2002年10月発売
最凶のドラッグ、偽地域通貨、連続ホームレス襲撃…壊れゆくストリートを抜群の切れで駆け抜ける、新世代青春ミステリー。I/W/G/Pシリーズ第三弾。
小高い丘の上に建つ一軒の屋敷。そこに住む者は、エジプト生まれのミイラのおばあちゃん、心を自由に飛ばす魔女セシー、鏡に映らない夫婦、そしてたったひとりの人間の子ティモシー。世界各地に散らばる、魔力をもつ一族がその屋敷へ一堂に会する“集会”が、いまはじまる。そして、何かが変わる日もまた近い…アメリカを代表する幻想作家ブラッドベリが55年間あたためつづけた、愛すべき“一族”の物語。刊行後たちまち全米で大評判を巻き起こした、特別な人々と特別な思い出を封じこめた特別な本。
日本人だけが地球に居残り、膨大な化学物質や産業廃棄物の処理に従事する近未来。それを指導するエリートへの近道は、「大東京学園」の卒業総代になることであった。しかし、苛酷な入学試験レースをくぐりぬけたアキラとシゲルを待ち受けていたのは、前世紀サブカルチャーの歪んだ遺物と、閉ざされた未来への絶望が支配するキャンパスだった。やがて、学園からの脱走に命を燃やす「新宿」クラスと接触したアキラは、学園のさらなる秘密を目の当たりにする…。ノスタルジーの作家・恩田陸が、郷愁と狂騒の20世紀に捧げるオマージュ。
かつて古代ローマ帝国は、人工衛星を打ち上げるほどの高度な科学文明を享受していた。だが、その没落から数百年、13世紀暗黒時代の西欧では、物質の力を行使する科学を悪とし、人間の魂は生涯に積んだ功徳によって天に召されるという信仰が支配していた。南仏トゥールーズ市の若き医師ファビアンは、放浪の科学者アルフォンスに出会ったことにより、みずからの信仰に疑問を抱く。それは、やがてコンスタンティノポリスから中央アジアへといたる、生涯を賭けた探求の始まりであった…異形の中世を舞台に、信仰と科学の狭間に世界の真実を求める者たちを描く、壮大なる叙事詩。
妻子ある歯科開業医の合田祥一は、学生時代から偽の職業と名前をかたって女性を口説き、その場限りの情交を結んできた。しかも保身のため「三度は会わない」「どんなにいい女でも情を通わせない」を自分の約束事にしていた。由利とも当然、その場限りの関係と思っていた合田だったが、偶然再会してしまい、甘美な肉体を味わううち、合田の心にスリルを楽しむ気持が芽生えてくる。だが、由利が客を装って歯科医院に現れたり、昼食時に待ち伏せされたり、車の中にわざとピアスを忘れられたりするうち、合田の心は…。
愛していながら、自分の愛を隠さねばならない者の切なさのために。愛していながら、いま、愛を交わすことができない者の悲しさのために。愛する者を逝かせなければならない者の痛さのために。愛する者がこの世で息をし、生きてさえいれば、と願うその痛切な想いのために。そのすべてのために…やがて、真実の愛のために。「秋の童話」BS日テレで放映中。