2000年10月25日発売
代議士を曾祖父に持ち、「三沢の矢野様」と呼ばれる豪農の家に生まれた重也は、両親の配慮ですぐに里子に出されてしまう。本家と里子先の貧富の差に思い悩んだ幼年期、養母や親友との死別、関東大震災など、幾多の挫折を経て旧制一高、帝大へと進学。文学者を志望した重也は、フランス文学などの翻訳に精力的に取り組む一方、マルクス主義に惹かれて、共産党に入党。革命運動に身を投じるようになり、党の密命を受けて中国へ渡ることになる-。一代にして大コンツェルンを築き上げた男・矢野重也その数奇な運命を描く大河小説。
自分の理想と共産党の現実に悩み、離党した重也は、党からの激しい批判を受けながらも、地下に潜って文学活動を続けていた。地下活動の最中、ひょんなことから友人と共に再生紙工業を起こし、実業の世界へ進出。再生紙工業が成功し、企業が大きくなるにつれ、重也は自分の中の文学者としての顔と、ビジネスマンとしての顔の間にジレンマを感じ始める。そんな悩みをよそに、重也はラジオ局、テレビ局、新聞社の社長を歴任、史上空前の規模の巨大なマスメディア帝国を築いていくのだった-。マスメディア帝国はいかに構築されたか?波乱の生涯を描く大河小説。
誰も描かなかったブラインド・スポット-孤絶の空間を舞台に、音道貴子の刑事人生は最大の危機に突入した。ここは一体どこなのか。犯人グループの次の一手は何なのか。たった一人で敵と対峙する彼女の脳裏を、期待と絶望が交錯する。このデッドロックをくぐり抜ける手段が果して存在するのか。『凍える牙』に続く久々の書下し大作。
弟・襾鈴の失踪と死の謎を追って地図にない異郷の村に潜入した兄・珂允。襲いかかる鴉の大群。四つの祭りと薪能。蔵の奥の人形。錬金術。嫉妬と憎悪と偽善。五行思想。足跡なき連続殺害現場。盲点衝く大トリック。支配者・大鏡の正体。再び襲う鴉。そしてメルカトル鮎が導く逆転と驚愕の大結末。一九九七年のNo.1ミステリに輝く神話的最高傑作。