1998年6月発売
傷つきやすい心をごまかすように、金も無いのに飲んだくれる詩人の動静を、妻が奇妙な明るさで語る「ヴィヨンの妻」、戦後第1作として書かれた、風変わりな結核療養所で闘病生活を送る少年を描く「パンドラの匣」、13回分の連載で中絶した未完の絶筆「グッド・バイ」、戦後の虚無的な精神状態を“音”で表現した「トカトントン」、飲み屋で出会った少女の哀しさを描く「眉山」の5篇を収録。最晩年の傑作集。
唯一の肉親であった祖母を亡くし、祖母と仲の良かった雄一とその母(実は父親)の家に同居することになったみかげ。日々の暮らしの中、何気ない二人の優しさに彼女は孤独な心を和ませていくのだが……。
ふうちゃんは、神戸生まれの女の子。おとうさんとおかあさんは沖縄出身で、神戸の下町で琉球料理の店「てだのふあ・おきなわ亭」を営んでいる。やさしい常連さんたちに囲まれて明るく育ったふうちゃんだが、六年生になった頃、おとうさんが心の病気で苦しむようになる。おとうさんの病気の原因は何なのか?ふうちゃんは、「沖縄と戦争」にその鍵があることに気づきはじめる…。戦争は本当に終わっているのだろうか。なぜおとうさんの心の中でだけ戦争は続くのか?今、日本人が本当に知らなくてはならないことがここにある。
ただひとりキーツを天才詩人だと見抜いていたイザベラ・ジョーンズ夫人。彼がこの年上の美貌の夫人と過した運命の夜を再現し、長編詩『エンディミオン』『聖アグネス祭前夜』を完成させるまでの詩人の心の奥をさぐりながら、その愛とエロスと生の真相に迫る。キーツの魅力に憑かれた作家が、十九世紀初頭の英国と現在を往還するかのごとく描く魂の交響曲。
ビッグサイズに魅入られた義母は…。義母をはじめ、レズの中学生、ピチピチの女子高生、男嫌いの大学生と、次々と征服、“女の喜び”を味わせて行く、スケコマシ少年…。逸物を授かった少年の奔放な性。
ニューヨーク市監察院の死体置場から、射殺されたギャングの死体が盗まれた。何者かが検屍解剖を阻止しようとしているらしい。その行方を追う監察医のジャックとローリーは、ギャングが死の数週間前にアフリカで密かに肝臓移植の手術を受けていたことを知り、現地へ飛ぶ。そこで二人が見たものは、最先端バイオテクノロジーが引き起こした想像を絶する光景だった!医学サスペンスの王者が壮大なスケールで放つ傑作巨篇。
夫のジェフに生物学上の息子が?ジェフの息子と主張するその少年は、わたしの人生を大きく変えてしまった。しかも彼は、刑事のジェフに殺人事件の再調査を頼みにきたのだ。妻を殺した後、自殺を遂げた育ての父親の無実を証明してくれという。少年は本当にジェフの息子なのか。不安を抱きながら、わたしは夫とともに真相究明に乗りだすが…新たな展開で贈る、おてんばなアマチュア探偵ジェニー・ケイン・シリーズ第八作。
元テレビ・リポーターのトッド・ミルズは、学生時代の恋人ジャニスと共に奇怪な事件に巻き込まれた。彼女が預かっていた赤ん坊が二人の目の前で、何者かに連れ去られたのだ。彼女はその赤ん坊を息子から密かに預かっていた。トッドは追跡を始めるが、やがて彼の過去の意外な真実が浮かび上がってくる…サスペンス溢れるアメリカ探偵作家クラブ賞候補作。
常ならぬ悪夢にさいなまれた夜、ローズマリーは身ごもった。その時から、彼女の平穏な日々は奇怪な様相を呈しはじめる-巨匠が悪魔崇拝をテーマに、都会に住む現代人の孤独と狂気を描いたモダンホラーの金字塔。
父のウェントモア将軍は出征中、母は病床にあり、ノヴェラは愛馬と館で孤独な日々を送っていた。ある日、何者かに追われて大けがを負った男が駆けこんでくる。ノヴェラは、男を秘密の通路にかくまい勇敢にも追っ手を帰してしまう。負傷した男を看病するうち、ノヴェラは男から意外な依頼をされた。彼の代理としてロンドンへ行き陸軍大臣に伝言を届けてほしい、と。祖国のための極秘任務らしいと察したノヴェラは、申し出を承諾すると元の家庭教師と共に館をとび出した。