1996年4月15日発売
愛すること、信ずることって何だ。ぎりぎりの死を見つめる“心”の作品集。隠れキリシタン、風葬の島、一妻多夫制、様々な精神のあり方を吉川英治新人賞作家が鋭く抉る。
仲よし四兄弟、セルマ、ロジャー、ジェームス、ハリエットは、お母さんもため息をついたくらい、翼をはやして生まれてきた猫たちです。荒れた町から森へ飛んでいった彼らはハンクとスーザンの心やさしい兄妹に出会うのですが。ル=グウィンの世界を村上春樹さんが美しい日本語に翻訳した素敵な童話です。
どこからか彼に囁く声がする。手を早く洗え、と。平凡な事務弁護士である男は、女の喉に触れた指に力をこめる。あの声を沈黙させるためにー深夜のフラットで独身女性が絞殺された。無惨にも屍肉の一部を切りとられて。ロンドン警視庁のブランチ女性警視と連続殺人鬼との壮絶な戦いを描くサイコ・サスペンス。
スリランカのジャングルで遺跡を捜す日本人「おれ」は、報酬につられて危険な仕事を引き受けた。革命組織の男女をつれて政府軍の包囲を突破し、密林の奥にあるゲリラ基地へと潜入するのだ。しかも男のほうは、なんと日本人だった。ワニがひそむ河をカヌーで進み、野象が咆哮する大地を駆けるーそして襲いくる、謎の追跡者の銃弾。血の民族抗争に燃えるインド洋の島を舞台に、冒険小説の新たな旗手が放つ大迫力の長篇。
高校二年の武藤類子は、剣道部に在籍する、可愛い現代っ子だ。三年ぶりに偶然出会った先輩の高杉に連れられ、彼がマネージャーをしているというバンド“パルス・ギャップ”のメンバーや、スタジオ・ミュージシャンの速水果月に紹介された。数日後、すっかり親しくなった彼らが、一人暮らしを始める類子のため、引っ越しを手伝いにやって来ると、まだ誰にも番号を教えていないはずの電話のベルが鳴り始めた。
1980年代、アメリカ三大ネットワークの一つNBCで最初のアンカーウーマンとなったジェシカ・サヴィッチ。彼女こそはアメリカン・ドリームを生きた女性だっ。美しく賢く、競争の激しい報道の世界で30歳で成功する。が、つらい過去と秘密があったー。彗星のように現れ、36歳の若さで怪死した実在の人物サヴィッチの華麗なる生涯を描いたノンフィクション。映画「アンカーウーマン」の原案原作。
ロシア極東地区で発生したクーデターを逃れ、ウラジオストクを脱出した20隻ほどの艦隊が日本の領海をめざした。政府は負傷者を乗せた艦の受け入れを認めたが、新潟西港に接岸した駆逐艦は主砲を回転させ、日本の巡視船をとらえた。上陸を開始したロシア兵は機動隊を掃討、さらに新潟県庁・県警本部・新潟空港を乗っとり、数多くの人間を人質にとった。政府は自衛隊三軍に対して防衛出動を命じ、陸上自衛隊の縮小改編にともなって結成された第一空中機動団が戦場に向け飛び立つ。双方が実戦に突入した頃、柏崎刈羽原発をロシアのヘリが襲い、プルトニウムの奪取に成功。待ち受けていた潜水艦に移され、日本海のいずこへと消えていった。一方、首相官邸では総理が服毒自殺をはかり、政府は責任者不在となり、混迷の度を増していた…。大好評の軍事シミュレーション、いよいよ完結。
東京湾臨海署(ベイエリア分署)の安積警部補の許に、殺人事件の通報が入った。ライブハウスでホステスが毒殺されたというのだ。場違いと思える被害者がなぜそこにいたのか。疑問を感じた安積は、同時刻に発生した別の事件との意外な接点を発見。繋がりをみせた二つの標的が、安積たちを執念の捜査へと駆り立てる。気鋭が放つ刑事小説シリーズ待望の文庫化。