1997年発売
秘密裡に堕胎を請け負う医院で、手術後の患者が投身自殺を図った。書生の健次郎は、とっさに死体を庭に埋めてしまうが、やがてその秘密が掘り返される時がきた…。凄まじい迫力で、人間の業と哀しみを描く名作「緋の堕胎」。寮に軟禁され、吸血鬼からのお召しがあるたびに自らの血を提供する無気力な若者たち。彼らを飼育する吸血鬼の恐るべき正体とは?エラリィ・クイーンに絶賛され、世界各国で翻訳された表題作「黄色い吸血鬼」をはじめ、単行本未収録作品「砂糖菓子の鸚鵡」を含む恐怖ミステリの傑作・全12篇。
友子は、奥深くまで指をねじ込まれ、柔肉をくじられながら、一気に昇りつめていた。ほおずりをされ、肉厚の舌で舐められると友子は、全身にむずがゆいしびれを感じていた。動物のように2人は、お互いの体をむさぼりあう。男から男へ渡り歩く女、友子の淫乱な性を描いた長編官能小説。
1830年代、夏から秋のプロヴァンスの自然を背景に繰り広げられる軽騎兵アンジェロの愛と冒険の物語。イタリアの祖国独立のために戦うことを自らの使命とする主人公のアンジェロは、亡命先の南仏で、はからずもコレラの大流行のただなかに放りこまれる。人を救うとは何か、愛とは何か、生と死とは何か、自由とは何かについての真実を問いながら、無垢な魂の遍歴が物語られる。詩的な自然描写と小説の楽しさにあふれたジオノの代表作である。
失恋の痛手もまだ癒えない知可子は27歳のOL。予定のない週末、偶然に会った同僚の有季から彼氏と紹介されたのは、知可子を振った張本人だった。レンタルビデオ店で出くわした男を仮の恋人に仕立てあげ、その場をしのいだ知可子だが、皮肉な恋の運命が回りはじめるー。知可子と、彼女を巡る女たちそれぞれの愛の選択、恋の行方は?迷い悩みながら、ひたむきに恋する女たちの姿を描く長編。
「私」は高校二年生。ある放課後、図書館で「海の泡同盟」と称する詩を読む会に誘われたが、その集まりは、実は自殺を目的とする集団だった。そこで「私」に課せられた役割は死を見守ること、他人の死を記録することだったー。「ヒカルモノ」である死と、その対照にある「ヨドムモノ」としての生。真っ直ぐに生きようとすればするほど、死に近づき魅了される十代の純粋な魂の軌跡を描く問題作。
ときは古代中国の戦国期。諸子百家の気風に魅せられ、身分をいつわり、斉の都に学んだ中山国宰相の嫡子・楽毅。故国にもどった彼を待ち受けていたのは、大国趙による侵略だった。愚昧な君主に導かれ、存亡の危機に瀕する中山国。才知と矜持をかけ若き楽毅は故国の救済を模索し、理想の己の在り方を追求する-。
故国中山は自分にとって、小さすぎるのか-。楽毅の憂色は濃く、深い。四度にわたる趙の侵略。宰相だった楽毅の父は、自ら望んで死地へ赴き、中山は国土の大半を失った。だが、依然として中山の君臣は驕り、国家の存続を信じて疑わなかった…。暗澹たる状況のなか楽毅はただひたすら活路を求め、理想の自己を貫く-。苦難と闘いを強いられた男の美学を描く第二巻。
悠々自適の生活を送る五十代半ばのウサギ。だが、心配の種がないわけではない。心臓の持病。息子ネルソンが麻薬でつくった莫大な借金-絶望的になっている嫁のプルーは、すがるような気持でウサギの胸に…。それを知って妻のジャニスは?四十年にわたって書き継がれてきた超大型小説“メガノヴェル”「ウサギ・シリーズ」四部作完結編。
トヨタ自動車の代理店を息子ネルソンに譲り、悠々自適の生活を送っているウサギの姿が描かれている。悠々自適といっても心配の種がないわけではない。ネルソンがドラッグに手を出し、莫大な借金を作ってしまうし、妻のジャニスは外に働きに出たいと言いだす始末。自分自身は心臓に持病を抱えている。女体遍歴に終始したウサギの生涯を飾る最後の輝かしい瞬間は、周囲の状況にたいする絶望から、自暴自棄になった嫁のプルーとのたった一回の情事だった…。「金持になったウサギ」に続いて、シリーズとしては初めて、ピューリッツァー賞連続受賞。
現代イギリス文学界の旗手が描く過ぎた日々の記憶と、現在が行きかう濃密な作品世界-’96年度ブッカー賞受賞作。亡き友の最後の願いを叶えるため、四人の男は海へ向かう。挫かれた夢、嫉妬や裏切り、そして美しい思い出…とむらいのドライブが進むにつれ明らかになる、それぞれの人生と関係。
とりあえず遠くへ行きたい。行き先は、乗せた女しだい。助手席にやってくる女の子たちとのちぐはぐな旅!?注目の野間文芸新人賞作家が贈るロード・ノベル。
実録20年間無敗の男。まだ「戦後」のにおいが色濃く残っていた時代、魑魅魍魎どもの巣くう魔窟・新宿で「雀鬼」と恐れられたひとりの男がいた。その男の名は桜井章一-。雀鬼・桜井がまさに己の腕一本で勝ち抜いてきたのは、常人の理解や想像をはるかに凌駕した、裏の世界の恐るべき真剣勝負の場だったのである。
吹雪の遭難中に出会った女との、夢のような、甘美な、不思議な体験。彼女に瓜二つの夏子の出現。結婚、夏子の出奔。そして吹雪の夜から十三年目の再会…。新しい愛のかたちを告げる会心のファンタジー。
天才詩人バイロンの失われた回想録を探して、レベッカは深夜の礼拝堂に忍びこんだーそこで彼女が目にしたのは、若く美しいまま現代に生きつづけているバイロンその人だった!トルコのパシャの女奴隷と激しい恋におち、吸血鬼たちの王として君臨していたパシャと対決することになったために、バイロンが辿ってきた数奇な運命とは。
グリア・ホイティカーは、祖国アメリカのためならば身命を賭すこともいとわないほどの愛国者。上院議員候補の選挙参謀として、政界をめざしていたが、ふとしたことからその道を断たれてしまう。だが、なんとかして国の役にたちたいと考えたグリアの就職先ーそれがCIAだった。厳しい試験に合格したグリアは、苛酷な訓練のすえに初めての任務についた。そんなグリアを待ち受けていた事件とは…?話題のサスペンス。
グリアの最初の任務は、スパイの疑いをかけられている安全保障問題担当顧問ジェンキンズの補佐官となり、その正体を探ることだった。ジェンキンズの助手をしつつグリアは密かに調査を進めていく。だが、出張先のドイツでジェンキンズは何者かに殺害されてしまった。しかも、同行していたグリアが容疑者として指名手配の身に!CIAと警察に追われながらも、グリアは真相を解明しようとするが…スリリングなサスペンス。