2000年11月発売
不幸なファーストコンタクトから、那国文明圏とエキドナ文明は交戦状態に陥った。千年単位での技術格差によって、那国は圧倒的優勢のまま王都ルゴフを制圧。ここにエキドナ文明ルゴフ王国は陥落した。しかし、コミュニケーション手段として投入した翻訳機が誤訳の嵐で、交渉すら頓挫していた。そのころ筆頭教授マーサは、遺跡から発掘された遺体が、我々人類とほぼ同じ遺伝子パターンを持つことを発見する。大好評シリーズ待望の第二弾。
今から五年前、日本全土を襲った大地震。誰もが“感じた”地震だったが、不思議なことに何も被害はなかった。幻覚地震と呼ばれるその地震の後、今まで目に見えなかったものが、日本各地に出現するようになる。魔物、妖怪、物の怪などが現実の世界に現れたのだ。あるものは、徒党を組んで人を襲い、あるものは、人に憑依して人肉を喰らう。妖怪と人間の怪異な世界を描く、書き下ろし長篇スプラッター・ホラー。
きんめ鯛を手土産に恋しいタマヨさんを訪ねる“あたし”の旅。終電の去った線路で、男を思いつつ口ずさむでたらめな歌。家庭をもつ身の二人が、鴨鍋をはさんでさしむかう冬の一日。ぽっかりあかるく深々せつない12の恋の物語。書下ろしをふくむ待望の最新短篇集。
看護は女性がするものーそれは思い込みにしかすぎません。ナースマンとは、看護職(ナース)を一生の仕事に選んだ男(マン)=看護士さん。今注目の仕事です。主人公は「看護界の坂本龍馬を目指す」新米ナースマン・相馬。先輩にどやしつけられたり、お婆ちゃん患者の純情にほろりとしたり、難病患者との意思疎通に悩みぬいたり。スランプを乗り越えて、「患者と一緒に走るタイプの看護士」に成長するまでの一年間を生き生きと描く、まったく新しい病院ノベルです。
水琴窟という、庭先に水をまくと珠をころがすような安らかな音が鳴る仕掛け。操がそれを初めて知ったのは至剛の家の庭だった。孤独な転校生だった操を気遣ってくれた爽やかな少年至剛。しかし、快活そうに見えた彼には、避けがたい死が迫っていた。病床の至剛の求めるまま、操は庭の水琴窟を鳴らすのだが…。少年たちの孤独と淡い愛情、儚い命の凛々しさを描く表題作など珠玉の短編五編。
茂樹34歳、美花27歳。係累をなくした異母兄妹は、寄る辺なき心を慰めあい、互いへの情愛を受け止めあうことにより、強く深く求めあう。タブーを超えた激しく純粋な愛を描く長篇。 (解説・池内 紀)
曜子、23歳。スイミングスクールのインストラクター。学生時代からの友人・徹也に求婚されるが、気持ちは固まらない。徹也のことは好きだけど、恋してはいない。そんなとき造形作家・久住のモデルをつとめ、激しく惹かれてゆく。だが彼は女性関係に奔放で束縛を嫌うタイプー。愛してくれる優しい男と、不安で仕方がないのに愛してしまう男と。ふたりの男の間で揺れ惑う曜子の心模様。
一八九四年長崎、蝶々さんと呼ばれた芸者の悲恋から全てが始まった。息子JBは母の幻を追い、米国、満州、焼跡の日本を彷徨う。三代目蔵人はマッカーサーの愛人に魂を奪われる。四代目カヲルは禁断の恋に呪われ、歴史の闇に葬られる。恋の遺伝子に導かれ、血族四代の欲望は世紀を越える。日本現代文学の全字塔たる画期的力篇。
渡辺儀助、75歳。大学教授の職を辞して10年。愛妻にも先立たれ、余生を勘定しつつ、ひとり悠々自適の生活を営んでいる。料理にこだわり、晩酌を楽しみ、ときには酒場にも足を運ぶ。年下の友人とは疎遠になりつつあり、好意を寄せる昔の教え子、鷹司靖子はなかなかやって来ない。やがて脳髄に敵が宿る。恍惚の予感が彼を脅かす。春になればまた皆に逢えるだろう…。哀切の傑作長編小説。
日中戦争の戦火を逃れて北京から南京に移送される数十万点の故宮名宝を奪取せよ!黄塵の大地8000キロを駆け巡る壮絶な攻防。戦乱に翻弄される「人類の遺産」を死守する人間の過酷な運命を描く書き下し冒険アクションの巨編。
28世紀、宇宙に進出した人類を統べる連邦政府を震撼させる事態が発生した!時を超越する殺戮者シュライクを封じこめた謎の遺跡ー古来より辺境の惑星ハイペリオンに存在し、人々の畏怖と信仰を集める“時間の墓標”が開きはじめたというのだ。時を同じくして、宇宙の蛮族アウスターがハイペリオンへ大挙侵攻を開始。連邦は敵よりも早く“時間の墓標”の謎を解明すべく、七人の男女をハイペリオンへと送りだしたが…。ヒューゴー賞・ローカス賞・星雲賞受賞作。
迫りくるアウスターの脅威と、殺戮者シュライクの跳梁により惑星ハイペリオンは混乱をきわめていた。連邦政府より命令をうけ、この地に降りたった、神父、軍人ら経歴もさまざまな七人の男女は、一路“時間の墓標”をめざす。その旅の途上で明らかにされていく、数奇な宿命を背負う彼らの波瀾にみちた人生の物語とは…?あらゆるSFの魅力を結集し、卓越したストーリーテリングで描く壮大なる未来叙事詩、ここに開幕!ヒューゴー賞・ローカス賞・星雲賞受賞作。
52歳のケープタウン大学教授デヴィッド・ラウリーは、二度の離婚を経験し、以来、欲望に関してはうまく処理してきたつもりだった。だが、ひとりの教え子と関係をもった時から事態はすっかり変わった。胸高鳴る日々も束の間、その学生から告発されて辞任に追い込まれてしまったのだ。仕事も友人も失ったデヴィッドは、娘がきりもりする片田舎の農場へ転がり込む。誰からも見捨てられた彼を受け入れてくれる娘の温かさ、自立した生き方に触れることで恥辱を忘れ、粉砕されたプライドを繕おうとする。だが、ようやく取り戻したかに見えた平穏な日々を突き崩すようなある事件が…。転落し、自分の人生を見つめ直すことになった男の審判の日々を描く。この作品で二度のブッカー賞に輝く不世出の作家が贈る、落ちゆく人生を彷徨う男の物語。