2003年6月発売
営業マンとしてジャカルタに赴任して二年。博夫はミロから逃げようとし、しかしむしろ深く填まり込んでいく自分を感じていた。すべては高校二年のあの日、庭に薔薇が咲き乱れる家のベッドでともに過ごした時から始まったのだ。そこは彼女が義父と淫らなゲームに興じた場所。濃密なミロの世界を描く短篇集。
「ようそんな口から出まかせを平気でいえますな。閻魔さんに舌ぬかれまっせ」「かまへん。わしゃ二枚舌や」。大阪府警の刑事たちが漫才そのものの大阪弁で事件を解決する。フグ毒により客が死んだ事件に端を発する表題作をはじめ、下着ドロの意外な真犯人を描く「飛び降りた男」など、傑作短編全6編を収録。
「武蔵野に名も蔓こりし鬼薊今日の暑さに乃て萎るる」。強盗、追いはぎ何でもござれ。白昼堂々、金品を強奪する荒稼ぎで八百八町を騒がせる凶賊、鬼坊主一味。だが、頭の清吉と情婦のおもんを始め、はみ出し者の若者たちは強い絆で結ばれていた。悪に魅入られし者の破滅的な生き様を描く大江戸ノワール。
晩秋の下仁田街道を足早に歩いてゆく渡世人の姿があったー飴色に焼けた三度笠を被り、黒の棒縞の合羽、腰に黒鞘の長脇差を差した長身の男の名は、伊三郎。故国を棄て、無宿渡世を続ける伊三郎は、道中何者かから逃れる弥吉という男と出会った。奉公に出された許嫁に会いにゆくという弥吉に、伊三郎は道連れを求められるが、彼には追手の影が…。やがて、弥吉の旅に隠されたもう一つの目的を知った伊三郎にも、刺客たちが容赦なく襲い掛かるー。著者渾身の書き下ろし時代長篇。
笑顔の両親のもとに、泣いて生まれてきたあかんぼう。いじめを知り、人を欺くことを覚えてしまったあかんぼう。泣き、喜び、悩み、ひたむきに生きることを学んだあかんぼう。幸福に気づき、成功を収め、人生に翻弄され、挫折を知ったあかんぼう。99才まで生き、笑いながらわたしのところへやってくるあかんぼうの、人生劇場。
ニューメキシコ州南部に口を開ける世界最大の洞窟群カールズバッド。その調査隊に同行した同僚が中で重症を負った。一刻を争う非常事態に、アンナは救助のために、閉所恐怖症を抑えて闇へと降り立つが、救助作業中に不自然な落盤が起きる。救助隊員の中に殺人犯が潜んでいる!底知れぬ暗黒の大洞窟の迷路に入り込んだパークレンジャー、アンナに最大の危機が迫る!サラ・パレツキー絶賛のサスペンスに富んだアウトドア・ミステリ最新作。
主婦・友希江(大阪府八阪市在住・35歳)、病床の夫の左遷を謀る企業への復讐!もう我慢はしない。夫にも、会社にも、法にも頼らない。今までの鬱憤をひとつ残らず晴らしてやる!!負けるものか、負けてたまるか。これくらいのことで、誰が-。主婦たったひとりで大企業と全面戦争突入。
仕事ひと筋で、娘に構ってやれずにきた。せめて嫁ぐまでの数年、娘と存分に花見がしたい。ひそかな願いを込めて庭に植えた一本の桜。そこへ突然訪れた、早すぎる「定年」…。桜、萩、すいかずら、あさがお、花に託した四つのこころ。人情時代小説の決定版。
“稲妻の竜”と恐れられる抜刀田宮流の影月竜四郎は、その光景に慄然とした。小柄で、女と見まごうばかりの色若衆が、陰流の達人を一刀のもとに斬り伏せたのだ。京・鞍馬山で乱八流を極めた栗本新之丞であった。やがて、初めて吉原に登楼し、花魁・夕霧の魔性の肌の虜になった新之丞は、金のため殺人鬼と化す。竜四郎危うし!官能と撃剣凄まじい時代活劇の第三弾。
土佐の山に囲まれた盆地に、ひっそり佇む嬉才野村。村の家々では、かつて盛大な「神祭」が行われていた。それは、氏神様に一年の収穫を感謝する祭りであり、遠方からの親戚縁者が集い、村が賑わう日でもあった。村に住む老女・由喜の脳裏に甦った、四十年前の「神祭」の奇妙な記憶とは…。ある盆の日、山中に忽然と消えた公務員・定一。山に隠れて、あることないことを吹聴し、村人を嘲弄し始めた。定一は神隠しにあったのか、それとも死んでしまっているのか…。嬉才野村を舞台に、神秘と幻想美あふれる土俗世界を描いた、珠玉の短編小説集。
怪異譚を蒐集するため諸国を巡る戯作者志望の青年・山岡百介は、雨宿りに寄った越後の山小屋で不思議な者たちと出会う。御行姿の男、垢抜けた女、初老の商人、そして、なにやら顔色の悪い僧ー。長雨の一夜を、江戸で流行りの百物語で明かすことになったのだが…。闇に葬られる事件の決着を金で請け負う御行一味。その裏世界に、百介は足を踏み入れてゆく。小豆洗い、舞首、柳女ー彼らが操るあやかしの姿は、人間の深き業への裁きか、弔いかー。世の理と、人の情がやるせない、物語の奇術師が放つ、妖怪時代小説、シリーズ第一弾。
5歳年上のいとこ、かれんと恋におちた大学生・勝利。そうとは知らず、勝利に思いをよせる星野りつ子。追いつめられた勝利は、ついに星野に「秘密の恋」をうち明ける。単身赴任していた勝利の父親も帰京し再婚、勝利の妹も誕生して、かれんとその弟の丈そして勝利の3人だけの生活が変わろうとしているー。番外編、丈の恋物語も収録する好評シリーズ第5弾。
「わたしは腕に犬を飼っているー」ちょっとした気まぐれから、謎の中国人彫師に彫ってもらった犬の刺青。「ポッキー」と名づけたその刺青がある日突然、動き出し…。肌に棲む犬と少女の不思議な共同生活を描く表題作ほか、その目を見た者を、石に変えてしまうという魔物の伝承を巡る怪異譚「石ノ目」など、天才・乙一のファンタジー・ホラー四編を収録する傑作短編集。
一夜にして森が消え、周囲が海になってしまった伝説の島イル・サン・ジャック。ミチルとロイディがこの島の宮殿モン・ロゼを訪れた夜、曼陀羅の中で首を落とされた僧侶の死体が見つかる。いったい誰が頭を持ち去ったのか。かつてある街の塔で出会った美しい女王と、ミチルの謎は解かれ、そして、新たな謎へと引き継がれていく…。
デルフィニアの内乱に勝利し、ウォルは再び玉座に即いた。黄金の戦女神とたたえられたリィもまた王女の称号をもって白亜の宮殿に迎えられた。それから三年ー平穏だった王都に暗雲が立ちこめる。リィをつけ狙う不気味な暗殺者。不可解な公爵家の挙兵。陰謀を察知したウォルの決断とは。