1996年発売
筑波の山から程近い豊田の里-平小次郎将門の生地である。筑波明神の祭礼の夜契った女(小督)に対する愛情が将門の胸を離れない。将門の父平良将急死の後、一門の同族は所領の横領を企てている。小督の父源護に申し込んだ縁談も、しかるべき官位なきゆえと断られ、伯父等の甘言に乗せられた将門は、官途につくべく従兄貞盛と共に京に向かう。京で、将門が辿る運命は苛酷、無慈悲なものであった。貴子姫との恋も貞盛に奪われ、官位への道も開けない。寂寞と望郷の思いが将門の胸にみちる。空しく坂東へ帰った将門を待つものは伯父達の陥穽である。伯父良兼の妻詮子に図られて、源家へ赴く途上、将門は敵の大軍に挾撃される。将門は、奪然、寡兵をもって敵陣に殺到する。戦機とみに熟し、豪快壮烈な血戦は関東の野に拡がってゆく。
ベンが消えた!「騎士」連続殺人犯GOGを追跡中、アルトゥラとボーンの目の前からベンは突然、姿を消してしまった。ベンはマッシュルームギャングスのボス、トードストゥールの罠にはまり、「向こう側」に送られてしまったのだ。北の監獄にいる科学信者たちの煽動、アジト移動となにやらまた不穏な動きをしはじめるマッシュルームギャングス。マジカル・シティに、はじまって以来の最大の危機が訪れようとしていたー。
みなし子レミは、養父によって旅芸人ビタリス(実は往年の名歌手カルロ・バルザーニ)親方に四十フランで売られてしまう。八歳のレミにとって、ビタリス親方はかっこうの人生の師匠となり、フランス中を旅してまわることになる…。旅が少年の家族を作り、家族の絆を深めてゆく、少年冒険小説の大傑作。
異なった家族を持つ二人が、隠れて激しく求め合うスリル。そして、他人から親子と思われるような、若く初々しく可愛い娘との逢瀬。諸行無常の森羅万象、限りある一生。どんな生き方をしようと誰に遠慮もいらないが、男には男のおきてが…。つるべ落としならぬつるべ落ちな男の物語。
大学を出て七年、三十歳を過ぎた西村は、平穏な職場と家庭を捨て、書きためた原稿を抱えて昔の友人たちの前に現れる…革命の理念のもと、警官隊との激突、火焔瓶闘争、ハンスト、党派抗争、リンチ事件と激動の青春時代を共にした旧友たちは、いま何を考え生きているのか。
あのひとが何年もまえに死んだと人づてに聞いた。「…」あの中国の男の死、あのひとの身体の死、あのひとの肌、あのひとのセックス、あのひとの手の死が起ころうなどとは想像もしていなかった。-その知らせを契機にデュラスは『愛人』で語られた物語を根本的に考え直す。狂おしいほどの幸福感とともに書きすすめられたのが、もうひとつの“愛と死の物語”『北の愛人』なのである。
古典主義とドイツ・ロマン派のはざまで三十四年の凄絶な生涯を終えた孤高の詩人=劇作家クライスト…。カタクリスム(天変地異)やカタストロフ(ペスト、火災、植民地暴動)を背景とした人間たちの悲劇的な物語を、完璧な文体と完璧な短篇技法で叙事詩にまで高めた、待望の集成。貴重なエッセイ二篇を付し、今はじめてこの天才作家の全貌が明らかとなる。
左遷されて腐っていた広告マン・永作憲二は、ディスコで“三拍子そろった女”・水沢美紀と意気投合。ルームメイトとして一緒に暮らすようになる。まさに“夢”のような毎日を送るが、その代償はあまりにも大きく残酷なものとなった-。エロス&ハードバイオレンスの超新星が放つ、鮮烈にしてアブナイデビュー作。
秋の柔らかな陽光に包まれた兵庫埠頭に、冬木健司は立った。「夜の走者」-この海で不審な死を遂げた親友が遺した言葉。風が、11年ぶりに再会した未奈子の髪を揺らし、遠い日の光景を運んでくる…。