと手榴弾を持ち出した志願兵のジャン・イヴ。パリの街に次々と手榴弾が炸烈する。事件を追うシャナイダー刑事の胸に抑えがたい暴力への衝動が突きあげる。そして妻のフランスの心の中では、別人格「娼婦のマギー」が死に、「ブラッディ・マリー」が現れる…。病めるフランスの現代社会を映し出した衝撃の作品。仏ミステリー批評家大賞受賞。
いまを去る四百年前、宗教戦争の嵐が吹きあれた16世紀末ヨーロッパ。-腕ききの印刷職人はどこへ姿をくらましたのか。本の都市リヨンで徒弟として修業をかさねた若き植字工アベルは、ジュネーヴで夢にまで見た印刷工房の親方となった。しかし、美しく奔放な妻マルゴを雇いの刷り工に寝取られ、波瀾万丈の遍歴の旅がはじまる…。本づくりに情熱をもやした一人の男の浮き沈みのはげしい生涯を追い、ルネサンス末期の出版文化をになった人びとの魅力あふれる世界を活写する、秀逸な歴史小説。
広告会社でCF制作の仕事をしていた氷川功一は社長であった父親の急死により中小私鉄・常総電鉄の後継者となった。いやいやながら引き受けた功一だったが、やがい持ち前の創造性を刺激され、鉄道建設に興味を覚えるようになっていく。
黙せる王は、苦難のすえ万世不変の言葉、すなわち文字を得るー古代中国で初めて文字を創造した商(殷)の高宗武丁を描く表題作。夏王朝初期、天下覇業の男達の権謀術数を記す「地中の火」。周王朝の興亡をたどる「妖異期」「豊饒の門」など。美姫の姿も艶めかしい壮大なロマン。乱世、人はいかに生きるかを問う。