1996年8月発売
日本中が太平洋戦争一色に塗りつぶされていく頃、戸数40戸ほどの楚洲の村で、松堂家の人々は仲睦まじく暮らしていたが…沖縄本島北部「ヤンバル」と呼ばれる美しい自然のなか、病に、戦争に、命を脅かされながらも、素朴な愛を失わず生きる人々を詩情豊かに描く。沖縄県具志川市文学賞受賞。
今こそ新しい預言者があらわれる時だー。ある時は銀行員、ある時はアステカの神官の子孫。神出鬼没、正体不明の“神の代理人”謎の預言者ムルカシを探せ!元カソリックの信者で後に娼婦となったマリ子と、聖書と『ガンジー自伝』を愛読する天才的平和主義者の日本人ワタルが、ムルカシを追って都市を彷徨い、聖地を巡礼する。永遠の悟りを求めた魂の遍歴を綴るアンチ宗教小説。
長谷川正人は遭難したダイビング仲間を探すため、奥多摩の地底湖に潜った。そこは水没した鐘乳洞で、中は迷路のようだった。自分の位置を見失ってしまった正人は死を覚悟するが、突如現れた「彼女」に導かれ、奇跡的に生還した。あれは幻覚だったのか?それともー正人は「彼女」の姿を求めて再び水底へと向かう。だが、そこで見たものは…。新感覚のサスペンス・ファンタジー。
ニューハンプシャーの小さな街で十七歳の少女が惨殺された。容疑者は同級生の少年ジェイコブ。彼は理由も告げず失踪し、警察は家族の家を訪れた。彫刻家の父親ベンと小児科医の母親キャロリン、そして妹のジュディス、三人の生活はその瞬間から一変した。倫理を貫こうとする母親と愛情を訴える父、その狭間に立ってただ内向していく妹。愛情と家族のあり方を厳しく問う問題作。
北能登・恋路海岸で、1発の銃弾が若い女性の肩をかすめた。恋人を自動車事故で失い、傷心の旅に出た松田由紀子を狙撃したのは誰か?その翌日、由紀子の泊まった部屋に男の死体、横には血まれのナイフを握った由紀子が…。十津川警部、亀井刑事の指揮のもとに、真犯人を追う若き日下刑事の執念を旅情豊かに描く。
念法の達人工藤明彦は、財閥の一人娘麻耶に取り憑いた妖魔の退治をひきうける。だが、妖魔の背後に工藤の念法をも凌ぐ妖力を持つ怨霊がいた。必死で謎の怨霊の正体を探る工藤。しかし怨霊は、麻耶の親友たちを操り、そのセックス相手に次々と妖魔を憑かせていく。未知の敵に挑む工藤の凄絶な活躍を描く、瞠目の新境地。
最先端技術の粋を結集した超電導船「海洋丸」が、試験航海中、爆発、沈没!最新技術を狙う謎の組織“十三の神”の仕業か?さらに敵は、超電導研究の佐野原博士夫人を誘拐した。夫人救出のため、単身“十三の神”の本拠地に潜入した黒木豹介のベレッタが熱く吼える。
社寺の境内で、大道芸を演じて生計を立てている塚野金三郎。実は、剣にかけては、なかなかの腕利き。ある日彼は、奥州某藩の侍に、藩士として他藩との試合に出てくれと頼まれる。勝てば一両二分、負けても二分はくれると言う。ところが、相手方の藩士からも、負けてくれれば二両やるが、と誘われて…。さて、金三郎が獲得した礼金は?味わい豊かな傑作時代小説集。
『白骨鬼』と題する江戸川乱歩の未発表小説が発見された。南紀・白浜で奇行を重ねていた学生・塚本直が異様な首吊り自殺を遂げた。だが、本当に自殺なのか。真相を追い、乱歩と詩人・萩原朔太郎が推理を展開するー。雑誌に連載され、好評を博す『白骨鬼』。しかし、そこには恐るべきカラクリが。本格推理の傑作と絶讃された奇想の長編、待望の文庫化。
ドイツ国境地帯への進撃を準備していた連合国軍の前戦に、ドイツ装甲軍が大攻勢をかけた。アルデンヌを突破し、ミューズ河を渡り、ブリュッセルを抜いてアントワープ陥落を目指すヒットラーの起死回生の電撃作戦である。アルデンヌに展開しているのはホッジス米第1軍麾下の百武第17軍だった。ドイツ軍の猛攻を凌ぎ、補給路が伸びきったところで、百武第17軍は反撃に出た。ジークフリート・ラインを突破してルーデンドルフ橋を確保し、ラインを渡河して快進撃が続く…。
若いOLが自宅のマンションで惨殺された。喉は掻き切られ、乳首を噛みとられ、陰部も抉られていた。この事件の1ヵ月前にも女子大生が同じように惨殺されていた。どちらもスタンガンで意識がなくなったところを、大型カッターナイフで切り刻まれていた…。殺しは憎しみか悦楽か。異常犯罪者の恐怖の行動と殺意。
開戦からわずか2カ月で、米東海岸に歩を進めた大機動部隊。今や名軍師となった大野光男の采配はますます冴えを見せ、強大な航空部隊は縦横無尽に暴れ回る。さらに、鹵獲したB-17をコピーした日本初の本格的戦略爆撃機、二式重爆の部隊が、この戦いに決着をつけるべく太平洋を渡った。限りなく広い米本土、待ち受ける迎撃戦闘機、日本軍は果して勝利を掴むことができるか。そして大野が描いた対米戦のシナリオは、いかなる結末を迎えるのか。渾身の完結編。
人別書きを持たずに故郷を出奔した者に就く職はない。無宿者は江戸制度の谷間であったー。賭場の喧嘩で八丈島へ流され、赦免船を待ちわびる忠五郎、牢の火事で思わぬ自由を得た平吉、佐渡から島抜けを図る新平、入墨を暴かれて堅気の暮しを失う卯助など、自由と公正を渇望する男達を描いた傑作時代短篇集。
美しい姉と、その陰でいつも損な役まわりを演じてきた妹。だが、大人になってヒロインと脇役という立場は逆転してしまう。心にわだかまりを持つ姉妹それぞれに、ある日、大事件がふりかかる。姉妹の屈折した肉親愛をほのぼのと描く表題作の他、向田ドラマの秀作「花嫁」「当節結婚の条件」の三篇を収録。
ボクサー崩れの酒井は、恩人・津村のパチンコ店で働く釘師。ある日苦情に対応したが、以後査察や業者の取引中止が相次ぎ、何者かに身に覚えのない“物”を渡せと脅迫され、ついには津村が失踪する。大阪中のヤクザが政治家をも巻き込んで探している物とは何か。酒井は封印を破り、自らの拳をふるって立ち向かう。
受け取る人が必ず訪ねてくるという不思議な絵ハガキを作る「絵ハガキ屋さん」、花火で「空いっぱいの大きな絵」を描いた黒い鞄の男などの個性的な人々とティオとの出会いを通して、つつましさのなかに精神的な豊かさに溢れた島の暮らしを爽やかに、かつ鮮やかに描き出す連作短篇集。第41回小学館文学賞受賞。
イギリス文壇の過激な挑発者が放つ抱腹絶倒の自伝的処女長編。フリーセックス、パンク、ドラッグの嵐吹き荒れる70年代。17歳のカリムの運命は、インド人の父親が突然“教祖”になって大波瀾!70年代ロンドンを舞台に描く抱腹絶倒の青春小説。