2002年発売
セックスの時だけ、正直に素直になれる。意地の張り合いのような、昼間の時間しか自分になければ、心は意地悪なままでいただろう。気持ち良さのなかで、いい子だいい子だと囁かれて、泣きながらわたしの心はピンク色に戻ってほぐれていく。こころに届く小説集。
倫太郎が通う中学校で四名の少年が検挙された。校舎の窓ガラスを割った疑いらしい。学校側はきちんとした対応をとれないままでいる。倫太郎や青ポンたちの教師への違和感は爆発する。そんな折、幼稚園時代の担任・エリ先生の結婚祝いを機に、倫太郎たちと、ナンデスネたち教師、園子先生、あんちゃんらかつての教師が一堂に会する。相手の身に添うこと、真剣に生きること、人を理解することとはどういうことなのか?世代と境遇を超え、倫太郎たちは根源的な問いにぶつかってゆく。感動のシリーズ第五弾。
閉じこめられた男女三人。すべてをさらけ出しあった濃密な地下室の夜。ヌードモデル、元ボクシングチャンピオン、OL。弱った心を抱え、占い師を訪ねた者たちが直面した緊迫の一瞬。エロティシズムが究極のサスペンスへ。
何者かに殺され、幽霊となった投資会社の若きオーナー掛井純一。記憶を失った彼は、自らの死の真相を探りはじめる。やがて、彼は自分の周囲に張り巡らされていた黒い罠の存在を知る。すべての謎が解けた時、あまりにも切ない究極の選択が待ち受けていた。デビュー作『池袋ウエストゲートパーク』の大ヒット、そして『娼年』、『スロー・グッドバイ』でさらなる注目をあつめる石田衣良が描く、やさしく切ないミステリー。(解説・豊崎由美)
深く深く海の底に潜ることで空っぽな心を満たそうとするアサコ。誰とでも寝る自堕落なキリ。南の島でフリーター生活をおくるふたりの女たちの毎日は、刺激的で自由で、でも本当は退屈に倦んで少しずつ死んでゆくよう。永遠に続くかのように思われた楽園の日々も、キリのエイズ騒動で終わりがやってくるー。表題作「シュークリアの海」その続編「島は沈まない」で描くアサコの再生への軌跡。
時は鎌倉時代、武門の身を捨て、家族を離れ、十三歳にして出家した一遍。一度は武士に戻りながら再出家し、かつて妻であった超一房や娘の超二房をはじめ多くの僧尼を引き連れて、十六年間も遊行して歩く。断ち切れぬ男女の愛欲に苦しみ、亡き母の面影を慕い、求道とは何かに迷い、己と戦いながらの漂泊遊行で、踊念仏をひろめ時宗の開祖となった男。その捨てる心さえも捨てた境地に踏み入り、遊行先で没するまでの、波瀾の生涯を描く長編小説。
最愛の姉の、突然の訃報。悲しみに沈み、カナダから帰国した男を待っていたのは、姉がこの世に残した、たった一人の甥の誘拐だった。甥の解放の条件は、ある「仕事」-。男たちの愛と憎しみが、犯罪を加速させる。熱く、激しい闘いの三日間。注目の大型作家、待望の長編エンターテインメント。
政略結婚により、聖都を離れヤーファに移り住んだヴァレリー。共同統治の理想はしかし、実現にはほど遠かった。十字軍、イスラム双方が要地アスカロンを睨み緊迫状態にあるのだ。そんな折り、ヴァレリーの前に一人の少女が現れる。「蒼き狼」とも深い関わりを持つ彼女の要求とは?ヴァレリーとエルシードの運命が急展開!人気シリーズ怒涛のクライマックス。
交渉は決裂し、ヴァレリーは虚しくヤーファに戻った。しかし、そこには、彼とアリエノールを狙う暗殺者が待っていた。いずれにも和平の道はない。ヴァレリーに決断の時が迫っていた。一方、聖都ではエルシードに異変が起きていた。なす術もなく思い悩む日々にあって、彼女に出撃の命が下がった。この戦いがもたらすものは、和解か決裂か!?人気シリーズ、衝撃の完結編。
「われらの名を、アテナに伝えろ。そのために生かしておいてやる。娘をとり戻したくば、シチリアまで来い…われらはギガス!」-古の〈ギガスたちとの戦い(ギガントマキア)〉の伝説がここに、よみがえった!原作の車田ワールドの世界観はそのままに壮大なスケールで幕を開けるオリジナルストーリー、新展開。大人気コミック、待望の初ノベライズ。再びうなれ、ペガサス流星拳。
天皇の死を通して日本近代の成り立ちを追った歴史ミステリー ●天皇崩御の朝に当時最高部数を誇った新聞が、新元号をスクープ。しかし、それは「昭和」ではなく「光文」とされ、すぐに訂正された。この誤報の反響は?そして、担当記者のその後は? ●柩をかつぐ 大葬において重要な役割を担ってきた八瀬童子の運命を、貴重な文献と多くの老人からの聞き取りで解き明かした歴史的にも注目された作品。明治・大正と二代にわたって柩をかついだ老人の証言は圧巻。 ●元号に賭ける 森鴎外の元号に対する思いと、その後を託された吉田増蔵の足跡を追い、「昭和」に決定した経緯を明らかにする。 ●恩赦のいたずら 終戦時に松江市で起こったクーデターの推移と首謀者たちの処遇を追うことで、天皇の大権である「恩赦」「大赦」の機能を浮かび上がらせる。 イデオロギーとしての天皇制ではなく、現代史・民俗誌の観点から天皇の本質に迫った猪瀬直樹の原点。
永遠の故郷喪失者ショパンが目前に迫る死を振り払い、鍵盤の上に奇跡を呼ぶ。“絵画の虐殺者”ドラクロワが恐るべき魂の闇と対峙し、至高の色彩に挑む。小説家サンドがショパンへの愛を超え、革命の夢を追う。激動する十九世紀パリを舞台に、芸術家達の群像を遍く描き尽くす空前絶後の超大作。
世界には歯があり、油断していると噛みつかれるー。ボストン・レッドソックスのリリーフ・ピッチャー、トム・ゴードンに憧れる、少女トリシアは、9歳でそのことを学んだ。両親は離婚したばかりで、母と兄との3人暮らしだけれど、いがみ合ってばかりいる二人には、正直いって、うんざり。ある6月の朝、アパラチア自然遊歩道へと家族ピクニックに連れ出されるが、母と兄の毎度毎度の口論に辟易としていたトリシアは、尿意をもよおしてコースをはずれ、みんなとはぐれてしまう。広大な原野のなかに一人とり残された彼女を、薮蚊の猛攻、乏しくなる食料、夜の冷気、下痢、発熱といった災難が襲う。憧れのトム・ゴードンとの空想での会話だけを心の支えにして、知恵と気力をふりしぼって、原野からの脱出を試みようとするが…。9日間にわたる少女の決死の冒険を圧倒的なリアリティで描き、家族のあり方まで問う、少女サバイバル小説の名編。