1998年7月15日発売
家族も友人も棄てて、親友が突然消息を絶った。彼から届いた10枚の葉書には、風景画のほか何も記されていない。この風景をたどれば、あいつの居場所がわかるかもしれない-そんな思いに駆られ北海道へ来た男の、風景を探す旅が始まった。著者が初めて挑む、吹きわたる風のような長編ミステリー。
沖縄で最高裁判事が殺され、調査官・真樹加奈子にスパイの密命が下った。判事は最高裁の内紛の犠牲者なのか。東京地検、法務省、内閣情報調査室、警察庁…あらゆる権力を巻きこみながら最高裁の陰謀は潜行していく。法曹生命を賭して真相をさぐる真樹は、思いもよらない巨大なたくらみに直面する。そしてさらなる驚愕の結末とは…。
アル中バーテンダーの島村は、過去を隠し二十年以上もひっそり暮らしてきたが、新宿中央公園の爆弾テロに遭遇してから生活が急転する。ヤクザの浅井、爆発で死んだ昔の恋人の娘・塔子らが次々と店を訪れた。知らぬ間に巻き込まれ犯人を捜すことになった男が見た真実とは…。史上初の第41回江戸川乱歩賞・第114回直木賞受賞作。
野望と変化の街ーアメリカの“スズメバチの巣”と呼ばれるシャーロット市。一刻も休むことのない警察署では、一六〇〇人の警察官が働いている。他州から来たビジネスマンが次々殺される。股間には、オレンジ色のスプレーで奇妙な落書きが。P・コーンウェルが新境地に挑む白熱の本格警察小説。全米ベストセラー。
クレジットカード偽造、麻薬取引、密入国手引きなど、活動を拡げるアジアマフィアを摘発する端緒を、若手刑事川喜多良一がつかんだ。“春団治刑事長”岩切鍛治を尊敬する彼は、社会的影響の重大さを怖れる府警上層部をよそに単独捜査を開始した。職務遂行と在職死。警察小説最大のテーマに挑む本格推理長編。
故郷に戻った売れっ子ファッション・カメラマンに近づく魅力的な女たちが殺しを呼ぶ。全篇に流れるのは、サックス奏者が死の直前に悪女に捧げた「バッドガール・ブルース」。タフで愛すべき主人公の周りで次々に起こる殺人事件の犯人、ディープサウス一の悪の華は誰?ニューオリンズ・ミステリー傑作誕生。
プロデビューを目指す若き音楽家カップルの千秋と要之介。ある日、富豪の後添いとなった友人から、弟と先妻の息子が一緒に誘拐されたと相談を受ける。身代金の受け渡し場所は、どこにも逃げ場のない湘南の小島。にわか探偵と化した二人は犯人を追うが…。誘拐と密室の二重の謎に挑む、傑作青春ミステリー。
老母と暮していた兄嫁が急死。不測の事態にもめる親族。介護問題は親子の歴史、夫婦の過去をあぶり出す…。老母をひきうけた娘夫婦もすでに60代-老母の介護は自分たちの老後の不安とも重なる。介護者がいなくなったら?介護保険はどうなるのか?老母の現在から老いのプロセスを逆照射して自分の老後、“社会的介護”をともに考えるリアルな書下ろし小説。
謎の怪物フローリーモンスに導かれ、転送機に飛びこんだローダンたちは、いよいよガンヨの帰還を待ち望むガンヤス人世界へと到達した。だが、一行を迎えたのは武装した11人の老人たちだった!かれら、ガンヨ再臨を望んでいるはずのガンヤス指導者は、おのれの権力を護るため、こともあろうにガンヨを亡きものにせんと黒い陰謀をめぐらしていたのだった。期せずして故郷の招かれざる客となったオヴァロンの運命は…。
俵物問屋『万代屋』の押し込み探索に当たった鳥居耀蔵の家来・明智惣五郎は、十五人一家惨殺の現場を横目に、同店が唐物の抜け荷を扱っていたことを嗅ぎつける。下手人の追及とともに消えた荷の行方を追う明智は、背後に巨大な力が働いていることを垣間見る。幕府本丸目付である鳥居は、明智を薩摩へと奔らせ、裏探索を進める。やがて鳥居は、事実を明確化すべく画策を始めるが…。書下ろし痛快時代長篇。
元禄大飢饉により津軽藩は窮乏の危機に陥った。召放ちの立場に追い込まれようとしていた棟方長九郎は、勘定奉行・森岡主膳から、賄賂を出せば召放ちを免じると申し渡される。しかも賄賂とは長九郎の妻・松枝であった。妻と家のどちらをとるのか、苦悶する長九郎が選んだ道は…!?(「浮かぶ瀬もなし」)。表題作他、武家社会にあって、建前と本音の狭間で呻吟する人々の姿を描いた八篇を収録。文庫オリジナル。
グリム童話の主人公たちは、なぜ、いつも試されるのか?「愛」が永遠の生命に至るには、どんな犠牲が待ち受けているのか?「忠実なヨハネス」(KHM6)を読み解きながらヨーロッパ中世のヨハネ人気の秘密を探り、メルヘンにおける「試練」の意味を問う。