1995年6月発売
戦争で負傷したヘイスティングズは、旧友の招きにより、閑静なスタイルズ荘で静養することになった。しかし、彼はそこで、奇怪な事件にまきこまれることになる。別荘の所有者で富豪のイングルソープ夫人が、深夜、何者かによって密室の中で毒殺されたのだ。たまたまその村に居合せたもとベルギー警察の名探偵ポワロの緻密な推理が始まる…。ミステリーの女王クリスティのデビュー作。
孤独で美貌の天才テロリスト、バハラットが憎しみに目覚めたのは、目の前で両親が惨殺された時だった。以来彼女は、三つの顔を持つ暗殺者として、闇の組織「スコルピオ」の全面的支持を受け、“すべての権力者に死を”を目標に活動してきた。彼女は、妻を諜報活動の犠牲にし、海軍情報部を退職した傷心のホーソンに出会って、恋に落ちた。彼女の真実を知らぬ彼もまた…。
暗殺者と追手というおたがいの正体に気付いてもなお、二人の愛は消えなかった。テロリストたちの動きは活発になり、犠牲者が増えてゆく。ホーソンたちは各国情報部と協力して、必死に闇の組織を追う。バハラットは伯爵夫人になりすまして、社交界に入り込み、彼女の完璧な復讐計画はいよいよよ最終段階に入った。二人の対決は間近だ。帝王ラドラムの世界がたっぷり楽しめる力作。
縄文より連綿と続く超能力者達の戦い。「生樹御門の会」のリーダー宇加美は壮絶な死と引換えに、息子に自分を凌ぐ超能力を伝えた。ニューリーダー猛彦の前に、「八代の悪舟」に加え、環境保護団体ガイアを主宰する真ノ浦舜が敵として立ち現われた。長い平和が終わり始まった修羅の世界、佳境へ-。
訳の分からぬ“大がかりな”事件を調べるりんの元へ訪れた青年みはるは、人の心の奥にわだかまる不審事を当人に推理展開させ、真相を喋らせてしまう“超能力者”だった。みはるの周辺では、浮気、脅迫、殺人と様々な事件に潜む真相が、泉が湧くように顕わにされる。さて、りんの掴んだ“大がかり”な真相の連鎖とは。
パンストを脱がされ、篠原校長はズボンを膝までずらしてのしかかってくる。すでに花唇は濡れていてクレーターを堀り進んでくる肉棒の圧迫感が、なんともいえない。「あッ、ああ、ああ」と何度か呻いていた。ぴったり凹凸食いつきあうと花唇部分に圧力がかかり、周辺から熱くなる。ヘアとヘアがまざりあい、こすられ、たまらない刺激が全身を貫ぬいて…。福マンと噂される未亡人の教師・桐子は今日も幸福を与えるために男達とのめくるめくセックスにのめり込んで…。
暴力団の膨大な資金源・闇試合。実力No1の裏チャンプと格闘技のスペシャリストの凄絶な死闘。金的を守るファウル・カップの使用は可。それ以外に身に着けられるのはパンツだけ。靴の使用も禁止。目を突く事も歯を使う事も、無論金的を攻撃する事も可。そして、制限時間無し、タオル投入も無し…。試合開始のゴングが鳴った。
うだつのあがらぬ飲んべえのデカ長とミニスカートの新米刑事-“美女と野獣”コンビは、空巣、ゼネコン疑惑、外国人の窃盗団を追って、今日も街を飛びまわる。犯罪は小説の第一人者が描き出す、様々な事件とその裏に潜む真相、関係者の心理。書き下ろしを含む連作短篇6篇を収録。
人が他人のために祈る時、どうすれば通じるのだろうか…。鉄拳制裁も辞さない老監督は、引退試合を終えた日の明け方、糸のようなその月に向かって両手を合わせていた。表題作ほか、選考委員の激賞を受けた「切子皿」など、野球に関わる人びとを通じて人生の機微を描いた連作短篇集。感動の直木賞受賞作。
ロンの妻が最後に彼を見たのは、四月のある晩のことだった。前妻の件で諍いをした彼は、友達の待つ別荘へと向かいーそれきり、いっさいの消息を絶った。あとに残された友人たちは、浮かれ騒ぎと悲哀をこもごも味わいながら、ロンの行方を探そうとするが…。自然な物語の奥に巧妙きわまりない手際で埋めこまれた心の謎とは何か?他に類を見ない高みに達した鬼才の最高傑作。
日本シリーズを目前に控えた東京ヒーローズの桂監督が、東京タワーで不可解な失踪を遂げた。にわかに白熱化する大阪ダイヤとの日本シリーズ。しかもその真只中、今度は東京ヒーローズの代理監督が蒸発してしまった…。事件の陰に潜む黒い陰謀を暴こうと奔走する新聞記者や監督の娘比奈子の眼前に、やがて全野球ファンを熱狂の渦に巻き込んだ壮絶な戦いを操ろうとする巨大な魔の手の存在が明らかになる…。本書は、不可能興味の横溢する事件をユーモラスな筆致で描いた、野球ミステリの傑作である。
鹿島翔香。高校2年生の平凡な少女。ある日、彼女は昨日の記憶を喪失している事に気づく。そして、彼女の日記には、自分の筆跡で書かれた見覚えの無い文章があった。“あなたは今、混乱している。若松くんに相談なさい…”若松和彦。校内でもトップクラスの秀才。半信半疑ながらも、彼は翔香に何が起こっているのか調べ始める。だが、導き出された事実は、翔香を震撼させた。“そ、んな…嘘よ…”第1回電撃ゲーム小説大賞で金賞を受賞した高畑京一郎が組み上げる時間パズル。最後のピースが嵌る時、運命の秒針が動き出すー。
「あなたはあなたでいいんだから。あなたは長い時間をかけて、よりあなた自身になっていけばいいんだから」中学3年の途中から不登校になった少女の一年。普通に登校している生徒たちの文集。少年院からの声。農村で共同生活する子供たちの手記ー揺れ動く現代社会の中で、様々な危機を抱える子供たちの発する光と影のメッセージと、それを受けとめる大人たちの姿をモザイク的手法で写しとった長篇小説。
日本の歴史上もっとも激動の明治の末から大正、昭和の敗戦まで、阿波吉野川(四国三郎)で生まれ育った若鮎(ヒロイン)が、一枚の見合い写真をたよりに朝鮮半島へ渡り、そして中国大陸へと運命の時流に翻弄されつつ、いかなる淀みにたどり着いたのか…。本書は、その軌跡を赤裸々に綴ったものである。
汚れきった「レインコート」を手放せない男は、なぜか、母の死んだ「島」を執拗に目指して旅をする。山狭を走る夜汽車。彼は隣り客に問う、「狼」はいませんかと。-レインコートとは、島とは、狼とは、何か。