1996年2月発売
宇宙に浮かぶ、青い、水の星。海の中に浮かぶ、五つの大陸と島々。そこには、この星を守ろうとする人々と、青い星を壊そうとする人々がいる。本書は、青い星と平和を守ろうとする人々の、怒りと涙に満ちたすべての存在の、抗議の寓話集である。
大阪・天満橋から三十石船に乗り込んだ夢野幻十郎。彼は舳先に座っている二人連れの女に近づいた。17、8の娘と30前後の年増である。千人供養の第一番はこのどちらかに決めた…。色公卿・高倉色道軒の千人供養満願成就にケチをつけたのがキッカケで、自らも3年以内に千人の女と媾合う願をかけるハメになった幻十郎の色ごよみ。
本書は「現代の『紅楼夢』」「記念碑」「奇書」「後世に伝わる書」と賛美の反面、「モラル不在の作品」「反共」「猥本」「作者を法により罰せよ」と罵詈雑言を浴びた。そこに描かれているのは二十世紀末の中国の現実であり、中国人の生存情況や精神位相、および生命意識などである。
江戸期には珍しい女性エッセイスト、只野真葛を描いた『葛の葉抄』、『炎環』以来ひさびさの連作小説『うたかたの』を収録。年譜付。古代から江戸まど、小説で辿る歴史の旅。
弁護士から浮気調査を請け負って日銭を稼いでいるジャック・フリッポは、かつてはやり手の検事補として誰からも一目置かれる存在だった。ところが、女との火遊びがもとで検事局を馘になってからというもの、彼の人生は転落の一途。妻には逃げられ、家も財産も失い、いまは安アパートでわびしい独り暮らし。そんな彼のもとに、経営コンサルタント会社社長のバディ・ジョージの妻から、夫の不貞の動かぬ証拠をつかんでほしいという依頼が舞い込んだ。なんなく情事の模様を盗聴したまではよかったが、敵も録音テープを取り戻そうと必死の様子。おまけに依頼人の女がとんだ食わせ者だった。バディの妻というのは真っ赤な嘘で、どうやら彼から大金を巻き上げようという魂胆らしいのだが…。虚飾の街ダラスを舞台に、大金をめぐって繰り広げられる丁々発止の騙し合い。英国推理作家協会賞の最優秀処女長篇賞に輝いた注目のクライム・ノヴェル。
竜泉郷めざして中国に上陸した竜堂四兄弟。またしても闇の支配者・四人・姉妹の手下が立ちはだかる。中国人民軍との戦いやいかに…。はたして中国奥地の空翔けていく四色の巨竜は、目的地にたどり着くことができるのだろうか。謎の女性・小早川奈津子も遂に登場してパワーアップした本巻も、乞う御期待。
“完璧な逮捕劇ね”-FBI捜査官アナ・グレイはそう思った。たまたま出くわした銀行強盗を、たったひとりで難なく逮捕してしまったのだから。これで念願の昇進も確実のはずだ。しかし、性差別主義者の上司は、昇進のためのさらなる条件として、往年の映画女優ジェイン・メイソンが、治療を受けていた医師にドラッグ中毒にさせられたと訴えている件の調査をアナに命じた。自らのキャリアをかけた特別任務-だが、疑惑の医師の家で働いていた女性が、幼い頃に別れたために全く記憶にない父の実の姪であることが判明し、アナの心は微妙に揺れ動く。しかも、その女性は数日前にハイウェイで謎の死をとげていたのだ。国民的大女優ジェインを取り巻く虚飾のヴェールが剥がれおちるとき、アナ自身の封印された幼年時の記憶までもが、はからずも明らかになる…。混沌の大都市、ロサンジェルスを舞台に女性FBI捜査官アナの活躍を描き、S・トゥロー、R・B・パーカー、J・エルロイら実力作家たちに手放しで絶賛された、エイプリル・スミスのデビュー作。
時は平安の世、広才の士と仰がれた小野篁は美しきこと世にまれな、年若い女に恋をする。しかしその女は、篁の“異母妹”だった。みずからの命をすりへらし、来世で出会うことに望みをかける女。だが男は、罪深き恋ゆえに、のちの世で会うことも叶わぬことを知り、現世に女の魂を永遠にとどめようとする。二人の恋の忘れ形見、小野小町。恋を遠ざけ続けた彼女は、やがて自分の中に封じられたさらなる悲劇を知ることになる…。夜ごと地獄の庁に座す魔性の男、小野篁。その女(むすめ)、小町。平安京の闇に葬られた小町の悲恋とは。呪われた一族の血とは。『東京魔方陣』の著者による話題騒然の伝奇小説。