2003年3月25日発売
会津四十万石加藤明成は、淫虐の魔王ともいうべき大名。家老の堀主水は毎々諌言したが、ついに主家を見限って退転し、一族の女三十人を鎌倉の東慶寺に託し、高野山に入った。怒り狂った明成は、幕府の許可状をもとに会津七本槍を使い、主水一族と女達を捕らえて江戸に引きずってゆく。芦名銅伯によって育った幻法を操る七本槍と戦う女達。影のように彼女達を援護特訓する柳生十兵衛。忍法対幻法の凄絶な闘いを描く、山田風太郎の代表的傑作長編。
柳生十兵衛の援護により、かよわい女達が会津七本槍の四人までを討ち果たした。男心をそそる豊満な肉体を敵前にさらし、一瞬の油断を誘って敵を討つ、みごとな“女人殺法”が繰り出される。江戸から本拠地会津へ逃げ帰る加藤明成ら暗殺集団。慈僧沢庵をともない、敵陣に乗り込む堀一族の七人の美女と柳生十兵衛。だが、そのゆくてには、驚天動地の地獄の幻法「夢山彦」が…。『魔界転生』と並んで風太郎忍法帖の二大雄編と称される傑作長編。
長野県飯田市のダム湖で、バラバラ死体が発見されるという現実の事件が起きた。その後に姿を消したある管理人夫婦が犯人とされたが、事件を新聞で読んで、不審を抱いた小さな広告会社の経営者がいた。彼は自分なりに真相を推理し、竹村という刑事を主人公にして、生まれて初めての小説を書き上げた。だが、本当の大事件はそれからあとに起きた。数年後、彼はこの小説を自費出版したのだ。忘れもしない一九八〇年のクリスマス、後にベストセラー作家となる内田康夫とその処女作「死者の木霊」が、ついに我々の前に降誕したのである。
昭和初期。オカルト、猟奇事件、ナショナリズムが吹き荒れる東京。歌人にして民俗学者の折口信夫は偶然に、しかし魅入られるように古書店「八坂堂」に迷い込む。奇怪な仮面で素顔を隠した主人は木島平八郎と名乗り、信じられないような自らの素性を語り出した。以来、折口のまわりには奇妙な人、出来事が憑き物のように集まり始める…。ロンギヌスの槍、未来予測計算機、偽天皇、記憶する水、ユダヤ人満州移住計画。-昭和の闇を跋扈するあってはならない物語。民俗学伝奇小説の傑作、登場。
兄孫策が死んだ。孫権にとって青天の霹靂ともいうべき痛恨事であった。しかし張昭、周瑜の諌言を得て、孫権は奮起する。呉の威光を磐石にすべく反逆者李術を攻めて勝利を収め、実力を天下に示した。そらに諸葛瑾、魯粛、陸遜などの俊才を得た孫権は仇敵・黄祖を討ち、江東、江南を平定する。一方、北を征した曹操は荊州へと兵を進めた。
猖獗を極める「貸し剥がし」にあえぐ中小企業。闇の紳士たちに縛られて、いまだに「不正融資」に走るメガバンク。その間に立つ志あるミドル行員たちに救いはあるのか?過酷な債権回収の現場、政治家への便宜供与など外部からは見えない銀行内部のドラマを、元支店長の著者が生々しく描く。
辣腕弁護士トニーのもとに持ち込まれた依頼は、高校時代の親友でスポーツ競技のライバルでもあったサムの弁護だった。いまやレイクシティ高校の教頭となっているサムは、教え子の女子高生マーシーと関係を持ったあげく、殺害した疑いをかけられていたのだ。トニーの脳裡に甦ったのは、彼自身が28年前に恋人アリスンを殺したとして無実の罪を着せられ、苦悩した悪夢のような日々。苦い思いを噛みしめつつ、故郷の町に舞い戻ったトニーは、絶対不利な裁判を水際立った弁護で強引に評決不能へと持ち込もうとする。だが、裁判が進行するにつれ、パンドラの匣のように封印された彼自身の過去の悪夢が、事件に重くのしかかってくるのだった。すべての真相を知りながら沈黙をつらぬく殺人者の正体とは?かくして、真実をめぐって静かなるゲームが繰り広げられることになった-。法廷サスペンスの鬼才が心血を注いだ、追憶と懊悩の人間ドラマ。
緒戦の大勝利に沸く兵士たち。しかし国王の陣幕だけが重く沈んでいた。軍を解散せよ、さもなくばー敵は養父・フェルナン伯爵を盾にした露骨な脅迫にでたのだ。大義か?ペールゼン侯爵の専横に屈するのか?苦渋の選択を迫られたウォルは逆転を賭して、バルドウの娘に伯爵救出を託したのだが。
ミステリアス学園ミステリ研究会、略して「ミスミス研」。ミステリは松本清張の『砂の器』しか読んだことがない新人部員の湾田乱人が巻き込まれる、怪事件の数々。仲間からのミステリ講義で知識を得た湾田が辿り着く、前代未聞の結末とは!?かつてない挑発に満ちた、鯨流超絶ミステリ、遂に登場。
暴力、ドラッグ、幼女売春…。ジャズバーのバーテンの顔をもちながら、闇の世界に生きる夏彦。彼を次々と襲う危機また危機。果たして夏彦は、暴力と欲望の地獄から幼女アリスを連れて逃げ出すことができるのか?骨太なストーリー展開と押し寄せる感動の波が見事に共振するミステリー第六回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。
日本高野連理事で広報担当の柏木は、奇妙な不安にかられていた。選抜大会決勝戦の朝、対戦する2チームの選手たちが、練習の予定時間を過ぎても甲子園球場に到着しないのだ。まもなく、デスクの電話が鳴った。「社会福祉法人に47億円を寄付しろ。できなければ選手たちは永久に帰さない」。前代未聞の誘拐事件に、兵庫県警の石田警部が捜査に乗り出す-。
親友のたった一言が、運命の歯車を狂わせた…。第二次大戦下のロンドン郊外。「スパイごっこ」をする二人の少年の前に見え隠れする「ドイツのスパイ」、大人たちの秘密、最後に明かされる意外な真相とは?ウィットブレッド小説賞受賞。