2001年1月16日発売
なかなか開かなかった古い茶箪笥の抽匣から見つけた銀の匙。伯母さんの限りない愛情に包まれて過ごした日々。少年時代の思い出を、中勘助が自伝風に綴ったこの作品には、子ども自身の感情世界が素直に描きだされている。漱石が未曾有の秀作として絶賛した名作。
『阿部一族』は殉死の問題を取り扱った作品で、封建制のもとでの武士道の意地が、人間性をぎりぎりにまで圧迫して、ついにはその破滅に至らせる経緯を、簡潔な迫力ある筆で描いた歴史小説の傑作。他に鴎外の初期歴史小説の代表作『興津弥五右衛門の遺書』『佐橋甚五郎』の二篇を収める。
孤児になり、修道院を追われたジュリエットとジュスチーヌのふたり。姉はその美貌を利用し、すすんで淫蕩に身を任せ、まんまと出世を果たすが、純真な妹ジュスチーヌは、美徳をかたく守りつづけたために、くりかえし悪徳に迫害される。本書は革命期に刊行された思想小説で、サドが初めて世に送った作品である。本邦初訳。
地 図 ベハル公爵に捧げる献辞 序 文 機知に富んだ郷士ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ 第一部 第一章 名高き郷士ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャの人柄、および生活ぶりについて 第二章 機知に富んだドン・キホーテが郷里をあとにした最初の旅立ちについて 第三章 ドン・キホーテが騎士に叙された愉快な儀式について 第四章 宿屋から出発したわれらの騎士に起こったことについて 第五章 ひきつづき、われらの騎士の災難が語られる 第六章 司祭と床屋がわれらの機知に富んだ郷士の書庫で行なった、愉快にして大々的な書物の詮議について 第七章 われらの善良なる騎士、ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャの二度目の旅立ちについて 第八章 勇敢なドン・キホーテが、かつて想像されたこともない驚嘆すべき風車の冒険において収めた成功、および思い出すのも楽しいほかの出来事について 機知に富んだ郷士ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ 第二部 第九章 ここでは凜々しきビスカヤ人と勇敢なるマンチャ人とのあいだに繰り広げられた瞠目に値する戦いに決着がつけられる 第十章 ドン・キホーテとビスカヤ人とのあいだに起こったさらなる冒険、およびドン・キホーテが一群のヤングワス人に出くわしておちいった危機について 第十一章 ドン・キホーテと山羊飼いたちのあいだに起こったことについて 第十二章 ドン・キホーテといっしょにいた者たちに、ある山羊飼いが語ったことについて 第十三章 ここでは羊飼いの娘マルセーラの話に結末がつけられ、またそのほかの出来事も語られる 第十四章 ここでは死んだ羊飼いの絶望の詩篇が披露されると同時に、思いもよらぬ出来事が語られる 機知に富んだ郷士ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ 第三部 第十五章 ここでは冷酷なヤングワス人たちと出くわすことによってドン・キホーテにふってわいた不運な冒険が語られる 第十六章 城だと思いこんだ旅籠で機知に富んだ郷士に起こったことについて 第十七章 ここでは勇敢なドン・キホーテが狂気ゆえに城と見なした旅籠で、善良な従士サンチョ・パンサとともにこうむった無数の災難がなおも続く 第十八章 ここではサンチョ・パンサが主人のドン・キホーテと交わした会話、および聞くに値する冒険が語られる 第十九章 サンチョが主人と交わした気のきいた会話、主人にふりかかった死体の冒険、および、そのほかの名高き出来事について 第二十章 勇敢なドン・キホーテが、この世の名にしおう騎士たちがかつてなしとげたいかなる冒険よりもやすやすと、ほとんど危険な目にあうことなくやりとげた前代未聞の冒険について 第二十一章 燦然たるマンブリーノの兜を奪取するにいたったとびきりの冒険、ならびに、われらの無敵の騎士に起こったそのほかのことを扱う章 訳 注
地 図 機知に富んだ郷士ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ 第三部(続き) 第二十二章 行きたくもない所へ無理やり連行されていく、多くの不幸な者たちにドン・キホーテが与えた自由について 第二十三章 シエラ・モレーナ山中で高名なドン・キホーテに起こったこと、すなわち、この真実を語る物語のなかでも最も珍しい冒険のひとつについて 第二十四章 ここではシエラ・モレーナ山中での冒険が続く 第二十五章 シエラ・モレーナの山中でラ・マンチャの勇敢な騎士に起こった奇妙な出来事、ならびに、彼がベルテネブロスの苦行を真似てしたことを扱う章 第二十六章 ここではドン・キホーテが恋心を表現するために、シエラ・モレーナ山中で演じたゆかしき苦行が続けられる 第二十七章 司祭と床屋がその計略を実践した経緯、ならびに、この壮大な物語において語られるに値することどもについて 機知に富んだ郷士ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ 第四部 第二十八章 同じくシエラ・モレーナ山中で司祭と床屋に起こった新奇にして愉快な冒険を扱う章 第二十九章 われらの恋する騎士を、彼がみずから行なっていた厳しい苦行から連れ出すためにとられた愉快な策略と方法を扱う章 第三十章 美しきドロテーアの聡明さ、および、はなはだ楽しくも愉快なことどもを扱う章 第三十一章 ドン・キホーテとその従士サンチョ・パンサのあいだに交わされた、味わい深くも愉快な会話、およびそのほかの出来事について 第三十二章 宿屋でドン・キホーテの一行に起きたことを扱う章 第三十三章 ここでは小説『愚かな物好きの話』が語られる 第三十四章 ここでは小説『愚かな物好きの話』が続けられる 訳 注
鮮烈なイメージと豊かなストーリーで織りなされる30の連作短編集。一つずつ順番に、前話をゆがんだ鏡像のように映しだし、最後の話が最初の話へとつながって、読者をめくるめく意識の迷宮へと導く。人間存在の神秘と不可思議さを映し出す鏡の世界の物語は、『モモ』『はてしない物語』とならぶ、エンデの代表作である。