2001年発売
花沢支配人は青ざめた。なんの因果か、今宵、我らが「プリズンホテル」へ投宿するのは、おなじみ任侠大曽根一家御一行様と警視庁青山警察署の酒グセ最悪の慰安旅行団御一行様。そして、いわくありげな旅まわりの元アイドル歌手とその愛人。これは何が起きてもおかしくない…。仲蔵親分の秘めた恋物語も明かされる一泊二日の大騒動。愛憎ぶつかる温泉宿の夜は笑えて、泣けて、眠れない。
運動オンチで泳げないけれど、学校の成績だけはいい七生。なのにどんなに頑張っても同じクラスの伊戸川くんだけは追い抜くことができない。負けたくない!塾に通うことにした七生だが、驚いたことに伊戸川くんも同じ塾に通っていた。ライバル心がいつしか淡い恋心に変わってー。不器用で一途な少女の、ひと夏の成長をつづる青春ストーリー。巻末に文庫書き下ろし特別エッセイを収録。
脱走した米兵の惨殺死体が日本海岸で発見された。それがすべての発端だった…。同じ頃、米国防総省の下請け情報機関に所属するアナリスト・葉山は調査中にある情報を入手する。北朝鮮の権力中枢で、何かが起きているー。鍵を握る謎の言葉「プラチナ・ビーズ」とは?米朝の謀報戦を鮮烈に描く、本格スパイ小説の新鋭、入魂のデビュー作。文庫版のための特別描き下ろし短編『ミスター・オリエンタル』も収録。
彼の第三京浜は今日も薄曇り。走っても止まっても、うんざりの毎日へ、類は友を呼んであいつが現れた。ヘッドライトを消すと夜明けが来て、いよいよ朝のどんづまり。わかってない奴らは、これを「青春」と呼ぶ。
「僕」こと鮎川英雄には唯一の才能があった。それは「女を蕩けさせ夢中にさせる」こと。県庁の役人として、熱意はないがそつなく仕事をこなし、複数の女を適宜使いわけて過ごす日々。このまま無難に流れていくかと思えた「僕」の人生は、しかし、叔父・酔助の登場でじわじわと変化しはじめる。「夢と現実の人生を総取っ替えしてもいい」という叔父。いつしか「僕」は叔父とそのニンフェット・鈴村綾とともに無謀な計画に加担することに。果たして「僕」に「大いなる一瞬」は訪れるのか。
清朝・雍正二年(一七二四)。太祖ヌルハチ以来の名家に生れ、遊蕩の日々を送っていた傅蘭が、北京の胡同で、ジュリアン・李と名乗る若い天主教の学僧と出会ったことから、全てが始った。天上の神は信じないフランだったが神父や信徒たちの一途さには好意をもってゆく。そして皇族の血を引く蘇努一族の娘マリアに心をひかれる。だが、男女が同じ場所に集い、天上の神に無償の祈りを捧げる天主教の教えは、皇帝を絶対のものとする中華の考えと相入れない。最高権力者・雍正帝は、同じヌルハチの血を引く蘇努一族に対して、天主教徒を理由に苛烈な弾圧を始める。そのなかにマリアもいた。権力の嵐の中で、天主教一族は!そしてフランは!気鋭の書き下ろし渾身作。
嘉永三年、十三歳の彦太郎(のちの彦蔵)は船乗りとして初航海で破船漂流する。アメリカ船に救助された彦蔵らは、鎖国政策により帰国を阻まれ、やむなく渡米する。多くの米国人の知己を得た彦蔵は、洗礼を受け米国に帰化。そして遂に通訳として九年ぶりに故国に帰還し、日米外交の前線に立つー。ひとりの船乗りの数奇な運命から、幕末期の日米二国を照らし出す歴史小説の金字塔。
下心なんて持たなければ、命取りにならなかったのに!誰もが思い当たるあの瞬間。携帯電話、車、一人暮らしの部屋、カフェ、電話の声…恋に潜むペーソス、シニシズム、孤独。現代のパリの日常を軽妙なタッチで描いたパノラマ12シーン。フランスで久々のベストセラー短篇小説集。
二十年ぶりに刑務所をでた共産主義者。色白の少女を手にしたスカウトマン。刺激を求めて北朝鮮へとぶ劇団主宰者。賞をねらうAV監督。重い過去をもつ不安神経症者。中学時代を振りかえる元銀行マン。そして、死体ビデオ撮影をはじめた友と、育児ジャンキーと化した妻と僕。…甘い薫りに包まれた、連作小説全七編。
比類なき大江戸暗黒小説。鬼才・富樫倫太郎の渾身作、ついに登場!時代小説の面白さの軸をなすのは熱気と筋立てである。破天荒と緊張とリアリティの三つが融合して燃え盛っている。どの登場人物にも火がある。その連続の爆発が心地好い。これに眩暈を覚えない読者は一人もいないだろう。