1998年9月発売
高級車窃盗常習犯のアリスは、二十歳になる女性。服役を終えて出所する日、彼女は急死してしまった母が遺したというカセット・テープを渡される。「二十年前、一生に一度あるかないかの恋をした。それも二人同時に…」アリスはレオとジュリアンという二人の紳士に会うが、どっちが本当の父親なのかがわかる前に、とんでもない事件に巻き込まれてしまう。マフィアを敵にまわした三人の運命は…。
シカゴの静かな郊外で自閉症の少年サイモンは国家の安全を脅かす最も危険な存在になろうとしていた。恐ろしいほどの数学的才能を持つ彼は、みずから知らずに国家安全保障局(NSA)の開発した超ど級難度の暗号「キウィ」を解読してしまったのだ。NSAに命を狙われるサイモンを守るのはFBI捜査官のアート・ジェファースンのみ。際限なき逃亡を続ける中でサイモンはしだいに愛と勇気に目覚めていく。
「うまくいけば、我々は太平洋に覇を唱えられる」「太平洋の覇者か…できることなら太平洋の王者といきたかったな」日米講和の道程を模索する野分礼二首相に、比島にて辛勝を収めた海軍軍令部総長山本五十六大将より、次なる作戦が提示されていた。アメリカ太平洋艦隊の根拠地を奇襲する-ハワイ作戦。ここで勝利を掌中にできれば、さしものアメリカとて和睦への機運が高まるはず。是が非にでも決行したいと熱く語る山本であったが、作戦そのものの難しさもさることながら、その実施を阻む存在、“内なる敵”陸軍という難題が立ちはだかっていた。作戦の概要が説明される大本営会議で野分が仕掛ける秘策とは?戦記シミュレーション小説の新しい波、堂々の完結篇。
強気の経済政策が破綻したルーズベルト大統領は、早期に対日戦争を勃発させることを決意した。マニラの太平洋軍総司令官マッカーサー陸軍大将にメッセージが届く。その内容に「ルーズベルトの捨て駒にはならん」とマッカーサーは呟く…。上海在留の米国人が連続して殺害された。犯人は日本人だとの噂が広がる。これは、対日感情を悪化させるための米情報組織による秘密工作だった。さらに大統領は、日本海軍を挑発するため、軽巡と二隻の駆逐艦の上海周辺への派遣を決める。一方、ドイツ空軍中国派遣部隊にとって目障りなのは、中国沿岸部に出没する日本帝国海軍の空母部隊だった。そこに、日本海軍の輸送部隊が接近との極秘情報が入る。迎え撃つべく攻撃隊が飛び立った…。大好評の本格シミュレーション戦記第2巻。
江戸元禄期。大坂の染物屋の若旦那文七は放蕩を尽くして勘当の身。金もなく途方にくれる文七は、やはり金に窮する赤穂浪人不破数右衛門と出合う。それは、殿中で赤穂藩主浅野内匠頭が吉良上野介を斬ったことが浪速の町に知れわたった日であった。町人と武士の身分を超えて気の合う二人は、やがて赤穂の仇討ち騒動に巻き込まれていくのだが…。書下ろし痛快時代小説。
毒草を用いて娘の貞操を奪う「いが茄子男」を捜すため、半次は岡山松平様の参勤交代の一行に潜りこんだ。ところが出発早々、殿の毒味役が毒殺される事件が起きた。『影帳』から6年、岡っ引半次、待望の再登場。
水面下で混迷をきわめる備前岡山松平家の継嗣争い。求むべきは血の濃さか、それとも将軍家とのつながりか。密計の黒い糸を手繰っては翻弄される半次は…。陰謀渦巻く世界を描く、傑作長編捕物帳。
博愛主義の政治という理想がはばまれる中で、聖徳太子はしだいに厭世観を募らせていた。一方、強靱な生命力を持つ推古女帝は血の怨念から大王位に固執し、蘇我馬子と組んで太子の疎外を画策する。やがて太子、女帝が逝き、大王位をめぐる確執は、山背大兄王と蝦夷が引継ぐー。上宮王家滅亡を壮大に描く長篇。
