1998年3月発売
犬のろくべえが穴に落ちてしまった。なんとかしてろくべえを助けなきゃ!一年生の子どもたちがみんなで考え出した「めいあん」とは?表題策「ろくべえ まってろよ」の他、天真爛漫な男の子・マコチンの生活を描いた「マコチン」、何でも同じになってしまうのが悩みのふたごの女の子の物語「ふたりはふたり」など、八編の童話を収録。子どもたちのみずみずしい感性がきらめく一冊。
ヴァンパイア事件に揺れる東京に現れた、もうひとりの殺人狂。謎のバンド「ゾディアック」のライブに潜入を試みる滝沢稔…。そして、伊集院大介が最も恐れる竜崎晶の潜在能力とは?人々の不安と期待のなか、晶の初舞台は、ついにその幕を開ける-。
甘酸っぱい感傷を伴った懐かしさもある-還暦を間近に控えたある日、定時制高校の同窓会が開かれることになった。働いていた町工場の先輩のこと、放送劇のコンクールに出場したこと、女生徒の一人に寄せる淡い想い…。主人公の脳裡にには四年間の記憶の片々が明滅しはじめる。芥川賞作家、円熟の最新小説集。
安易きわまる「ヤラセ」がきっかけだった。凶悪犯が実在することにスタッフはあわて、犯人に素手で立ち向かう黒ずくめの男の出現に、視聴者は過剰反応した。巷の英雄を追い求める女性レポーターが目的を遂げたとき、ワイドショウを揺さぶる大事件のカウントダウンが始まった!そのマイクはストーカーそのものだ!体験者でなければ書けない凄味が、本書にはある-。
名前は不明ながら「ナウムブルクの巨匠」としてドイツ美術史にその存在を残す石工と彼が刻んだ“永遠”-ロマネスク芸術の傑作として今なお大聖堂に立つ美しき石像ウータをめぐる豊饒な物語。
三好三人衆の謀叛。兄の将軍義輝は自害し、弟周〓@51AB@は殺され、母慶寿院も火死。仏門二十六年の覚慶(後の足利十五代将軍・義昭)の悲劇はここからはじまる。-還俗し、なぜ将軍位につこうとしたのか。なぜ生き恥さらしてまで将軍位に執着したのか。侍女ぬいのこまやかな女心のあやなす口伝をとおして義昭像に迫る叙情的歴史小説。
離婚成立直前に失が失踪した!新しい恋人との結婚を夢見る妃美子は離婚届にサインさせるために夫捜しをはじめ、彼があるパチンコ店に頻繁に出入りしているとの情報を得る。さらに足取りを追ううち、パチンコ業界と警察との癒着、裏ロムによる不正、強盗事件など、裏の世界をかいま見、夫がパチンコ業界で悪事をはたらいているのではないかと疑念を抱くだ…。風変わりなパチンコ常連客たちの協力を得て、必死の捜索がはじまった。
九百年昔、宋王朝の末期、風狂皇帝・徽宗の治世-。金権腐敗の悪政に背いて梁山泊に翔け参じた義賊、豪傑、悪漢、曲者、美女、謀反人たちが繰り広げる痛快壮絶な叛乱のドラマ。『三国志』とならぶ、中国歴史文学の傑作が、鬼才の筆で現代に蘇る。
銀座のクラブに勤める萩原涼子は、行きつけのバー「ソルティ」のマスター・塩川から奇妙な誘いをうけた。ある金持ちの夫人のレズプレイの相手になってくれというのだ。謝礼につられ話に乗った涼子は、後日、偶然見た週刊誌から、相手が「伊東の妖怪」と呼ばれる政界の黒幕・土井壮司の妻・朋子だとわかった。土井は、異常な性的嗜好の持ち主で、朋子は夫に密かな殺意を。涼子が朋子と組んで土井の莫大な財産を手にしようと謀ったその時、何者からか一千万円を要求する脅迫電話が…。息をもつかせぬ緊迫感と意表をつく結末!ひさびさに官能味横溢するサスペンス珠玉作。
大晦日、夜半近く、警視庁捜査一課ただ一人の女性キャリア・大江沙織警部は部下の吉村とともに惨殺現場に到着した。血まみれの凄惨な女性の死体、その右腕に抱かれるように置かれた黒塗りの西洋人形-それは、十一月末より都内で起きている四件目の連続殺人と思われた。さらに第一発見者は、完璧にアリバイのある十代の少年少女だった。心に傷を持つ刑事・大江が暴き出す現代日本の家庭の崩壊と狂気の温床とは?高価なビスクドールがなぜすべての現場に?その持ち主は誰か?人間の心の暗部を鋭く抉る著者会心の書下ろし、サイコ・ミステリー渾身作。
女性器は薄紅色の口を開けたまま、密液を溢れさせている。仰向いた彼女の乳房を下から両手で捉えた男が、仰臥したまま腰を入れる。半分しか潜っていなかったペニスが、緩やかに彼女に没していった…。野望のために、自らの肉体を投げ打って栄華への階梯を昇る女。清楚な美貌とは裏腹に、淫蕩なもうひとつの貌をもつ女の欲望と挫折を赤裸々に描く、書下ろし官能長篇。
昭和二十八年春。小説家、関口巽の許に奇怪な取材依頼が齎された。伊豆山中の集落が住人ごとに忽然と消え失せたのだからという。調査に赴いた関口に郷土史家を名乗る和装の男が嘯く。-「世の中には不思議でないものなどないのです」。男が現出させたこの世ならざる怪異。関口は異空間へと誘われるのか?六つの妖怪の物語で、「宴」の「支度」は整い、その結末は「始末」にて明らかとなる。