2000年2月発売
十九世紀末、パリ。華やかなオペラ座の舞台裏では奇怪な事件が続発していた。首吊り死体、シャンデリアの落下。そして、その闇に跳梁する人影…“オペラ座の怪人”と噂されるこの妖しい男は一体何者なのか?オペラ座の歌姫クリスティーヌに恋をしたために、ラウルは、この怪異に巻き込まれる。そしてその運命の夜、歌姫とラウルは、まるで導かれるように、恐ろしい事件に飲み込まれてゆく。オペラ座の地下で、闇を支配する怪人と対峙したラウルが目にした、想像を絶する光景とは?そして怪人と歌姫の真実とは?不朽の名作『オペラ座の怪人』の新訳決定版、ついに刊行。
ジャズは、この男から始まった。少年サッチモを虜にした、ニューオリーンズの天才コルネット奏者、バディ・ボールデン。爆裂するコルネットを手に、狂気の淵へと疾走した苛烈な生涯を、妻や友人を語り手とする挿話、インタビュー、詩的断章等によって再現する。伝説と史実を巧みにコラージュした、『イギリス人の患者』(ブッカー賞)の作家によるドキュメント・ノヴェル。
1950年6月25日に勃発した朝鮮戦争が、作者と民族の運命を変えた。高校三年で人民軍に動員され、国軍の捕虜となって釈放後に越南した作者は、その切実な体験をもとに、戦争という極限状況下で出会った北と南の人びとのイデオロギーでは割り切れない人間本来の姿を活写する。統一への希求を結晶化した現代韓国文学の代表作。大韓民国芸術院賞・大山文学賞受賞。
南北戦争末期、負傷した南軍の兵士インマンは、故郷ノースカロライナに残してきた恋人エイダの許へ戻ろうと脱走した。危機と困難に満ちた旅の末、エイダとの再会を果たした主人公だったが…。アメリカの大自然を背景に、美しく詩的な言葉で描かれた、悲恋の物語。
人が脅されて怖がっている。苦しんで、悩んで、最後に自分を殺してしまう。それしか方法がない状態に追い込まれる。いじめは遊びじゃない、いじめは犯罪なんだ。「イントゥルーダー」「スピカ-原発占拠」に続く、衝撃の問題作。
メリータはイギリスから船旅で独り未知のマルティニーク島へ渡った。父の死後、義母に遠方へ追い払われ家庭教師として働くことになったのだ。雇い主のヴェソンヌ伯爵は妻を亡くしその後、従姉のマダム・ブワセによって伯爵邸と農園の実権を握られていた。だが、メリータに勇気づけられた伯爵は奴隷たちの難問にも取り組み始める。そんな二人の様子に嫉妬するマダムは挑発や攻撃を仕かけ続けた。いがみ合う大人達に、伯爵の一人娘であるローズマリーも怯えていた。ある夜、森からの奇妙な太鼓に誘われたメリータは、秘密の儀式に遭遇する。
1942年3月、台湾空襲に参加した極東米軍のB-17はあり得ないものを目撃した。単翼低翼で、機体は小さい。それは、メッサーシュミットBf109の勇姿!すべては、41年6月の「事件」から始まったのだった。世界を震撼させ、歴史の歯車を狂わせた「事件」…。陸軍大臣・東条英機はいらついていた。ドイツとの意思の疎通がはかれないのだ。駐独大使からも内容のある報告はなかった。ドイツ大使館に呼び立てられ、大使自らの出迎えを受けた東条に、正体不明の不安がこみ上げる。果たして東条を、そして日本の運命を左右するものとは?気鋭が斬新な発想で描く本格シミュレーション戦記。
急な辞令でデスクワークから建設現場へ異動になった浩一郎は、あらっぽい連中のなかで戸惑うばかり。なかでもひときわ若いとび職人の祭は、特に反抗的だ。子供のような祭にバカにされて少し悩む浩一郎だが、あるとき足場で具合の悪くなったところを助けたことから、祭はうってかわって浩一郎になつくようになる。そして浩一郎の部屋で、ままごとのような同居がはじまり。
