2001年11月20日発売
恋人の裏切りに心を引き裂かれ、大学生活を捨て信州・菅平にやって来た僕。もう人を愛せない。心も、そして体も-。終わりのない痛みに閉ざされた僕が出会ったのは、信州の空のような明るさの奥にさまざまな傷を隠し持った人たちだった。愛し合い、傷つけ合い、やがて赦し合う人々が静かに、せつなく奏でる交響楽。待望の長編小説。
身上惜しまぬ希代の宴会名人、〓愁使者抱樽。アルコールの概念がなかった時代のきき酒師、宇田川小三郎。上方から江戸への新酒一番入荷を競う番船競争、正覚坊の亀。大酒合戦で一斗九升五合を呑み干した男、小山の佐兵衛。役人尻目に密造酒造りに励む白馬佐助-。江戸と美酒の香りあふれる、桁外れの大江戸酒豪列伝。
楽しみにしていたクリスマス。恋人トラヴィスの家の豪華なパーティで、セイジは突然、彼から別れの言葉を告げられる。2人のやりとりを聞いていた見知らぬ男が「きみを連れにきた」と言う。ブロンドに突き刺すようなブルーの瞳のこの男。信用できるのだろうか?…『謎の女を探して』『偽りの愛の果てに』に続くタイラー家の三人兄妹をめぐる「テキサス三部作」、興奮とときめきの完結編。
あこがれ、淡い恋、繊細な女性心理のひだを、こまやかに描いた、やさしい12の小品。10年前に飛行機事故に遭った夫の遺品の中から見知らぬ女性の手紙を見つけ、その足跡をヴェネツィアに訪ねる表題作のほか、「アムステルダムの花市場」「メルヘン街道の少年」「ふたりの紫陽花」「ロダンの庭」「心の中の青い湖」など。
四十五歳の若さで逝った女性翻訳家が、娘のために遺した四巻のテープ。そこに語られる無惨な恋、許されぬ過去、そして「ひとつの死」。誰もが何かを探していたあの時代が、鮮やかによみがえる。追憶の光と影、切なさと歓びに涙がとまらない、感動の告白小説。
五人のT大生の間に生じた確執は、やがて恐しい決闘へと発展していった…。古き良き時代の学生生活と雄大な自然とを背景として、ある完全犯罪の顛末を描く名品「噴火口上の殺人」、ドンデン返しの連続で若き日の佐野洋を唸らせた「四月馬鹿の悲劇」、欺瞞を許しておけない性格の男の悲劇「真実追求家」など、戦後本格派の雄の全短篇から選りすぐった傑作、全10篇。