1998年発売
九百年昔、宋王朝の末期、風狂皇帝・徽宗の治世-。金権腐敗の悪政に背いて梁山泊に翔け参じた義賊、豪傑、悪漢、曲者、美女、謀反人たちが繰り広げる痛快壮絶な叛乱のドラマ。『三国志』とならぶ、中国歴史文学の傑作が、鬼才の筆で現代に蘇る。
銀座のクラブに勤める萩原涼子は、行きつけのバー「ソルティ」のマスター・塩川から奇妙な誘いをうけた。ある金持ちの夫人のレズプレイの相手になってくれというのだ。謝礼につられ話に乗った涼子は、後日、偶然見た週刊誌から、相手が「伊東の妖怪」と呼ばれる政界の黒幕・土井壮司の妻・朋子だとわかった。土井は、異常な性的嗜好の持ち主で、朋子は夫に密かな殺意を。涼子が朋子と組んで土井の莫大な財産を手にしようと謀ったその時、何者からか一千万円を要求する脅迫電話が…。息をもつかせぬ緊迫感と意表をつく結末!ひさびさに官能味横溢するサスペンス珠玉作。
大晦日、夜半近く、警視庁捜査一課ただ一人の女性キャリア・大江沙織警部は部下の吉村とともに惨殺現場に到着した。血まみれの凄惨な女性の死体、その右腕に抱かれるように置かれた黒塗りの西洋人形-それは、十一月末より都内で起きている四件目の連続殺人と思われた。さらに第一発見者は、完璧にアリバイのある十代の少年少女だった。心に傷を持つ刑事・大江が暴き出す現代日本の家庭の崩壊と狂気の温床とは?高価なビスクドールがなぜすべての現場に?その持ち主は誰か?人間の心の暗部を鋭く抉る著者会心の書下ろし、サイコ・ミステリー渾身作。
昭和二十八年春。小説家、関口巽の許に奇怪な取材依頼が齎された。伊豆山中の集落が住人ごとに忽然と消え失せたのだからという。調査に赴いた関口に郷土史家を名乗る和装の男が嘯く。-「世の中には不思議でないものなどないのです」。男が現出させたこの世ならざる怪異。関口は異空間へと誘われるのか?六つの妖怪の物語で、「宴」の「支度」は整い、その結末は「始末」にて明らかとなる。
仕事中でも、つい居眠りをしてしまう奇病をもつ藤木紋蔵は、鬢に白いものが混ざり始めた中年の同心。十五の歳に、南町奉行所に見習い採用されておよそ三十年が経つ。奇病のため外に出すと世間に恥をさらす、というので内勤の例繰方に配属された。俸禄は三十三俵二人扶持。家族は妻の里に紋太郎、紋次郎、稲、麦、妙の二男三女。生活は大変で、表通りに面した地面を人に貸し、さらに夫婦揃って内職に精をだしている。紋太郎を婿養子にやり、稲を嫁に出したので、家族は五人になった。紋蔵はこの奇病ゆえに、人生の真実が見え、「窓際族」ながら様々な事件に関わり、解決していく。
厳寒のベランダに裸同然で立ち自殺を図った私が、初恋の人に似た医師に出会い瀕死の病人を生き返らせてしまう「重心」。親友の夫と一夜を共にしてしまった女の子の不安と喜びを細やかに描く「鳴り響く名前」等。コメディタッチあり不倫あり、妖怪も出てくれば魔女も活躍する。不条理に迫り魂の奥を揺さぶりもする、魅力的な世界。10人の魔女たちが描くどきどきして、上質な小説集。
情熱の都に散った、悲しいほど美しい毒の花。戦争が終わっても傷を負った人たちの悲しみは癒されない。ナチへの復讐を誓った友の狂気に巻き込まれ、レアは南米アルゼンチンへ。加速度を増すスリル!魂を撃つ、悲しみ。
オックスフォード大学の学寮長の引退を目前に控え、後継者争いが激化するなか、大学にほど近い閑静な住宅街で住人の女性が射殺される事件が起きた。さっそくモース主任警部は捜査を開始するが、被害者が人から恨みを買っていたとはとうてい思えない。糖尿病に悩まされながらも地道な聞き込みを続けるモース。うさんくさい新聞記者、耳の不自由な老婦人、詮索好きな主婦…一癖も二癖もある隣人たちの錯綜する証言から、モースは殺人事件と学寮長選挙との意外な接点を発見する!シリーズ終了との噂に、英米ミステリ界が騒然となった超話題作。
「異星人対策局」の三等事務官補トム・ペアレントは、ある日局長から特別命令を受けた。惑星オプリンキアからのお客様を妻のルーシーと共に接待しろというのだ。この接待いかんでは、いまだ銀河評議会に加盟できない後進惑星の地球にも、道が開けるかも…。気のいいオプリンキア人、狂暴なジャクタル帝国大使、銀河暗殺者ギルドの暗殺師など、さまざまな異星人が持ちこむ難題を見事に解決してゆくトムとルーシーの活躍。
