1997年発売
見合い話に苛立ち、後輩の若さがふと眩しい美也子の淡々とした日々に鳴り響く謎の電話。そして一年が過ぎて…「恋愛小説」。同僚に連れていかれた店で飲んだ水割りの不思議な味。ある切ない夜、わたしはその水の秘密を知る…「水に眠る」。人の数だけ、愛があるー様々な愛の形を描く短篇集。
風光明媚な歴史の町バースに住むルンギ一家は、親子三代にわたって探偵事務所を営む“探偵家族”。戦後、裸一貫から事務所をおこした親爺さん、優しいママ、放蕩息子の長男サルヴァトーレ、妻のジーナと事務所を切り回す次男アンジェロ、経理担当の長女ロゼッタ、そしてやんちゃ盛りの二人の孫だって立派なメンバーだ。そんな彼らのもとへ、ある日近所の主婦がやってきて台所の洗剤がいつもの場所とずれているので調べてくれという。雲をつかむような依頼は、やがて思いもよらぬ展開を…。
浪人生の和は東京・神楽坂にある老舗の芸者置屋の一人息子。ひょんなことから、和は無子の源氏名でお座敷に出ることになる。着物を着せられ、化粧をすると美しい芸妓に大変身!「オレって芸者!?」イヤイヤ出ていた和だが、新鮮味があるといって大人気。そんなとき、歌舞伎界の若手人気役者の京之のお座敷から声が掛かる…。
19世紀イギリスが誇る女流作家ジェーン・オースティン待望の新訳。南イングランドを舞台に、普通の女の子がヒロインになるまでー風刺性、喜劇性をあわせもつ、オースティンならではの恋愛世界が広がる。キャサリン・モーランドという十七歳の若い女性を主人公に、前半はファッショナブルな温泉保養地バースを舞台に、後半はグロースターシャーの裕福な地主の家ノーサンガー・アベイに場所を移して、繰り広げられる。バースでは裕福な地主アレン夫妻や新興ブルジョアのソープ一家を中心に、社交場や遊歩道などを舞台に都市小説風の展開を見せ、ノーサンガーでは怪奇小説的要素を加えて、地方地主の古い屋敷を舞台に裕福な地主の生活ぶりを浮かびあがらせるしかけである。
“家族のぬくもりがいつでも感じ合えるような、離れていてもすぐここにいるような存在感がある”そういう親子、夫婦であれたらと願うサキが単身赴任の夫を思い、2人の息子たちと過ごす日々は…。
「あたしの家、幸せにしてくれる?」北鎌倉の旧家に、末娘が連れてきた占い師。あやしい闖入者により、ばらばらだった家族の正月が、思いがけない方向に-17歳にして「魚のように」で坊っちゃん文学賞大賞受賞、全選考委員の絶賛を浴びたみずみずしい才能が放つ、受賞第一作。
どこにでもいるサラリーマンの長流弦也はトラブルにどっぷり首までつかっていた。浮気相手のフィリピーナが妊娠し、情夫のヤクザに恐喝される。別居中の妻は離婚を迫り、養育費をせっつく。そこで会社のカネに手をつけるが、あえなく発覚。会社側は“専横放埓なマニラ事務所長の天道を解任に持ち込め。さもなくば懲戒解雇だ”と長流を追いつめる。選択の余地なし、タイムリミットまでわずか12日間の秘密任務-。いんちき、ぺてん何でもあり。権力を巡る禁じ手なしのバトルロイヤルによれよれになりながらも、組織に寄り添ってしか生きられない人間を襲う災厄の数々。カネも女もケタはずれ、正義も真実もない異国での捜査行は長流をさらなる泥沼に引きずり込む。
豪邸もぶったてた。会社も順調だ。が、ゼメルマンはニュージャージーの冬空の下で鬱々としていた。まさに、中年クライシス!?ある朝、発作的に車を飛ばしキーウェストへ。海岸で出会った貝殻売りのトミーとの出会いが男の眠れる義侠心に火をつけた。フロリダ・ミステリーの第一人者が放つ最高のクライム・ノヴェル。
「あの男を見たのは一瞬でした。でも、絶対に忘れない」家族を仲間をナチに売った冷酷な殺人鬼を、今日街で見た!と必死に訴える老婦人。隣人の元刑事サイモンは半信半疑で捜査を始めるが…。ホロコーストの悪夢を思わせるような事件がマイアミで勃発。
影のような男。一切の痕跡を残さず自分を知る者を消していく殺人鬼ーその名はシャドウマン。捜査当局の必死の追跡にもかかわらず男は姿を見せない。今も普通の市民としてマイアミで生きているのだ。やがて、真相を追うサイモンの周辺にも魔の手が忍び寄る。息づまる攻防。
何十万もの人間を生きたまま串刺しにしたとされるワラキア公ヴラド。その残忍さゆえに小説「吸血鬼ドラキュラ」のモデルとなった男の真実の貌とは。強大なオスマン・トルコ帝国を相手に孤独な戦いを挑み、過酷な時代を疾風の如く駆け抜けたもうひとりの、“織田信長”の実像を人気の女性作家が描く異色長編。
2012年、いままさに巨大プロジェクトが開始されようとしていた。イギリスからニューヨークへと大西洋を横断する処女航海の途中、グランド・バンクス沖合で氷山に衝突、沈没したタイタニック号。1500人以上の犠牲者をだしたこの悲劇の豪華客船を、沈没百年を記念して引き揚げようというのだ!人類に残されたもうひとつの未踏の領域ー深海を舞台に、巨匠が最新の科学知識をもとに見事に描く傑作近未来テクノロジーSF。
貧しい生い立ちを憎み、出世ひとすじに生きてきた弁護士のジェームズ。奔放で美しい恋人のデイジー。愛しあう二人の前に、ジェームズのかつての依頼人オリヴァーが現われた日が悲劇の幕開けだった。犯罪歴がありながら独特の魅力を放つ彼に二人は心を奪われ、やがて三人に奇妙な友情が芽生えていく。だが11年後、一人が殺され、残る二人のどちらかが犯人ではないかとの疑いが…気鋭が紡ぎだす、華麗で残酷なサスペンス。
臨時の仕事で大西洋沿岸の地域にやってきた判事のデボラは、砂洲で男の射殺体を発見した。風光明媚なこの地域では、海の利権をめぐって開発業者や漁師たちが対立しており、被害者は漁師のまとめ役をしていたという。デボラは犯人を追い始めるが、やがて第二の殺人が…女性判事デボラ・ノットの人間味あふれる活躍を情感豊かに描く人気シリーズの第三弾。
貴族の血を受け継いでいながら、ひとりスコットランドの山中で孤独な暮らしを続ける青年画家、アリグザンダー・キンロック。ある日、彼は自分の山小屋で待ちかまえていた四人の暴漢に襲われ、あやうく命を落としかける。闇雲に「あれはどこにある?」と脅されたあげく、わけのわからぬままに崖の上から突き落とされたのだ。事件が起きたのは、アリグザンダーが母の屋敷へ行こうとしていた矢先だった。ビールの醸造会社を経営している義理の父が、心臓発作に倒れたとの知らせを受けたのだ。全身の怪我をおして屋敷に赴いた彼は、義理の父の会社が倒産寸前であることを知る。経理部長が莫大な資産を横領して姿を消したらしい。しかも、会社が主催する障害レースの賞品である純金のカップも行方がわからない。会社の危機を救うべく奔走をはじめたアリグザンダーは、自分を襲った暴漢は横領事件に関係があるのではとの疑念を抱くが…。