1997年9月1日発売
人質として、カフタル帝国の中心、リュシプール城に囚われていたルテニア王国第二王子・ラシカのもとに、突然の悲報が告げられた。家臣の謀反によって、父王ゲオルゲ、長兄ブラントが殺されたというのだ。忠実な僕にして唯一の友・イーレンタールとともに、故国をめざすラシカを待ちうける運命は?そして、十五年ぶりに目覚めの時をむかえる邪悪な地霊とラシカの関係とは。
七年越しの恋人に別れを告げ、彼を忘れるための長い旅を経て故郷の大阪に戻ったさつき。新しい職場で、陽気な同僚たち、優しい女友だちとともに新しい生活を始め、二十五歳になるまでに何とか新たな人生の転機を迎えようとがんばるが…。親友の裏切り、仕事での失敗、昔の恋人の出現、憧れの一人暮らし、そして新しい恋ー愛に惑い、仕事に悩む、すべての二十五歳に贈る応援歌。
「そちは何年何十年生き延びようと、四十七名の一人である」-。吉良上野介邸に討ち入った赤穂四十七士の中でただひとり、生き残ることを大石内蔵助に命じられた足軽・寺坂吉右衛門。ある時は遺族の相談役として東奔西走し、またある時は生命を賭して公儀へ自訴し…。複雑な思いを胸に、元禄義挙の生き証人として残りの人生を生きた男の17年間を描いた「もう一つの忠臣蔵」。
天使のような笑顔を浮かべると、出会う者はみな思わず「可愛い!」と声を上げてしまう。大人たちを自分の魅力のとりこにし、望むものを手にしてきた小学1年生の少年、拓馬には、ある秘密の「趣味」があった。場所はたそがれの競馬場ー。純真、残酷、妖艶、粗暴、嘘言…。正常と異常の狭間に立つ幼児たちの危うい心理を描きだした、現代の「恐るべき子供たち」ともいうべき7編。
七歳で旗本小普請組勝家の養子に入った小吉は、学問嫌いの極道者。喧嘩三昧の毎日だ。出世の道を喧嘩で切り開こうと、道場破りに生き甲斐を感じている。業を煮やした父親は、座敷牢に小吉を閉じ込め、許嫁と二人きりにする。そうして麟太郎(海舟)が生まれたー。出世を望むも叶わず、不良御家人として放蕩無頼に生き、麟太郎に自らの夢を託して生涯を終えた小吉を痛快に描く時代長編。
第一次大戦に赤十字の傷病兵輸送隊員として参戦したヘミングウェイは、砲撃による重傷で、ミラノの赤十字病院に運ばれた。そして、彼の人生を大きく左右する女性と出会った。19歳の精悍な青年と7歳年上の美しい看護婦アグネス。戦火の中、二人の心は激しく燃え上がる。結婚を考えるほどに…。名作『武器よさらば』の背景をなす悲恋を、日記や書簡を中心に構成した迫真のドキュメント。
キャンパスで発生したレイプ事件。心理学科助教授のジニーは、罪を着せられたスティーヴが一卵性双生児であることを突き止める。だが、その片割れは殺人罪で服役中。では、“3人めの双子”が存在するのか?遺伝子操作、ソシオパス、コンピューター・テクノロジー、M&A、そして合衆国保守派の陰謀ーすべてを盛りこみ、鬼才が11年ぶりに放つ鉄壁のコンテンポラリー・スリラー。
自らの名誉を守るために、徒手空拳で強大な権力に挑むジニーとスティーヴ。その行く手に、70年代まで進められていた“禁断の計画”の幻影が浮かび上がる。止めるか、止められるかー。大学、FBI、ペンタゴン、果てはキャピタル・ヒルまでを巻き込んで、敵の失策を徹底的に利用する苛烈な闘いが展開されてゆく。世紀末の状況を冷徹に描いた巨編は緊迫のクライマックスを迎える。
スコットランド高地地方に暮らす落魄した大地主バルメリノー家とその古くからの隣人エアド家の人々を主人公に、家庭と家族の絆を深い愛情をもって描き出した、ピルチャー円熟の長編小説。