1999年発売
伊勢から神戸にかけての約三百キロにわたる「歴史街道」は“日本版ロマンチック街道”ともいわれている。この街道にある日、点々と女性の死体がバラまかれた。一方、中年女性に失踪した娘の行方を探してほしいと頼まれた弁護士探偵・森江春策は青山高原と飛鳥にめまぐるしく続発した殺人に遭遇し、バラバラ死体事件にも取り組むことになる。やがて浮かび上がってきた前代未聞のおぞましいトリックとは。
処女作で文学新人賞に輝き華々しいデビューを飾ったものの、次作が書けず焦燥感にかられた秋川久生は、ルポライター寺島遼子との同棲生活を打ち切り、スペインに旅立った。そんなある日、夕景のアルハンブラ宮殿で小西景子と知り合い一夜を共にするが、翌朝、景子は姿を消していた。帰国し、新しい女性との交際を深めつつあった秋川は、軽井沢で、今は人妻となった景子と再会を果たす…。長篇恋愛小説。
危機への対応は幾つかある。米国が常套とする腕力による解決もその一つだ。しかし、私たちは中国との関わりで幾度も錯誤をやらかしている。その経験を踏まえるならばまずは対中関係のみならずアジア諸国と日本との道義に基づく共栄のアジェンダ(構想)を明示すること、それが実は日本が経済敗戦から立ち直る第一歩となるのではないか。それが本書の隠された主題である。
借金に追われるしがない画商ウィル・サムナーにある日、願ってもない儲け話が舞い込んできた。癌に冒され余命いくばくもないフロリダの大富豪が、その超一流の絵画コレクションを売却してほしいというのだ。ところが、鑑定を始めるや大富豪の妻が何者かに殺され、「ファイルをよこせ」という脅迫が。ファイルとは一体何?それに大富豪はなぜかフロリダ州知事を憎んでいた。謎が謎を呼ぶ名画鑑定の行方はいかに。
ファントム・ライダーとして数々の戦歴を誇る松本栄治は、四十歳を迎え、一線を退こうとしていた。そのラストフライトの日、松本の脳裏に蘇ってきたのは、中南米での人質奪還作戦飛行のことだった。実戦では先に敵機を発見した方に勝機がある。松本は自分の眼だけを信じ、勝ち残ってきたのだ…。意地と誇りを賭して蒼穹を駆けるライダーたちの物語。本格航空小説。
東京都知事室に「東京を火の海にする…」という脅迫電話がかかってきた。犯人の狙いは…。混乱する都庁。その夜、入国管理局の収容所が襲われ、警備官を殺害、不法残留の中国人が大量脱走した。ふたつの兇悪事件を結ぶ意外な事実に気付いた警視庁捜査四課の実相寺は、怒りに燃えて、一匹の猟犬と化し、陰謀の核心に肉薄していった。長篇ハードサスペンス。
あの明菜がNo.1の座を狙う!?五月に宣戦布告してパラダイスは大混乱。明菜のお水デビュー時の秘話も明らかになったりして…。六本木に“3つの奇跡”が起きる。TV版でも、漫画版でもみられない新作書き下ろしストーリー。
国姓爺鄭成功、幼名福松は、東アジアの海の実力者を父として、日本人田川氏の娘を母として、平戸に生まれた。七歳のとき福建泉州へと渡り、父のもとで成長、やがて南京の太学に学ぶ。折りしも李自成軍に首都北京を占領された明朝は滅亡、山海関を越えた満洲鉄騎軍は中国大陸制圧に向けて怒涛の南進を開始した。唐王隆武帝を奉じ、父とともに反清勢力を率いることになった若き英雄の運命は。
古墳の闇から復活した大津皇子の魂と藤原の郎女との交感。古代への憧憬を啓示して近代日本文学に最高の金字塔を樹立した「死者の書」、その創作契機を語る「山越しの阿弥陀像の画因」、さらに、高安長者伝説をもとに“伝説の表現形式として小説の形”で物語ったという「身毒丸」を加えた新編集版。
男女両性の長所から生命の芸術をクリエイトする「創造」、谷崎の府立一中時代の友人・大貫晶川をモデルに描く「亡友」と長篇「女人幻想」-器量よしとお洒落とで評判の兄妹。思春期を境により美しくなってゆく光子、女性的の美を羨みこだわり続ける由太郎は、女を騙すことばかり覚えて…。
「夫は吸血鬼かもしれない」-マタニティ雑誌「プレマム」編集部の布施乃理子あてに不審な手紙が届いた。一方、同じ頃、「プレマム」の元モデルが絞殺され、さらに「プレマム」の読者を巻き込む児童誘拐事件が発生する。不審な手紙と二つの事件には、複雑な人間関係と恐るべき事実が隠されていた…。「現代」の吸血鬼をテーマに、人間の“血”と“愛”を描く心理サスペンスの力作長篇。
人でありながら、神の子であったイエス=キリスト。数々の奇跡を起こし、そして人間の罪を負って十字架にかけられたイエスの生涯を、われわれと同じ、ひとりの人間の生涯として描いた本書は、神を求め、その声を聞くことができない悲しみや、信仰に迷いながらも、貧しい者の中に希望を見いだそうとするイエスの姿を鮮やかに甦らせる。ここには、神話の中にではなく、われわれの心の中に息づくイエスがいる。
19世紀末、封建的時代のスウェーデン。貧しさゆえに12歳で農園に奉公に出されたハンナは主人の息子に強姦され、13歳で母親になる。苛烈な差別と過酷な労働にも耐え、息子を明るい子に育てるハンナ。彼女が産んだヨハンナも、奉公先の医師一家に虐待され社会主義に傾倒しながら、豊かになっていく社会と女の地位とのギャップに苦しむ…。-あまりに残酷な運命を生きた、北欧の美しい大地の女たち。母娘の、夫婦の、気高い愛が激動する時代を背景に光を放つ「希望の書」。
全長4000メートルの海峡大橋を支えるコンクリートの巨大な塊“アンカレイジ”。内部に造られた窓ひとつない空間に集まった科学者・建築家・医師の六名。プログラムの異常により海水に囲まれ完全な密室となったこの建物の中で、次々と起こる殺人…。最後に残ったのは、盲目の若き天才科学者とアシスタントの二人だった。犯人は、私?僕?それとも-。
昭和16年3月。萌は故郷・明日萌を遠く離れ、生まれて初めての地に降り立った。そこは大都会・東京-。人の多さと生活リズムの速さに圧倒され、不安になる一方で、東京で母に会えるかもしれないと、淡い期待を抱いていた。そんな萌に襲いかかる災難の数々。あてにしていた働き口がだめになったうえ、すり騒動に巻き込まれ、財布を盗まれてしまったのだ。途方に暮れた萌は、最後に残っていた十銭硬貨を握りしめ、駅近くにあった猫又食堂の暖簾をくぐるのだった。食堂の女将・としは津軽三味線を爪弾く趣味があり、その音色が萌にはなぜか懐かしい。もしや本当の母では…そして、さまざまな出会いを重ねていく中で、萌は結婚相手とめぐり会う。しかし、幸せな生活もつかの間だった。徐々に忍び寄る戦争の影が萌の人生を一転させる。