1997年12月発売
南国の宏大な屋敷で生れ育ったセントバーナードとシェパードとの混血の子バックは、突然、鞭と棍棒に追われ、アラスカの氷原で屈辱的な労働を強いられることになる。苛酷な労働と生死をかけた闘いの中で、バックは次第に野性に目覚めてゆく。全篇を貫く強烈な反抗精神と自由への憧れが読者を魅了する、ロンドン(1876-1916)の出世作。
結婚して子どももいるはずだった。皆と同じように生きてきたつもりだった、なのにどこで歯車が狂ったのか。賢くもなく善良でもない、心に問題を抱えた寂しがりたちが、懸命に生きるさまを綴った短篇集。
元処刑捜査官の北条貴は、国際警察刑事機構の助っ人としてバンコクへ飛んだ。そこのチャイナタウンで、かつては権力者の圧政から中国の民衆を守る互助組織であった三合会が、犯罪組織へと変貌し世界に進出していた。北条に組織から、彼の仲間の耳が送られてきた。明らかな宣戦布告に、貴はすべてを覚悟して、単身、今もっとも不気味な中国マフィアの本部へ乗り込んだ。
ベルリン国境で命を落とした妻への復讐を誓う義弟ジョージがワルシャワで失踪。彼のものと記されたホルマリン漬けの手首が、SIS(イギリス秘密情報局)局員バーナード・サムソンの元に送られてきた。さらに東に置かれた秘密組織「デリウス」が連絡を絶ち、調査に赴いたサムソンの眼前で、リーダーの牧師が爆死する。-冷戦終結に「希望」はあるのか…?最後の本格スパイ・ストーリー「新々三部作」迫真の第二部登場。
菊地昭夫は、自分の軽はずみな発言が招いた不本意な人事を機にある日突然会社をやめた。とくに考えがあったわけではない。するとそこに、お見合いをして断られたはずの女性から、自分の店を手伝ってほしいとの話がもちあがり、昭夫はアンティークショップの店員となる。その上、大恋愛の末に自分を捨てて他の男と結婚したはずの女性がマンションの隣に引っ越してきた。さらには携帯電話を拾ったことがきっかけとなり新しい恋がめばえそうな予感も…。人は人であるかぎり、いくつになっても恋をする…恋をすれば、傷つけられたり、傷ついたりすことも…それでもやっぱり人は誰かを好きにならずにはいられない-。不器用でユーモラス、ちょっぴり切ない究極の大人のラブストーリー。
今年で創刊四十周年を迎えたSF同人誌「宇宙塵」の、既刊一九四冊の中から傑作・佳作を厳選したベストコレクション!2には、『ソリトンの悪魔』で推理作家協会賞を受賞した梅原克文のデビュー作『二重ラセンの悪魔』の幻の中篇バージョンを初めて収録!他に、清水義範「待っている」、梶尾真治「もっともな理由」といった単行本未収録作品や、小松左京「地には平和を」、広瀬正「作品が書けない理由」等の初期傑作を収録。
百年近く生きたお祖母ちゃんの死とともに、その魂を受け継ぎ、「救い主」とみなされた新しいギー兄さんは、森に残る伝承の世界を次々と蘇らせた。だが彼の癒しの業は村人達から偽物と糾弾される。女性へと「転換」した両性具有の私は彼を支え、その一部始終を書き綴っていく…。常に現代文学の最前線を拓く作者が、故郷四国の村を舞台に魂救済の根本問題を描き尽くした長編三部作。
1941年初秋、ワシントンD.C.日本大使館。難航する和平交渉の最前線で芽生えた二つの恋。機密文書を打ち出すタイプライターが恋に搦め捕られたとき、男女は否応なく外交交渉のホットゾーンに投げ込まれた。そして彼らは切望した。和平の成立と恋の永遠を。運命のパールハーバーが日本外交の欺瞞を世界に曝してから約二週間後、戦時下のクリスマス・イヴに、ある秘密が永久に封印された…。
武蔵野の清涼学園で映画論の講義を受け持つ吉武源一郎は、表向き爽やかな四十男のイメージだが、実は淫蕩な好色講師。彼の魅力にひかれたイケイケの女子学生は数多だが、その中の一人が、ベツドの中で同僚の美人講師遠山冴子が、吉武に興味を持っていると教える。吉武は早速、行動開始。知的美人を恥語責めでイカせ、ホテルに直行するや、抜群の性テクニックで彼女を快楽の絶頂に導かせる。