1995年発売
ローマも場末のちっぽけな教会にイギリス人の青年が侵入、放浪罪で保護された。この青年、美術史を専攻する大学院生で、伴の冴えない教会には、聖画に擬装されたラファエロの知られざる傑作が、一世紀以上にもわたり飾られてきた筈だと供述。しかも彼が教会に侵入した時には、その絵は既になくなっていた、というのだが…。謎が事件を呼び事件が謎を生む、美術犯罪ミステリー。
南町奉行、内与力早乙女源六は、定町廻り同心筧彦七と岡っ引きの甚八ら六人を従えて裏探索方を務めていた。源六は老中より阿片がらみで失踪中の旗本、黒田左太郎を追うよう密命を受ける。その黒田が斬殺体で発見され、三日後に薬種問屋「肥前屋」から千両箱と阿片の入った皮袋が盗まれた。源六たちは、黒田家と確執のあった中野播磨の屋敷を見張り、不審な動きをする男たちを追って長崎へと旅立つ。長篇本格時代小説。
景気低迷のいま、どの企業も人件費削減のためのリストラ戦略が盛んである。大手電機メーカーの「アサヒ」も人事制度の改革を始めようとしていた。その矢先、極秘に作成していたリストが粉失する。このリストを見つけるよう業務命令を受けた総務課長の梶谷弘一は、リストを持ち去ったと思われる女を探し出すため、自慢の性技を武器に社内の美人秘書や部下たちの豊満な肉体を次々と征服してゆく…。長篇官能小説。
スターボウラーの高宮風太はオオッとそそる美少年。チームの解散という非常事態に、悪友の黄金沢三兄弟と共に危険なUGリーグの試合に出場する。そして殿村然に逢い、強く惹かれる。二人の関係が深まる。激しい試合を勝ち進む風太の前に、確執する実父の正十が立ち塞がった。二人の過去が明かされる。絡み合う人間関係をよそに決勝戦が始まった。野梨原花南が貴方に贈る、熱闘激愛小説。
21世紀の世界はどうなるか。レーブン博士という仮想の人物が西暦2106年からふり返って、世界歴史を記録するという形式で描かれたウェルズの最高傑作。上巻は、現代の危機感を明解に論じる。
20世紀は悉く本書の予言が的中した時代であった。それでは次に来るべきものは何か。下巻では人類の世界国家の理想を雄大な構想をもって締め括り、人々に21世紀への輝かしい展望と希望を与える。
内田家の墓前に供えられた心当りのない花。不審に思うセンセだが、浅見は隣の財田家から移しかえられたものと推理した。ところが、その約1ヵ月後、財田家の当主であるゼット精工社長・財田啓伍氏が何者かに殺された。奇妙なことに現場のテーブルにあったコーヒーカップから検出されたのは、3年前に自殺した財田氏の長女・芙美子の指紋だったー。名探偵・浅見光彦と軽井沢のセンセが、殺人事件の謎を追う。
原平合戦絵巻のハイライトともいうべき屋島の戦いで、歴史の表舞台に突如登場し、扇の的を射落とした若武者とは何者か。わずか十三歳で大熊を射とめ、その名を下野一帯に轟かせたと伝承は告げる。那須在住の鬼才谷恒生が、土地に残る数少ない言い伝えや文献を渉猟して謎の麒麟児の実像に迫る歴史大作。上巻では、その生い立たから、義経に邂逅するまでを描く。
与一と那須党がいなければ、この義経の軍法は成り立たぬー。義経の戦略の中核となり、先鋒となって、与一は駆ける。木曽義仲との宇治川の合戦、平家との一ノ谷鵯越えの決戦、そして那須与一の名を歴史に残す屋島の戦い、あの扇の的…。だがその後の与一はどうなったか。大転換期を華やかに駆け抜け、再び歴史の闇に消えた天才児の謎の生涯を描く鬼才の長篇傑作。
物語は主にマネーファ(野生の美しい人妻)とデニス(天才青年詩人)との嵐の如き恋をめぐって展開されているが、そこには、熱愛する妻の冷たい態度に日夜苦悩を続けるマネーファの夫アリム、その弟で義姉にひそかな愛情をよせるムスタファ、鋭い知恵と粗暴なユーモア性に富む忘れがたい存在のセヴェリヤン爺さんはじめヴォルガを中心に、農耕と漁獲を生業とする純朴な村人たち他、1930年代ソビエト社会の各階層を代表する人物が網羅された多彩な人生絵巻をくりひろげている。
黒衣の貴婦人・ステラさんのフォースの助けを借りて、大上円はついにこの世界の謎を次々に解き明かしていく。神様・円くんの目から見た世界の構造はいかなるものか“ウィンドウズ”に秘められた世界の真実とは。壊れていく世界の中に、“ファミリー”を離れてただ一人残った大上円は、愛する女性たちと共に新しいファミリーを作り上げる。新たな世界を産み出す“フォース”を発動する日は近い。
文政年間、爛熟をきわめる大都会江戸に、怪異な事件が頻発した。地蔵が深夜涙をながし、突如起こった怪風が、女体を天に舞い上がらせる…。超常の現象に対応するため、時の老中は四人の男女を集めた。勝手御免の特命与力と同心達である。身分を隠し、あらゆるところに潜入して謎を追う四人は江戸を救えるか。
幾度も繰り返される殺人。殺されるのはいつも渕上零治郎。それは、現実の出来事。だが、それを認識できるのは孫の久太郎だけ。時間の“反復落とし穴”に嵌まり込んだ久太郎が、祖父の命を救うべき孤軍奮闘するが…。
娘が妻のある中年男を愛していると知ったとき、セシルは自分の夫にも疑いの目をむけた。やがて疑いは確信に、そして現実へと変わってゆく。長い年月かけて育んできた夫婦のきずながこんなにも簡単に壊れてしまうのだろうか…。
ハワイを制覇し、パナマ運河完全破壊で大活躍、帰路でも傷ついた戦闘機を艦隊まで導いた古谷義勝と渕上繁雄のコンビは、飛鷹航空隊を代表するヒーローとなっていた。そんななか、航空隊は九九式にかえ、新型艦爆“彗星”に機種転換を行った。エンジンの安定性には疑問があったが、速度は速く、爆弾搭載量も多い彗星に早速乗り込んだ古谷は、進撃を続ける日本軍の新たな目標、アメリカ西海岸ロサンゼルス上陸作戦に参戦したが、予想通り、エンジントラブルの多さに彼は手を焼いた…。
屏風岩東壁基部で坂東真司の遭難遺体が発見された。彼は恋人の毛利晶子と屏風ノ頭で待合せすることになっていたのだが、行方が判らなかったのだ。遺体は頭部だけが割れていた。直登ルートをたどって落下した場合、最低二度は壁に衝突する。五体は満足でありえない。では壁の下の方で転落したのだろうか…。惨劇の裏に潜む温泉旅館の女将の失踪事件。
異常犯罪集団の狂気の毒牙。餌食にされる女豹軍団壊滅の危機。あの女が必要以上に逆らったから悪いんだー。フィギュアを削っている手を止めた川添がじっと美穂の写真に見入った。今まで憧れていた美穂の裸体が艶めかしく目に映っていた。