1998年発売
トップの座を目前に住友を去った著名な経済人にして一代の歌人川田順と、短歌の弟子である若き京大教授夫人の灼熱の恋…。戦後の日本を背景に、二人の恋の道程を、繊細に、端正に、香り高く描く、昭和を代表する愛の物語。第三十回谷崎潤一郎賞受賞作。
同時に、しかも別々に誘拐された美貌の妻と娘の悲鳴がはるかに聞こえる。自らが小説の登場人物であることを意識しつつ、主人公は必死の捜索に出るが…。小説形式からのその恐ろしいまでの“自由”に、現実の制約は蒼ざめ、読者さえも立ちすくむ前人未踏の話題作。泉鏡花賞受賞。
長い闘病の苦難を通して現代医療の体質を問い、生きる希望を語る。繰り返す入退院、薬の副作用、医師の辛い態度、心身をさいなむ痛み、そして車椅子生活…。精神的肉体的に追いつめられながらも、もちこたえた日々を綴った感動の記録。
キスも初恋も未経験・高二の幸彦は、従姉の結婚式で出逢った男に突然「好きだ」と告白されたけど本気にできない。だってその「藤倉さん」は十一も年上のオトナで、スーツがキマってて、男前で…コドモを相手にするわけが…えっ、ちょっと待って、ここは…ホテル!?オール商業誌未発表作&書き下ろし、高坂結城流ロマンス。
仙台で個展を開いていた創作折り紙の第一人者・華村研は、何者かが江戸期の手法で見事に折り上げた“紙の蜻蛉”を会場で見つける。その夜、弟子の女性が殺され、現場にはまたも紙の蜻蛉が落ちていた。華村を凌駕するほどの技の持ち主は誰か。彼が探し当てたのは、八歳の無邪気な少女・怜だった。しかも怜の身体には、江戸の天才人形師・泉目吉が甦っていたー。あらゆる仕掛け物から、はては人情の裏側にまで通じた比類なき名キャラクター、目吉先生が鮮やかに謎を解き明かす四つの事件。「紙の蜻蛉」「お化け蝋燭」「鬼火」「だまし絵」を収録。
世紀末の怪事件「東京ヴァンパイア」解決へ、ついに伊集院大介が動き出した!殺された中年男性が持っていた謎のCD、渋谷のカラオケボックスで秘かに売買される奇怪な「ゾディアックカード」…。聞き込みを続ける大介に、さらに不吉な知らせが。
ラブ・ストーリーを読みながら西洋思想のおさらいができる、すこぶるユニークな小説。恋人との出会いから別れまでさまざまな愛の局面を、プラトン、モンテーニュ、ニーチェなど「知の定番」と戯れつつ考察する俊英の処女作。
フランスの片田舎に育ったフィリップは、母から自分がイギリスの公爵の私生児だと知らされる。財産相続の証拠となる手紙を携え危篤の父に会いにイギリスに渡るが、正妻と嫡男に命を狙われ、ロンドンに逃げる。印刷屋で世話になるうちにフランクリンを知り、印刷、出版の啓蒙的役割に惹かれ、新大陸で身を立てる決意をする。ボストンの印刷屋は独立運動家達のアジトで、次第に彼等と深い関わりを持つことになる。ケントでの運命的な恋の行方は?ボストンで出会った新しい時代を生きる女性とは?貴族生活への夢とアメリカの民主運動の間で揺れる心の葛藤は?さまざまな歴史上の人物がフィリップと交わり数々の逸話が語られていく…。フランス〜イギリス〜アメリカを舞台に繰り広げられる大河ロマンの第一弾。
ワシントン(後の米大統領)の英国への反乱軍兵士として、平和を夢みながら勝利のために、飢え、寒さ、病気、怪我に苦しみながらも懸命に戦うフィリップ・ケント。彼と結婚し一児を儲けるが、悲劇的な結末を迎えるアン。優しいが、弱い性格のジャドソン・フレッチャーは、ヴァージニアの大農園主の次男として生まれたが、父親の期待に添えず、初恋の人も友人に嫁ぎ、酒と放蕩の日々を過ごす。不名誉で、悩める彼が、それでも英雄になれたのは何故か?フィリップとジャドソンを結び付けることになる、美しく聡明なペギー・マクリーンは?アメリカの独立戦争を背景にダイナミックに展開する親子の、夫婦の、兄弟の、友人の、そして人間全体への愛に溢れる巨編。
コギャルの赤ずきんに翻弄される中年狼の物語。『ソフィーの世界』の訳者・池田香代子と稀代の絵師・スズキコージが、がっぷり四つに組んで贈る究極のパロディ・メルヒェン。
耳を澄まし心を開けば、見えないものが見えてくる。目はよく見えないけれど優れた聴力と観察力を持った少年は、族長の弟とともに「水の国」をめざし旅にでる。森の奥深くで少年が見つけた限りない世界。
切り離しては考えられない&で堅く結ばれた夫婦ロビンとジリアン。可愛い息子たちにも恵まれ、充ちたりた生活のはずだったが。人生は時として過酷な運命を課す。ジリアンが乳癌に…。息をひそめて温かく病状を見守る家族。だが、出張先のパリで出会ったクララにロビンの心は大きく揺れる。