1998年11月発売
私は、何故あの男を殺さねばならなかったのか?そのことをいくら自問してみても何か核心にたどりつかない疲労が私をとらえる。「殺人の原因は自分の中にある」その言葉が、正当という旗をかざしながら、私を追ってくる…私はなんとかしてそこから逃げなければならない。断じて私の中には原因はない。たんに携帯電話の声が大きすぎたから、あの男は殺されたのだ。ここで描かれる殺人事件は、私たちが置かれている現実世界の悪夢そのものだ。
拓哉は小さい頃から年上の綺麗な従兄・和成が大好き。でも和成はコドモだった拓哉をうるさがるばかりで相手にしてくれない。でも和成も、拓哉がどんな時だって和成に一生懸命なのは認めてくれているみたい。じゃあ、オトナになったら本気で恋愛してくれるのかな…?キュートかきおろしを加えて登場、年下攻ラブの決定版。
「-世紀末、なんだそうです」ふわりと、香りの佳い紫煙が立ちのぼる。時は明治三十三年(1900年)。帝都東京を騒がす連続猟奇殺人事件-。その発端を、谷中の廃寺で起きたある出来事と睨んだ天才作家、泉鏡花。新米編集者、香月真澄とともに事件の謎に挑む!大人気シリーズに書き下ろし「水晶の夢」を加えおおくりする幻想怪奇探偵譚。
逆賊の汚名を被せられた会津藩主松平容保は徳川慶喜から帰国を命じられ、江戸を発った。その後、会津藩士たちが藩邸引き払いの作業を急ぐ江戸の街は、東征軍への不安から治安が悪化していった。そんな中、浅草本願寺で旧幕臣たちが彰義隊を結成し、会津藩士鮎川兵馬らもそれに加わった。士道に殉じ“義を彰す”彰義隊は、上野の山に拠って官軍に対することになる。吉川英治文学賞受賞作品。
時代は南北朝。肥前のとある浜辺に一人の男が泳ぎついた。密使だった。済州島のナミノオオは、上松浦党水軍に手を結ぼうと持ちかける。やがて両軍の後押しで、波王水軍が旗揚げされた。若き上松浦党の後継・小四郎を大将として。海を祖国を護らねばならない。熱き思いを胸に秘め、小四郎が立ちあがる。敵は、強大な元朝。そして決戦の時は、今。大海原を舞台に描かれる北方歴史ハードボイルドの会心作。
主君のうらみを晴らそうと燃える忠義の士たちも、筆頭家老・大石内蔵助の芸妓遊びや討入りに対するあいまいな態度に、徐々に団結が乱れ、分裂の危機が訪れる。まして土方と江戸に浪士が別れていれば、尚更互いに疑心暗鬼となる。その中で安兵衛は、江戸のリーダーとして上方と江戸を往復し、心をまとめていった。そして機は熟し、ついに内蔵助は立ち上がった…。
条件は名器の持ち主しかも人妻。昨日も今日も人妻を誘惑し続けるが…。良人をもちながら働く女性群が、性生活の不満をぶつけてゆく主人公・姉川は大の人妻好き。彼の性技で働く人妻たちがくり展げる狂態、痴態。
「お話はまずここらでお仕舞でしょう」と、半七老人はひと息ついた。「これに幾らかの潤色を加えると、まったく面白い小説になりそうですね」と、わたしは云った。江戸の町・風俗・生活をより深く楽しむための註・註解・地図付。正確な考証に基づく挿画。
自他ともに認める“イイ男”な将彦はある日、自宅そばの電柱にかくれていたストーカーを捕まえた。名前を立花正海という。そいつのあまりのみっともなさに同情した将彦は、彼にイイ男教育をほどこすため大学のコンパなどに連れ歩く。将彦のいうことはなんでもきく正海は、まるでペットか奴隷のようで、将彦は“ご主人様”としての愛に目覚めてしまうのだった。
赤道直下の島の入江には黒々とした不思議な生物が棲んでいた。現地では山椒魚に似た姿から、魔物と怖れられていたかれらだったが、じつは高い知能をそなえていたのだ。自然の中で生きる無垢な山椒魚が現代文明と出会ったとき、その内面に生じた重大な変化とは?チェコが生んだ偉大な文学者カレル・チャペックが、人間社会と山椒魚の出会いを通じて人類の本質的な愚かさを鋭く描き、現代SFの礎となった名作。改訳決定版。