超常能力ゆえに、自らに滅びの運命を課す独覚一族。その一人である結城弦は、長老から、人類を第三次世界大戦の危機に陥れようとする、正体不明の独覚の存在を知らされる。ところが、一族の掟に従い、悪しき独覚を除こうとする結城たちの前に姿を現したのは、ブッダ入滅後五十六億七千万年を経て現世に出現し衆生を救うといわれる弥勒だったのだ…。“神”をテーマに描く傑作SF。
森と湖に囲まれた不思議な町「時の杜」。外部と隔絶された奇妙な異次元世界の森の奥で、女子高生・一色舞子が殺された。県警本部から現場へと急行した里見譲捜査官がそこで見たものは、スギの巨木に埋め込まれ、カチカチと静かに時を刻む謎の柱時計。死体の直腸温にフェチを感じる病院長の内村英太郎。捜査を露骨に妨害する地元巡査。奇怪な人間模様の中で起こったその殺人は、神をも恐れぬ壮大な陰謀の序章にすぎなかった。
森の奥で刺し殺された一色舞子の遺体状況から、里見捜査官は犯人が左利きではないかと疑う。だが、捜査の進捗をみないうちに、こんどはFM局の人気DJ日向基樹が放送中に射殺された。しかも目撃された犯人は身体が人間で顔は鹿!異形の殺人鬼は「時の杜」地区に住む誰かと思われたが、奇人ばかりのこの町では、みんながみんなウソをつき、犯人像は全く絞れない。そしてついに連続殺人の犠牲者は捜査陣の中からも出た。
わずか三日で四件の殺人事件が発生した高原の町「時の杜」。県警本部から鯨岡警視も応援に駆けつけ懸命の捜査にあたる中、最初の犠牲者となった一色舞子の父が経営する新聞社に一通のFAXが届いた。文面は「私は犯人を見ています」!一方里見捜査官は、時の杜地区の地下に巨大な都市構造が存在するのではないかという疑念を抱き、実地調査に乗り出した。読み返す手間がはぶけて便利な1&2巻のダイジェスト付き。
引退を決意した落語家・伊呂八亭破鶴の最後の演目ーそれはごく少数の客を招いての奇妙な“二人羽織”だった。独演会の席上、破鶴は怪死を遂げる。集まった客は五人。うち四人までが彼を殺す動機を持っていた!幻の探偵小説誌「幻影城」新人賞人選作である表題作をはじめ、二転三転する展開で、ミステリーの醍醐味を存分に堪能させてくれる全九篇を収録した傑作小説集。
昭和二十八年、裸女を殺害して、木に吊すという事件が蓮台寺温泉で発生。その犯人として逮捕されたのは、当時世間を騒がせた猟奇犯罪にことごとく関係者として連なっている作家、関口巽だった。関口は言う。「多分僕がやった。僕が木に吊るして逃げるところを自分で見ていたのだから」-とまどう捜査陣。事態を混乱させるがごとく、街に溢れる奇怪なる宗教集団。「宴」の始末はいよいよ本書にて明らかになる。
あなたも、わたしも、ここにいる。なのに、なんて遠い男と女。求めても、体を重ねても、満たしきれない。禁じられるものは何もない。現代のさまざまな愛のかたちを描く短編小説集。男では満たされないことを知った女(「暗がりのローランサン美術館」)。婚約者とは別にプラトニックな愛を深めていく女(「最終公演、ワーグナー」)。平凡な結婚生活を送る女に突然よみがえるひと夏の記憶(「海に抱かれて」)。穏やかに見えても、心に、体に、生じるさざ波。果てなき愛の海をさまよう、男と女の九つの物語。
大学二年の真帆が親友の日高とセックスフレンドとしても付き合うようになって二年。以前から日高に惹かれていた真帆は、そのような関係になることを自ら望んでいたばずなのに、なぜか辛くて…!?小説b-Boy掲載時に大好評を得たプライドフル・ラブストーリー。書き下ろし続編では人気のあのコ達も幸せになりそう。