2002年発売
高校入試を終えてすぐ入院し、一学期を休学したぼくのために両親が用意したのは、ブロンドの美人家庭教師と2か月間カプリ島で“勉強”の遅れを取り戻すというカリキュラムだった。蠱惑的な彼女の姿態に魅せられた童貞のぼくが覗き見たバスルームでは、刺激的な光景が目撃される。充実した夏、ぼくの性は恐しいほどの進歩を遂げる。
蛇目孫四郎ー向島にある中野播磨守清茂の広大な屋敷内にある剣術道場に住まう剣士である。それも十二、三人いる居候剣士の中でも一、二の凄腕である。江戸市中で事件が起きると北町奉行所同心、蛙半兵衛が知恵を借りにやってくる。半分は孫四郎の懐を狙って酒を飲みにくるのだが。文政八年二月、商家の娘が寺詣りの帰りに殺された。
この秋公開の話題のアニメ映画「TAMALA2010」をノヴェライズ&完全攻略。アヴァンポップな物語/映像の迷宮を読み解く、ハイパーテキスト本!永遠に1歳を繰り返すパンクキャット、タマラの謎がいま明かされる。
荒木村重の謀反に乗じて摂津を脱走し、北条氏に庇護を求めて以来、岡崎三郎信康は伊豆韮山に厄介になっていた。ここは北条と武田の城が入り乱れる最前線。信康は小田原にとって体のいい盾である。そのころ、大久保忠世たちは信康の正室徳姫を武田方より奪還すべく、わずか二〇〇ほどの数も顧みず、二股城に寄せていた。-若殿、姫を取り返しましょうぞ。されば、次は…。三河の強情者たちが奮迅するは、信康のためだけではない。-失われし故郷を欲すればこそ。牡丹雪の舞い散る中、忠世は巨大な法螺貝を吹いた。それに続いて、異様な鬨の声が起こった。城が炎に包まれていく。人の一生は重荷を背負った遠き道。徳川の兵どもの終劇、とくとご覧あれ。
千年前、西洋からシルクロードを渡ってきたユダヤ人は、東洋の京で中国人になった。地中海のへりから旅立ち、いくつもの砂漠を経て、一つの国にしばらくたたずんでから、またもう一つの国に向って、渡り歩いて、そして住みついた。渡ってきては、なった。李となった。趙となった。ここまで渡ってきたのだから、さらにこちらから遠くない海を越えてもしかしたら日本へ…次の路地から、とつぜん、大勢の声が聞こえてきた。「老外!」という、いくつもの高さの声が、同時に石の塀と塀の間でこだました。“名前”という謎を抱えてアメリカから日本、そして中国へ。国境を越え歴史を遡る、新たなアイデンティティの旅が始まった。いま最も注目すべき日本語作家・リービ英雄の最新傑作。
世界一周クルーズに仕掛けられた罠。うごめく殺意の影。絶対不可能な状況の中で、犯人はなぜ凶行に及んだのか。浅見光彦と岡部和雄、二人の名探偵が船上の「罪と罰」に迫る。
一枚のモノクローム写真に秘められた懐かしくいとおしい日々の記憶。人生の晩年を迎えようとしている女性随筆家は、愛した男への思いを胸に生きてきた。だが、小さな出来事が平穏な生活にさざ波をたてる…。表題作「夢のかたみ」ほか、再会の一夜のドラマを綴る「チルチルの丘」など、遠い日のエロスを溢れるノスタルジーで描く。失われた時間への哀惜と感傷に満ちた5編。
甘ったれでわがままな7歳の少女、手毬。家族に愛され、平穏な日々をおくるはずだったのに…。17歳、かつては姉だった人を母親と呼ぶ二人だけの暮らし。27歳で掴んだ結婚という名の幸せ。その家庭を捨て幼なじみと駆け落ちした37歳。そして…。複雑に絡みもつれる家族の絆、愛と憎しみ。運命に流されるひとりの女性の歳月を、半世紀にわたって描く連作長編小説。
総務部人事課係長の石原滋が一目惚れした十一歳年下の妻瀬里は、フランス人形の如き美しさ。だが、表情に乏しく、夫との肉体的接触を嫌った。子供を作るときでさえも。耐えかねた滋は、部下の高田千絵と浮気をするが、それを察知した瀬里は、自殺騒動を起こし「別れてください」と懇願する。しかし、妻の行動に激怒した滋は、離婚を断固拒絶して自室に引きこもり、家庭内別居で対抗する…。
秀一は湘南の高校に通う17歳。女手一つで家計を担う母と素直で明るい妹の三人暮らし。その平和な生活を乱す闖入者がいた。警察も法律も及ばず話し合いも成立しない相手を秀一は自ら殺害することを決意する。
戦国の世、衰微著しい京都朝廷で後奈良天皇が崩御し、後事を託された時の関白・近衛前嗣は朝権回復のために奔走を始める。室町幕府再建が不可欠と、将軍・足利義輝と連携する前嗣の前に、松永久秀が立ちふさがる。
将軍・足利義輝の挙兵は、三好長慶との和議という妥協に終わり、永禄元年(一五五八)、義輝は帰洛を果たした。なおも長慶を除こうとする関白・近衛前嗣は、正親町天皇即位の礼を機に、勅命をもって諸大名に上洛を促すという奇策に出、若き織田信長を知る。前嗣の計画に、再び反撃に出た松永久秀を操るものの正体は何か?そして太古より神々に仕え、天に対して礼を尽くしてきた朝家が犯した、恐るべき秘密とは?「黄泉の国なくば、朝家の神聖も保たれぬと知れ」-死霊の恫喝に即位の礼の行方は?“戦国三部作”始動。
女のために盗賊から足を洗おうと、心に誓う男。男が愛したのは、何一つ真実を知らない女。やがてそれが劫火となり、すべてを焼き尽くす運命になるとは知らずに-。最後の稼ぎに、江戸屈指の大店へ襲いかかる男、そして賊ども!その先に待つのは、やはり破滅なのか…。鬼才・富樫倫太郎が放つ大江戸暗黒時代小説。
「ねえ、知ってる?瞳子が死んだんだって」瞳子は孤高の存在で、ガラス細工の天使のようだった。繊細で儚げで、他人を魅了する少女に見えた。彼女のことが、可愛らしくて、愛おしくて、腹立たしくて、憎らしくてたまらなかった。死後に届いたハガキには「私のことを殺さないで」とあった-。彼女の不在と、ぼくたちの季節の終焉。ほろ苦い青春ミステリー。