2001年6月発売
北朝鮮の女性将校で美人パイロットの柳英姫は、大連に留学した時に日本人商社マンの西山哲男と知り合い、恋仲になる。哲男への思いを募らせる英姫は、ソウル奇襲作戦に参加し、そのまま亡命することを決意した。一方、哲男は台湾人の叔母から、旧ソ連の怪鳥艇に関する極秘文書を託されていたが、その書類を入手しようと、中国のスパイが彼の周辺に出没する…。
韓国に亡命し、インド空軍外人部隊へ出向した柳英姫は、怪鳥艇の謎を知る哲男と再会するが、二人は、北朝鮮、中国の双方から執拗な襲撃を受ける。一方、ロシアのカスピ海に「鷲の息子」と呼ばれる強襲上陸艇があることを突き止めた中国軍は早速、その売買契約に着手。英姫と哲男も、中国の契約を阻止すべく、カスピ海へ…。アジア情勢に詳しい著者が挑んだ“大冒険ラブロマンス”。
九州制覇、文禄・慶長の役と、後半生を常に戦場で過ごしてきた薩摩の太守・島津義弘は、政局を読み取り、敵の作戦を察知する才に長け、大胆な攻撃で敵を打ち破る戦略家として、内外に恐れられた。小心者の徳川家康、官僚主義者の石田三成、保身に走る兄・義久という思いきった人物設定で、戦国武将の内面に鋭く迫り、現代の指導者たちにも熱い共感を呼んだ大作。柴田錬三郎賞受賞。
秀吉の朝鮮出兵後、景気は急速に衰え、戦後不況が猛威を振るう中、戦国末期の日本は、東西両軍が対峙する関ヶ原の戦いで活路を見出そうとしていた。薩摩の太守・島津義弘は兵力不足にもかかわらず、わずかな家臣を引き連れて関ヶ原へ向かう。劣勢を承知の上で戦いに挑んだ義弘の真意とは?現代政治の不毛と重ね合わせながら「関ヶ原」を再現し、指導者のあるべき姿を示した傑作。
暴流。自分も刻々、瞬きする間もなく過ぎる時間とともに、命の暴流の中にいる。ここでなにをしているのか。若く、異様な激しさを潜めた娘に執着し、しかも相手に大した支援も保障もせず、こっそり家庭を保っている。その渇愛と欺瞞の底に、沈んでいる。小説家の中には破天荒に生きた祖父の血が流れていた。著者渾身の長編小説。
高級なモンが食べたいわけやない。おでん、きつねうどん、すきやき、お好き焼き、くじら、たこやき…なのになかなか理想の味に出会えない。せつない。それだけに、それに出会えたときのしあわせ、気の合う異性と顔寄せて「うまいなあ」と言葉かわしながら食べるときの心の弾みは…。人生練れてきた年頃の男の切なさと心ときめきを描く、極上の連作小説集。
お役目とはいえ、今日も“八州廻り”の桑山十兵衛は関八州を駆け巡る。尽きることのない悪党、難事件…。大好評第二弾は、剣豪・千葉周作が、初恋の女性が、捕り物の背後で、彼の心を掻き乱し、微妙な影を落とす。決して恰好良くはない。が、人間味溢れる男やもめのヒーロー・十兵衛の見事な手腕と侠気をお楽しみあれ。
次郎、17歳。吉祥寺で週二回、ギターを習うだけが日課の毎日。ロック世代の母親と画家志望だった父は、学校に行かなくても煩くは言わない。退屈、恵まれ過ぎているという退屈ー。そんな時、音楽講師に誘われて知った「性」が世界を変えた。昨日とは丸っきり違ってる今日。愛しき少年の時間を描く青春長篇。
「今朝起きたらひどく頭が痛んだ。バルタザールが飲みすぎたのだ」一つの肉体を共有する双子、バルタザールとメルヒオールは、ナチス台頭のウィーンを逃れ、めくるめく享楽と頽廃の道行きを辿る。「国際舞台にも通用する完璧な小説」と審査員を瞠目させ、第3回日本ファンタジーノベル大賞を受賞したデビュー作。
日本で書かれた中国人の“日中戦争”。1937年7月、盧溝橋事件勃発。日本と中国は全面戦争に突入した。上海の財閥の孫娘・程碧雲は両親を失い、神戸の日本人家庭で育つが、あることから抗日救国の組織へ。波瀾の大陸で自覚する日中の深い苦悩と未来への夢を描く感動の長編小説。短編2編も併載。
舞台は人里離れた大田舎の村、大青山村。村長は村おこしのためにテーマパークを作って都会から人を呼ぼうと画策するが、開園前に早くも呼び物の「世界一長い滑り台」が台風のため崩壊。急遽お化け屋敷をメインに開園を強行するが、これが完全な空振りで、訪れた客の笑いものになる。一方、村の近くの山奥深く、古来から狐の親子が猫又の一族と暮らしていた。愛郷心の強い老狐は、失敗したテーマパークを救うべく、勇躍お化け屋敷に乗り込むが…。倉阪鬼一郎、初のユーモア・ファンタジー!書き下ろし長編。