スペイン版“スタンド・バイ・ミー”!少年の息づかいが聞こえてくる、山村での甘酸っぱく、ほろ苦い青春、そして日々の生活。ベストセラー作家が描く文学史にのこる記念碑的作品。
昭和を体現した宰相の伴侶で金庫番、そして「越山会の女王」と呼ばれた佐藤昭子。運命の出会いに始まり、二人三脚で総理にまで登り詰めた男と女の、いまだから明かせる物語。
新米ママに贈られたのは20発の弾丸と拳銃だった…未婚の母になるために刑事の職を辞した羽根栄枝。だが、愛娘・珠代が生後3か月になったとき事件は起きた。ちょっと目を離した隙に、乳母車にいるはずの赤ちゃんがいなくなってしまったのだ。うろたえる栄枝の元に拳銃ザウエルP230が届き、同時に妙な指令が下る。「娘を返して欲しければ、人を撃ち殺せ」。そう彼女は狙撃の名手だった。我が子を救うため、栄枝は「任務」を遂行することを決意する。当代一の人気作家が贈る傑作ミステリー。
刑務所帰りの元海兵隊員ファレルは、ドアマンの仕事をしていた時にホテルの金庫から現金を強奪することを思いついた。入念な計画は成功したかに見えたが、仲間の一人の裏切りが発覚し、ファレルはその男を始末する。だが男はIRAの一員だったことからIRAから追われる身に。さらに、故買屋の組織からも盗品を狙う追っ手が迫るー成りあがることを夢見ながらも、破滅への道を突き進む男たちを描く、力作ノワール小説。
今度はおまえたちの番だ!銀行強盗を働き、撃ち合いの末に射殺された女の夫ラシェズは、激しい憎悪を胸にミネアポリス市警副本部長ダヴンポートを始めとする刑事たちへの復讐を開始した。ラシェズの標的となった刑事たちとその家族が一人また一人と襲われていくなか、ダヴンポートは男の行方を必死に追う。が、やがてダヴンポートの身近にもラシェズの魔手が!真の恐怖に突き落とす衝撃のサスペンス。文庫オリジナル。
ロンドンのジャーナリストの家に、一人の男が訪ねてきた。その男は45年前に起きた痛ましい事件について、真相をおもむろに語り始めた…。1954年、ノーフォーク州の全寮制パブリック・スクール、カークストン・アベイ校。14歳の生徒ジョナサンは同級生ばかりか教師にもいじめられ、つらい日々を送っていた。だが、そんな彼に新しい友人ができた。友人の名はリチャード。勉強はできたが、一匹狼的な男だった。クラスを支配するグループのボス、ジェームズはリチャードを仲間にしたいと願っていたが、ジョナサンと親しくなったため、ジョナサンに対して残酷ないじめを開始する。そんなジョナサンをリチャードがかばい、二人の仲はより親密になっていく。が、それと時を同じくしてグループのメンバーが大怪我を負ったり、事故死する事件が立て続けに起き、教師たちも奇怪な事件の犠牲になっていく。そして、この事件の裏には、ジョナサンとリチャードの秘密の儀式が…!少年の歪んだ心が引き起こす恐怖と戦慄の事件。イギリスでベストセラーを記録したゴシック・スリラーの新たな傑作。
その部屋には第三者がいたのか、いなかったのか。朝比奈耕作の前に新たな密室の難問が立ちはだかった。強風吹き荒れる夜、マンションの五階から『天井桟敷の貴婦人』と呼ばれる美女が転落死。直後に、どこからともなくドライフラワーの花束が降ってきた。五階の部屋は無人の密室。だが、誰かがいた可能性が消せない。現実離れした服装で観劇に現れ、客席で奇妙な独り言をつぶやく美しき奇人の悲劇を調査する朝比奈は、巧妙な死の罠を解く。しかし、その直後に思いもよらぬ戦慄の結末が…。「軽くてヘビーな」推理小説。