授業料免除を掲げ、優秀な学生を集める全寮制の人気医科大学イングラム。新入生のクイン・クリアリーは、ある日妙なことに気づく。医療は受ける人の社会的価値で差をつけるべきだ、とクラスメイトがみな同じ考えをもち始めたのだ。そして、彼女と同じように疑問を抱いたボーイフレンドが、突然姿を消してしまう。いったい何がこの大学に起きているのか?理想的なキャンパスに隠された、恐怖の真実。戦慄の医学サスペンス。
ある事件が、酒に溺れたニューヨーク市警の刑事ホッカデイの目を覚ました。広告代理店に勤める妻の上司が惨殺死体で発見されたのだ。現場の状況から彼の密かな趣味が判明し、ホッカデイは街で続発している殺人事件との関係を探りだす。が、手掛かりがつかめぬうちにさらなる殺人が!不屈の刑事魂で醜悪な事件に挑む男の姿を情感豊かに描くシリーズ第四弾。
ニューヨーク州の片隅の小さな町、オーリリアスは、奇怪な事件の連続に悩まされていた。娼婦のように町中の男と付き合っていた女性が殺され、その左手が切り取られていた。町の大学に過激な社会主義者が赴任、数人の学生がシンパとなり、内紛や外部とのいざこざを繰り返す。町の学校に、連続して爆弾が仕掛けられ、警官隊が出動する。そして…一人の少女が行方不明になるという事件が勃発した。行方不明の少女の服と、卑猥な言葉を書きつらねたメモ、そしてマネキン人形の左手が警察へ送りつけられ、住人たちの不安は、頂点に達したかに見えた。だが、二人目の少女が消えた。事件は、まだ始まったばかりだったのだ!ミステリ作家としてばかりでなく、詩人としても知られる著者が、満を持して放った自信作。英国推理作家協会賞、ブラム・ストーカー賞にノミネートされた、異色サスペンス。
1985年、熾烈を極める北アイルランド紛争のさなか、王党派の闘士マイケル・ライアンは、軍資金獲得のため、大胆不敵な計画を立案した。アイルランド海をはさんで対岸のイングランド湖水地方で、五千万ポンドの金塊を運ぶ輸送車を襲撃し、海峡を越えて北アイルランドへ持ち帰ろうというのだ。マイケルは、姪のキャサリンとともに、腕の立つ船員キーオーを仲間に引き入れ、着々と計画を進める。だが、キーオーは、じつは対立するIRAのスパイだったのだ。さらに、海峡を越えるために雇った船員たちも金塊の横取りを狙い、味方のはずの王党派も横槍を入れようとする。四面楚歌の状況で、しかしマイケルの作戦は、見事成功したかに見えた…。そして10年後、行方不明になっていた金塊が、ふとしたきっかけで表舞台に再浮上した。現在では一億ポンドの価値を持つ金塊をめぐって、10年ぶりに帰国したマイケル、王党派、IRA、さらにはアメリカのマフィアまでが争奪戦に乗り出してくる。事態を憂慮した英国は、グループ・フォアのファーガスン准将に、金塊回収を命じた。だが、指令を受けたトラブル解決要員ショーン・ディロンには、誰も予想もしていなかった秘密があったのだ!冒険小説の王者ヒギンズが描く、裏切りと謀略の応酬。息つく間もない騙し合いのすえ、最後に笑うのは誰か。
西新宿にある東和信用金庫が三人組の男に襲われた。行員三人が射殺され、現金一億八千万円が強奪される。事件を追う新宿西署の暮林刑事は、三人組の一人が中国人・張狼元であることをつきとめ、張が情婦の石原ひろみと暮らすアパートを張り込んだ。が、ひろみが張を殺してしまったのだ!ひろみの境遇に同情した暮林は、彼女のために部屋を借り、愛欲に溺れる…。一方、三人組のもう一人、李冲虎を割り出した歌舞伎町分室だったが、その背後に、香港黒社会の巨魁・蛇駄逵の影がちらつき始めた…。