2002年4月発売
「やめないと、おまえは死ぬ」アメリカのみならず、世界中の女性を魅了し続けるベストセラー作家シャンデリア・ウェルズのもとに届いた脅迫状。断わりきれぬ事情から、タナーはやむなくシャンデリアの身辺警護と事件の調査を引き受ける。次々に噴き出す疑惑の数々-別れた夫、トップの座を奪われた元女王、ふられた大富豪、盗作を叫ぶ作家の卵…だが、犯人の特定はもとより、何をやめろと言うのかすら判然としない。五里霧中のまま、ついに悲劇はタナーの目前で起きてしまった。慙愧の念を胸に、誇りと面子を賭けた、探偵の挑戦が始まる。
1960年代、ウェールズ。港町カーディフのイタリア系移民地区に住むガウチ家は、食べる物にもことかく貧しさに喘いでいた。父フランキーは賭博に溺れ、自分勝手で家庭を顧みない。妻メアリと6人の娘たちはその理不尽な暴力に抵抗するすべを知らなかった。幼い末娘のドロレスは誰にも世話をしてもらえず、生後まもなく家族の不注意による火事で左手指を失っていた。姉たちの心がすさみゆく中、懸命に生きるドロレスがただ一人打ち解けられたのは四女フランだけだった。しかし、炎に異常な執着を持つフランは、廃屋に火を放ち矯正施設に送られてしまう。そんな崩壊寸前の家族にとって、長女チェレスタと裕福な商人との結婚話は、経済的にも幸福の兆しとなるはずだった。しかし結婚式の夜、ついに事件は起こった…ドロレスの無垢な目を通して、絶望の底にいる人間の弱さと哀しさを静かに、鮮烈に映しだす衝撃のデビュー作。
父の迎えを待ちながらピンボール・マシンで遊んだデパート屋上の夕暮れ、火星に雨を降らせようとした田宮さんに恋していたころ、そして、どことも知れぬ異星で電気熊に乗りこんで戦った日々…そんな〈おれ〉の想い出には何かが足りなくて、何かが多すぎる。いったい〈おれ〉はどこから来て、そもそも今どこにいるのだろう?-日本SF大賞受賞の著者が描く、どこかなつかしくて、せつなく、そしてむなしい物語たちの曖昧な記憶。
西暦2006年、突如として水星の地表から噴き上げられた鉱物資源は、やがて、太陽をとりまく直径8000万キロのリングを形成しはじめた。日照量の激減により破滅の危機に瀕する人類。いったい何者が、何の目的でリングを創造したのか?-異星文明への憧れと人類救済という使命の狭間で葛藤する科学者・白石亜紀は、宇宙艦ファランクスによる破壊ミッションへと旅立つが…。星雲賞・SFマガジン読者賞受賞の傑作短篇、待望の長篇化。
20年前の破滅的な隕石落下により、大阪は異形の街と化した。落下地点から半径6キロは危険指定地域とされ、人々の立ち入りは厳重に禁止されていた。五感で世界と融合する奇怪なドラッグ「ネイキッド・スキン」や、全身の皮膚がゼリー化する謎の奇病「麗腐病」をめぐって、危険指定地域を中心に、不気味な人々が入り乱れ、人類社会崩壊の予兆の中、変容してゆく人の意識と世界が醜悪かつ美麗に描かれる。ホラーの鬼才が満を持して世に問う、空前のテクノゴシックSF巨篇。
売れっ子マンガ家、陣内龍二の婚約者・里美が交通事故で死んだ。ショックのあまり、陣内は、自作のヒロインを作中で殺してしまう。たちまちファンからの抗議が殺到。その中に里美の死を予知した手紙があった。日付は事故の数日前。陣内が手紙の差出し人を訪ねると、神崎美佐という48歳の落着いた女性だった。部屋には作中のキャラクターが飾られ、熱心なファンであることを示している。何故、神崎は里美の死を予知できたのか?そして、予知された死は防げないのか?23歳の俊英が挑む迷宮的ミステリー。
2002年5月。新宿駅8番線ホームから女子高生54人が集団飛び込み自殺…熱狂と怒号ー渦中の問題作映画『自殺サークル』の謎の全てにこたえる監督・園子温自身による書き下ろし小説。