2002年10月発売
応仁の乱以降、室町幕府は力を失い、群雄が割拠し、世は乱れた。古来、神々に礼を尽くして地上の平安を守ることを務めとしてきた京都朝廷は、衰微を極めた。弘治三年(一五五七)、後奈良天皇は後事を若き関白・近衛前嗣に託し、崩御。前嗣の奔走が始まる。幕府再建による朝権回復を目論む前嗣は、都を逐われた将軍・足利義輝と結び、都を支配する三好長慶を除こうと計画。これを阻もうとする長慶の権臣・松永久秀の秘められた思惑とは?『信長燃ゆ』『関ヶ原連判状』へと続く、壮大な安部龍太郎の戦国三部作第一弾、待望の文庫化。
将軍・足利義輝の挙兵は、三好長慶との和議という妥協に終わり、永禄元年(一五五八)、義輝は帰洛を果たした。なおも長慶を除こうとする関白・近衛前嗣は、正親町天皇即位の礼を機に、勅命をもって諸大名に上洛を促すという奇策に出、若き織田信長を知る。前嗣の計画に、再び反撃に出た松永久秀を操るものの正体は何か?そして太古より神々に仕え、天に対して礼を尽くしてきた朝家が犯した、恐るべき秘密とは?「黄泉の国なくば、朝家の神聖も保たれぬと知れ」-死霊の恫喝に即位の礼の行方は?“戦国三部作”始動。
女のために盗賊から足を洗おうと、心に誓う男。男が愛したのは、何一つ真実を知らない女。やがてそれが劫火となり、すべてを焼き尽くす運命になるとは知らずに-。最後の稼ぎに、江戸屈指の大店へ襲いかかる男、そして賊ども!その先に待つのは、やはり破滅なのか…。鬼才・富樫倫太郎が放つ大江戸暗黒時代小説。
「ねえ、知ってる?瞳子が死んだんだって」瞳子は孤高の存在で、ガラス細工の天使のようだった。繊細で儚げで、他人を魅了する少女に見えた。彼女のことが、可愛らしくて、愛おしくて、腹立たしくて、憎らしくてたまらなかった。死後に届いたハガキには「私のことを殺さないで」とあった-。彼女の不在と、ぼくたちの季節の終焉。ほろ苦い青春ミステリー。
安定と平和を維持していた明の第十代の世、北京の城壁の外にかつて黒竜が主となっていたという伝説の泉があった。その畔で、金も仕事もなく世の中への不満を口にしていた無頼の若者。不意に現れた謎の黒衣の老人が、将来の富貴をかなえてくれると約束した。老人の教唆によって宦官となった若者は栄華をきわめるため皇太子につかえるようになったが-。表題作ほか、夢幻と怪異の世界を描く中国歴史奇譚集。
高校受験生の彬は、困っているところを助けられて以来、恒太のことを好きになってしまった。だが、親友だと言ってはばからない恒太に、彬は告白もできない。そんなとき、恒太の従兄弟で医大生の迅抄が彬の前に現れた。恒太への想いが苦しい彬は、思い切って迅抄に相談するが、迅抄からとんでもない賭を持ち出されてしまった。恒太に振られたら迅抄とSEXしろというのだ。告白するつもりのない彬は、愚痴を聞いてもらう交換条件としてその賭にのるのだが…。
両親、そして母親代わりだった叔母と相次いで亡くし、今や年若い叔父、和博と二人暮しになってしまった高校生の実希。そんな桜尾家に、和博の大学時代の友人、小田切が足しげく通うようになった。だが…この男、いかにもモテそうな容姿なのに正体不明でなんだかうさん臭げだし、和博との親密ぶりもあやしい…もしや叔父貴を狙ってる!?-ついつい勘繰る実希だったが、しだいにそんな小田切が気になる存在に…。スパイシー・ラブ書き下ろし。
40歳になったら死のうと思っている。お前に何が起きた。お前は何をしに来た。型に流し込まれたばかりのコンクリートが次第に固まるように、私の決意も日に日に水分や気泡が抜け、硬化していく。死ぬと決めてからの私は、気持ちが楽になった。壮大なるミロの物語、MIRO’s EXPERIENCE最新作!
学園のスーパー・アイドル、御園生はその儚げな美貌とはうらはらに、実はケンカの達人。今まで伸してきた不届きな輩は数知れず…。だが、長年かぶりまくったネコのおかげで、その真実を知るのは幼馴染みの神楽と生徒会長の速水だけ。そのため、ガタイはいいがココロは気弱な神楽がいつも濡れ衣をかぶり、「学園の影の暴君」の異名をとる羽目に…。そんなある日、敵対する高校から内情を探りに、一人の男が潜入した…。炸裂、学園バトル・ラブコメディ。
彼は、1932年1月、私の人生にはいってきて、それからは一度も立ち去ることはなかった。あのときから四半世紀あまりが過ぎた。そのひとのためには喜んで生命さえも投げだしていいと思う少年の日の友情。第二次大戦前の暗い雰囲気を背景に、貴族の美少年とユダヤ人医師の息子の友情と別れと悲劇的な「再会」を描く必読の青春の書。
「黒船」から始まる、現代の大叙事詩。いつまで戦争を続けなければならないのか。いま世紀を越えた「宿題」に応えるために。
精神医学研究所に勤める千葉敦子はノーベル賞級の研究者/サイコセラピスト。だが、彼女にはもうひとつの秘密の顔があった。他人の夢とシンクロして無意識界に侵入する夢探偵パプリカ。人格の破壊も可能なほど強力な最新型精神治療テクノロジー「DCミニ」をめぐる争奪戦が刻一刻とテンションを増し、現実と夢が極限まで交錯したその瞬間、物語世界は驚愕の未体験ゾーンに突入する。
ドタバタとは手足がケイレンし、血液が逆流し、脳が耳からこぼれるほど笑ってしまう芸術表現のことである。健康ファシズムが暴走し、喫煙者が国家的弾圧を受けるようになっても、おれは喫い続ける。地上最後のスモーカーとなった小説家の闘い「最後の喫煙者」。究極のエロ・グロ・ナンセンスが炸裂するスプラッター・コメディ「問題外科」。ツツイ中毒必至の自選爆笑傑作集第一弾。
時代の最先端を見据えながら、併しそこから距離を取って、時代の最後尾、びりッ尻を「蝸牛の歩み」で歩いて行こうと思うた。迷いの逆渦の中に吸い込まれた青年の「宿縁」はどこにあるのか-「骨身に沁みたことを骨身に沁みた言葉」で書きあげた420枚。
フランス革命から6年を経た1795年のロンドン。街中では、王制復活をめざす貴族やその運動を阻止しようとする共和国のスパイが暗躍していた。そんななかで、赤毛の娼婦ばかりを狙った絞殺事件が相次ぐ。内務省の役人ジョナサンは、その手口から、犯人が1年前に愛娘エリーを殺したのと同一人物だと確信し、とり憑かれたように一人調査に没頭していた。その一方で、革命後のフランスからイギリスに入り込んだスパイの監視という本務においても、フランスの天文学者団体を隠れ蓑にして共和国政府との秘密文書がやりとりされているという情報を入手。真相を探るために、天文学者である異父兄のアレグザンダーを利用することを思いつく。ジョナサンは、さっそくフランスからの逃亡貴族で天文学を研究する美しい姉弟の豪邸に彼を差し向けてみるが、どうやら、屋敷に出入りする人物のなかに、共和国政府側のスパイや連続殺人鬼がひそんでいることが判明する…。娼婦殺し、天文学、暗号解読-絢爛たる物語世界が展開する、衒学的サスペンスの逸品。