1996年10月15日発売
図書館を訪れた「私」は、いつの間にか別世界に迷い込み、探偵天下一になっていた。次々起こる怪事件。だが何かがおかしい。じつはそこは、「本格推理」という概念の存在しない街だったのだ。この街を作った者の正体は?そして街にかけられた呪いとは何なのか。『名探偵の掟』の主人公が長編で再登場。
真犯人は、裁判所あるいは警察の内部にいるのか。それともラーラ判事の下した判決に恨みをもつ者の仕業か!?担当刑事リッカーソンのハードな捜査が続く。逆転また逆転、ラスト100ページの息づまる展開!SM売春、幼児虐待…正義が報われることのない病めるアメリカの真実に迫る興奮の全米ベストセラー。
虚栄の都・ハリウッドに血で爛れた顔の「怪物」が出没する。ホラー作家が首を切断され、嬰児が次々と誘拐される事件の真相は何か。女優レオナ松崎が主演の映画『サロメ』の撮影が行われる水の砂漠・死海でも惨劇は繰り返され、甦る吸血鬼の恐怖に御手洗潔が立ち向う。ここにミステリの新たな地平が開かれた。
親友が顔を吹き飛ばされて殺された!見知らぬ女から電話がかかった後だった。その電話はダンに青春の一コマを思い出させたが、殺されるような原因には心当りがない。だが、もう一人の親友も自分も命を狙われるに及んで、ダンは電話の女の影を追い始める…。人間の恐怖と不安を鋭く描く傑作サスペンス。
夫の修理と死に別れ寡婦となり、鶴ヶ城へ行けぬまま官軍兵士の暴虐にさらされた神保雪子を描く表題作。若松郊外涙橋の戦いに散った絶世の美女・中野竹子を描く『涙橋まで』。女だてらに銃を持ち籠城戦で戦った山本八重を描く『残す月影』。一八六八年の会津を舞台に織りなされる各々の人間模様。男と女の滅びの美を丹念な史実の発掘から見事に描きだす珠玉の六編。
そのテラナーはいっさいの記憶を失ったまま、衛星タイタンの秘密ステーションに幽閉されていた。テラナーのほかにそこにいる生物は、メルコシュと名乗るオプロン人のミュータントだけ。しかもメルコシュは、隙あらばテラナーを殺そうと狙っていたのだ!たがいに牽制しあいながらも、ふたりは共通の目的である自由を求めてステーションを脱出した。だが、地表に出たテラナーたちの前に、謎の巨大宇宙船が出現した…。
降旗少尉以下、3名の首都圏情報防衛軍団兵士が遂行する作戦名は“マタタビ”作戦。首相の行方不明になった愛猫を捜し出せ、というものだ。ただしその猫は、脳にひじょうに貴重な情報が入力された、人類の存亡を決する猫なのだ。3名はなんとか目標の猫を発見したものの、コンタクトしようとして、失敗。しかも、本部との通信は不能となってしまった。現在地不明のここは、すでに死後の世界なのか?俊英が描くSF長篇。
パリの街角にある小さなレストラン『ル・プチ・マルグリィ』が今宵かぎりで閉店する。三十年近くにわたって美味しい料理を作り、温かく客をもてなしてきたオーナー・シェフ夫妻は、二十代の息子とその友人たちを招き、お別れの晩餐会を開く。アペリティフからデザートまで、素敵な料理のフルコースと楽しいおしゃべりが進むなか、皆に愛された店の歴史が、夫妻の秘密が、若い世代の様々な恋や人間模様が浮かび上がる…。
本書は、『シンプルな情熱』発表の翌年93年に上梓された最新作。パリ近郊の新興都市セルジーに住む著者は、84年のルノードー賞受賞作『場所』の翌年から『ある女』と『シンプルな情熱』の執筆期間をはさんで92年までの八年間、「戸外」の日常的な場所で見かけた人びとの情景を日記のごとく書きとめていた。そのスケッチ風の短い断章からなる本作品は、独自の視点と感性で現代フランスの断面を見事に浮かび上がらせている。
わたしはなんとしても作家になりたい!創作意欲に燃える家事ロボット-キャル-が、様々な機能を付け足し、執筆内容もしだいに上達して、やがては主人の作家を凌駕する作品を書き上げたとき…作家志望のロボットの奮闘を、ブラックな笑いにつつんで見事に描きあげたロボット・シリーズの名作「キャル」。「リア王」のコンピュ・ドラマ化に成功し世界的な名声を得た演出家ウイラードのところに、ひとりの作家が訪れた。自分の作品をコンピュ・ドラマ化してほしいという。しかもひきかえに、十万グロボ・ドル相当のゴールド-黄金を支払おうというのだ!映像化を拒否するような内容の原作を、コンピュータを使っていかに立体映像化するか…息詰まるコンピュ・ドラマ作成現場を描きヒューゴー賞を受賞した「ゴールド-黄金-」。そのほか、作家志望の若者たちにSF小説作法を伝授する「SF作家になるためのヒント」、著者みずからがロボット・シリーズについて解説する「ロボット年代記」など、愉快でためになるエッセーの数々をあわせて収録した、アシモフ最後のヴァラエティ溢れるSF作品集。
ことばで生きるものの迷いと悲しみ。彼女のあとについて歩くような文章を書いてみたい、そんな意識が、すこしずつ私のなかに芽ばえ、かたちをとりはじめた…20世紀フランスを代表する文学者ユルスナールに魅せられた筆者が、作家の生きた軌跡と自らのそれを幾重にも交錯させて紡ぎだす待望の長編作品。
心はいつも朗らかながら経済観念まるでなしのランプリイ家は、何度目かの深刻な財政危機に瀕していた。頼みは裕福な親戚の侯爵ゲイブリエル伯父だけ。ところがこの侯爵、一家とは正反対の吝嗇で狷介な人物、その奥方は黒魔術に夢中のこれまた一癖ある女性。援助を求めた一家の楽観的希望もむなしく、交渉は決裂、侯爵はフラットをあとにした。ところが数分後、エレベーターの中で侯爵は、眼を金串でえぐられた無惨な死体となって発見された。わずかな空白の時間に犯行が可能だったのは誰か?はたしてこの愛すべき一家の中に冷酷非情な殺人者がいるのだろうか-?魅力的な英国貴族の人物造型と流麗な情景描写、巧みなトリックが融合したマーシュの代表作。