1998年3月発売
時の流れを見定めて、換えも換えたり主君が七人。槍働きの時代が終わると見るや今度は諜報活動でその名を上げる。稀有の謀将藤堂高虎を描く表題作。信長の度重なる侮辱に忍従する光秀に領地返還の上、中国攻めの援軍をせよという指令が下りた。悲運の武将を描く「明智光秀」など、歴史の奔流の中で下した男の決断を描く歴史譚5編と痛快無比、ユーモラスな歴史短編5編を併せて収録。
異人館の立ち並ぶ神戸・山手の一角にあって一際目立つ英国風の洋館が、紅茶輸入業を営む高見沢一族の邸宅だった。この屋敷内に侵入した何者かに、高見沢家の女社長・隆子が殺された。その直前に中国語のメッセージがー「セイロン亭の秘密を知っているか」。これを契機に次々と得体のしれない事件が起こるのだった。一族の過去と複雑な人間関係にお茶の歴史を絡ませた浪漫的ミステリー。
天網恢恢疎ニシテ漏ラサズ!が口癖の、風車の親分こと御用聞の浜吉。今日も小石川伝通院で風車を売っていると、難事件の解決依頼が舞い込んでくる。月夜になると娘をさらう駕籠の謎を負う表題作、ハゼ釣りの客が釣った銀のかんざしから、かどわかされたご新造の行方をつかむ「かんざし釣り」など、推理と人情で謎を解く捕物9話。お縄にしたあとの計らいも粋な、シリーズ3作目。
打ち捨てられたネイティヴ・アメリカンのコミュニティ。貧窮の極にある家族や仲間のために、ラファエルはある仕事を選んだ。スナッフ・ムーヴィーに主演すること。それは一時間にわたって身体を切り刻まれ、殺される模様を撮影させることを意味したー。『殺人方程式』などでMWA賞を2回受賞した名手が問う、真の愛と勇気。ジョニー・デップに初のメガホンを取らせた問題の原作。
自己中心的な上司、男と駆け落ちした妻…。くすぶっているヒューストン市警犯罪情報課警部マーカス・グレイバーのもとに、部下の自殺というやっかいな事件が舞い込んだ。そして、極秘の内部調査により捜査線上に浮かび上がったのは、意外にも彼が最も信頼していた腹心の背信行為だったー。
盗聴、盗撮、カーチェイス…。最新の装備と最高の技術を駆使した調査により、恐るべき情報犯罪の全貌が姿を現した。謎に包まれた黒幕、バノス・カラティスに迫るべく、グレイバーは周到に組織化された策謀の糸を辿っていく。はたして仲間らと共にグレイバーは事件の最終幕に立った。しかし、全てのシナリオは…。警察内部をも巻き込んだ空前の犯罪計画は思いも寄らぬ結末を迎える。
海亀の執拗な攻撃から僕らの身を守ってくれた秘密兵器とは?ヒトは死んだらどこにいくのだろう?-読者が参加する小説「ストッキング」から、オール関西弁で書かれた「ことわざ」まで、謎とユーモアに満ちた「超短篇」小説が36本!(さらに替え歌「朝からラーメン」のおまけ付き!)絶好調の村上春樹=安西水丸“nice&easy”コンビが贈る「村上朝日堂」小説特集号。
教会を離れた私が性の遍歴から帰還すると、襲撃を受け障害者となったギー兄さんは、遙かに大きな存在となっていた。しかし、戦闘力を増す農場派と巡礼団の対立が深まり、巨大化と外的緊張の中で分裂の危機を迎える教会のメンバーに、ギー兄さんは最後の告白を行った。そしてその夜「緑の木」が燃えあがる!「神」に極限まで近づき、なお新たな道を求めるライフワーク、完結編。
長年連れ添った妻に先立たれ、自らも病に侵された老人サムは、暖かい子供たちの思いやりに感謝しながらも一人で余生を生き抜こうとする。妻の死後、どこからともなく現れた白い犬と寄り添うようにして。犬は、サム以外の人間の前にはなかなか姿を見せず、声も立てないー真実の愛の姿を美しく爽やかに描いて、痛いほどの感動を与える大人の童話。
主婦リー・アデルマンのもとに、ある日、一枚の絵葉書がとどく。それは、かつての恋人ファウラーからのものだった。再会したファウラーはしかし、不治の病に冒されていた。死を間近にした恋人か、それとも家族か?リーの心は激しくゆれる…。
年少組なのに年長組の子を泣かせたり、突拍子もないいたずらを考えついたりと、いつも保育園の先生を手こずらせてばかりの倫太郎。大人たちからはとんでもない悪ガキだと思われることが多いが、実は鋭い感受性とさりげないやさしさをあわせもった個性的な子だ。倫太郎はどのように成長していくのか、そして周りの大人たちは倫太郎をどう見守っていくのか。灰谷文学の集大成、感動の大河小説の開幕。
天文十七年(一五四八)五月、十五歳の若き信長は自由都市・堺に足を踏み入れた。はじめて知る異国文化の衝撃、想像を絶する世界の広さ…革命児誕生の記念すべき日であった。堺で千宗易(利休)やザビエルの知遇を得た信長は、新時代を拓く歴史的使命を自覚し、群雄割拠する戦国乱世に立向かっていく。
天下を狙う今川義元を討ち取り歴史の桧舞台に躍り出た信長は、周囲の宿敵を次々と制し、ついには旧時代の象徴ともいうべき比叡山延暦寺を焼打ちし、足利幕府を打倒する。“魔王”と怖れられながら、新時代建設に邁進する革命児。しかしその足下にいつしか黒い影が…本能寺でこの偉大な才能を潰した黒幕は何者か?新解釈で挑む。
愛人を殺し、男根を切りとって持ち歩くというセンセーショナルな事件をひき起こした女・阿部定。半世紀以上を経た今も関心を集めつづけ、ベストセラー小説『失楽園』の下地ともなった事件を、お定はなぜひき起こすことになったのか。生い立ちから33歳で事件を起こすまでのお定の歩みを、彼女の立場に立ち、彼女に寄り添うようにして描いた告白体小説。