1997年4月30日発売
人類が火星移民を始めて100年を経た22世紀後半。火星市民はナノテクを初めとする先端技術を適度にとりいれた共同体生活を謳歌していた。だが、火星が独立憲法の制定と政治的統一をめざしていたそのとき、母なる地球は密かな陰謀をめぐらしていた。テクノロジーの袋小路につきあたった地球の目的はただひとつー独立にはやる火星を従属化、搾取すること!未曾有の動乱の嵐は、いままさに赤い惑星をまきこもうとしていた。ネビュラ賞受賞。
火星の命運は若き女性政治家キャシーアに託された。困難な地球との交渉にあたる彼女は、かつての恋人だった物理学者のチャールズから、超兵器としても応用可能な“ベル連続体理論”の存在を知らされる。だがそれは両刃の剣だった。その理論の潜在的な破壊力に気づいた地球によって、火星への全面攻撃が開始されたのだ…近未来火星のヴィヴィッドな描写と破天荒なプロットでネビュラ賞に輝いた、ベア畢生の超大作登場!ネビュラ賞受賞。
警察官になりたい一心で、アビーは警察学校の厳しい訓練を経て卒業にこぎつけた。だが、新人警察官に実地研修は苛酷で、性差別主義の教官に泣き、緊迫のパトロールに胃が痛んだ。ある日、彼女の同期で親友のモレリに暴行の疑いがかけられる。事件はやがてアビーをも絶体絶命の窮地に陥れ、予想外の結末へ…現役女性警察官がリアルな描写で放つデビュー作。
ホームレスのジョーイは、財布を盗んだ男が心臓発作で急死したばかりに謀殺罪に問われた。刑事弁護士のディーンは彼の弁護を引き受けるが、まもなくジョーイの供述書の署名が偽造されていたという驚愕の事実が浮かんだ。いったいなにが、警察の内部で起きているのか?調査を続行するディーンは、知らぬうち巨大な陰謀に飲みこまれていった。
中国領海の近くで、ビニール・バッグに詰められた3つの人間の首が浮かびあがった。捜索に向かった皇家香港警察隊のチャーリー・チャン警部は、中国側の沿岸警備兵とはげしくもめたすえ、バッグの回収に成功する。鑑定の結果、数日前に市内で見つかっていた、商業用肉挽き機でミンチにされた死体と一致することが判明、返還を600万秒-約70日-後にひかえた香港の街には戦慄が走る。チャンは捜査を開始するが、その続行に対して、本国であるはずの英国政府から、やがて不可解な圧力がくわわりはじめた。背後で不穏な動きを見せる香港マフィア「三合会」の存在、さらには、中国南部の大部分を影で支配する人民解放軍の将軍までも渦中に巻きこみ、急速に混沌の渡合いを増していく真相の行方。そして、その間も、英国支配の香港が消滅する、1997年7月1日午前零時までの残り時間を告げるカウントダウンの時計は、容赦なく時を刻みつづけていく…。
昭和二十年八月、満州国国境はソ連軍によって突破され、各都市はソ連戦車により蹂躙されつつあった。もともと海軍重視である日本国において日陰者である陸軍、満足な対戦車火器を持たない関東軍にあって、唯一抗しえた部隊である栗林忠道中将指揮下の第七戦車師団は、居留民を無事に後方に逃すため玉砕の道を選択する。軍隊とは本来自国民を守るために存在する。時を同じくして海軍の一部隊も避難民を逃すために圧倒的に優勢なソ連海軍に突撃をかける。
豊能の山中で猪犬訓練所を営む氷室竜介は、過去からの追手を振り切るため、生きることへの未練のために、何人もの人間を殺してきた男だ。ある夜、氷室のもとに城北組の女組長・小枝子が訪ねてくる。淫蕩な彼女に引きずられるまま、氷室は情交を貪るが…危険の匂いに欲情する彼女が男を求めるとき、それは過去からの新たな追手が現れる前触れでもある。その日、城北組を訪ねた関東鬼神会の若頭が、氷室の過去に深く関わる、ある男の行方を探っているというのだ…。氷室の果てしなき戦いが、いま始まろうとしている。
山瀬燎と翔太はハネムーンでモルディブに旅行し、田園都市線沿いの新居に帰った。その翌日、高さが七十センチほどの木枠で組まれた荷物が届いた。梱包を解いた燎は悲鳴をあげた。中からは石の地蔵が出てきたのだ。差出人の住所は熊本県人吉市で名は犬童悠。燎も翔太も全く心あたりがなかった。公認会計士である燎の父に尋ねたところ、怯えたような目になった。数日後、燎の父が「事故死」した報せが入った。場所は、九州の五木村だった…。「事故死」はすぐに「殺人事件」と断定され、宮之原警部の活躍がはじまる-。
博奕で鳴らした直次郎が貧乏御家人に聟入り。純粋無垢、清楚で美しい娘を妻にしたのは良かったが…。悪漢の度肝を抜く世間知らずな女を背負った直侍受難の日々。喧嘩、博奕、強請り、賄賂…でもどこか憎めない江戸の悪党たち。軽妙洒脱、北原流江戸ピカレスク。
母の死後まもなく、カリータは大嫌いな義父から結婚を強要された。相手は財産家だが、初老の貫族である。意を決したカリータは家を出ると伯父のいるノーフォーク州を目ざした。その旅の途中で、偶然にも落馬事故を目撃し、必死で助けを求める。意識不明の男性は近所の農家に運ばれカリータも同行することになったが、二人は夫婦だと、女主人に勘違いされる。誤解をただしかけたカリータだったが、このまま夫婦を装っていたほうがひと晩の宿だけでも安心だと考え直し、あえて否定はしなかった。こうして、カリータの看護が始まった。