写真家志望のメアリーは恋人に依頼され、ある男にロサンゼルス空港で鞄を渡した。代わりに彼女は重いスーツケースを受け取るが、その直後、渡した鞄が爆発、男は死亡した。爆破犯としてFBIと警察に追われ、スーツケースを奪おうとする二人組の男にも狙われる身となった彼女は、変装してポップアート画家のもとで暮らし始める。が、そこにも追跡者が!現代アート界を背景に描く痛快でスタイリッシュなパルプ・ノワール。
天才的な泥棒ドートマンダーが宝石店から盗んだ品物の中には、大きなルビーの指輪があった。それはアメリカがトルコに返却する秘宝で、宝石店の店主が奪ったものだった。不運にもドートマンダーはFBIと警察から追われる身に。しかも、仕事がしづらくなった彼の仲間たちが、捜査を終わらせるため犯人を探し始めた!『天から降ってきた泥棒』に続く爆笑作。
わたしは普通の私立探偵だ。ときおり、事件に関わる人物が放つオーラが見えたり予知夢を見たりすることを除けば。今回の依頼人は刑事だった。昔の友人が転落死を遂げ、警察は事故として処理したが状況に不審な点が多いので調べてくれという。わたしは殺人事件だと直感して真相を探り始めた。やがて被害者の天空図を調べるとそこには怪しい影が…超心理学と占星術の知識を駆使して調査にあたる女性探偵エリザベス初登場。
すべての発端は、四枚の花弁を持つ薔薇を中央と四隅とに一輪ずつ並べた“五輪の薔薇”の意匠だった。少年ジョンは、母メアリーとの散歩の途中で目にした豪華な四輪馬車を飾る紋章に、なぜか自宅の銀器類と同じその薔薇の意匠がほどこされていることを知る。ほとんど屋敷から出ずに母と二人で暮らすジョンにとっては、そもそも、半幽閉的な自分の生活そのものが謎だった。そして、自分に父親がいないことも。ジョンの問いかけにたいし、かたくなに返答を避けてきたメアリーだったが、ある日、自分たちには邪悪な敵がいて、ジョンの身の安全のために、今こそ重大な選択を迫られているのだと告白する-。出生の秘密、莫大な遺産の行方、幾多の裏切り、そして未解決の殺人事件と、物語文学のあらゆる要素をそなえ、読者を心地好い迷宮へと誘う、波瀾万丈かつ複雑に入り組んだプロット。文豪チャールズ・ディケンズ、ウィルキー・コリンズの作品世界をも凌駕する超弩級の大作が、ついにそのヴェールを脱ぐ。
屍体窃盗団同士の抗争、私設学校での残忍な児童虐待など、さまざまな危難をきりぬけたジョンを待っていたのは、愛する母メアリーの死だった。しかも、貧困の底で死んでいった母の遺した手記から、自分の父と思われる人物が祖父を殺害したかもしれないことを知る。ますます深まっていく謎に懊悩しつつ、ジョンの心に渦巻いていたのは、自分たち母子を陥れた者たちにたいする怒りだった。誰一人信用できる者もないまま、五つの旧家にかかわる莫大な遺産相続と、五輪の薔薇をかたどった五点図形をめぐる謎の解明にむけ、さらなる冒険に身を投じたジョンを、以前にもまして苛酷な試練が待ちうけていた-。立体ジグソーパズルを思わせる、知的で重層的な謎解きに加えて、19世紀ロンドンのアンダーグラウンドの息吹を現代に甦らせる、驚くほどの臨場感。大河小説、ミステリ、教養小説のすべての魅力をはらんだ大作も、いよいよ、呪われた一族の暗鬱たる過去の秘密が明らかにされる、衝撃のクライマックスへ。
物語は2002年のアメリカ。天才的遺伝子学者トム・カーターは、人間の設計図ともいえる遺伝子の内容をすべて解読する画期的装置を発明する。彼は、一人娘ホリーの遺伝子を自らの装置で調べ、まもなく彼女が脳腫瘍を発病して1年の命となることを知る。それが遺伝子情報から得たホリーの運命だった。しかし、カーターは諦められない。あらゆる可能性にしがみつき、娘の命を救おうとする。そして、最後に残された道は、奇蹟の治癒能力を持つイエス・キリストの遺伝子、すなわち「神の遺伝子」の謎を解くことだった-。神の遺伝子の謎が明らかにされるとき、ひとつの真理があらわれる-。最先端科学がもたらす恐怖を描いた傑作冒険ミステリー。