2003年9月発売
薩英戦争、鳥羽伏見の戦い、戊辰戦争、西南戦争…激動の幕末・明治を駆け抜けた男、村田経芳。近代「もの作り」の開祖にして、村田銃の開発者。欧米にも知られた名射撃家の波乱の生涯を描く長編時代小説。
幸せに見捨てられた女。偽りの幸せにすがる女…。緩慢な日常の流れの中に身をまかせる女たちが、決意する一瞬。誰も、気づかぬうちに、女は心に変調をきたす。偽りの幸せなんて、許さない。あの人の不幸を、心から願う-。直木賞作家の円熟味あふれる9つの物語。
兵庫県城崎郡の余部鉄橋下の河原で、犬を連れて早朝散歩していた近くの住人がバラバラ死体を発見した。地上41メートルの鉄橋の上から墜落したらしい。だが、警察の調べで他殺であることがわかった。被害者は神戸の法律事務所に勤務する弁護士。休暇で愛媛に行っていたはずなのに、なぜ城崎で殺されたのか?兵庫県警の石田警部が捜査に乗り出す。石田が犯人を追いつめたとき、意外な結末が-。
定年退職した警視庁の名物刑事川島が、八か月後函館本線の経路際で死体となって発見された。首に絞められた痕があり函館警察署は殺人事件として捜査を開始した。十津川の調べで川島は自分が在職中に手掛けた殺人事件の再調査をしていた事が判明した。川島が逮捕した殺人犯は獄死していたが、生前川島に冤罪を訴えた手紙を出していた。その事件の真犯人が川島を殺したに間違いない。十津川は重要容疑者を捜し出したが、彼には強固なアリバイが-。
昭和二十年初夏。愛知県各務原、海軍航空技術廠。(なぜ、今ごろレシプロ戦闘機などを開発したのか。あと数年もすれば、ジェット推進の戦闘機の時代になるというのに)次期戦闘機の飛行試験。坂井三郎は嘆息しながら、二機を見やった。一機は中島飛行機と陸軍共同開発の試製重戦、キ-84。もう一機は海軍と三菱重工の対抗馬、A7M2。(戦訓は一撃離脱が正しい戦法だと教えている-)上空は薄くたなびく雲を除けば、明るい青一色。坂井は“本日の相棒”に向かい歩き出すと、ふと空を見上げた。零戦の勇士、富岳、有人噴進機、震電計画…そして、新たなる大戦。
村椿五郎太、25歳。先祖の不始末といまいち野心に欠ける遺伝子が災いして、うだつのあがらぬ小普請の身。目下の目標は、学問吟味に合格して御番入りを果たすこと、なのだが、文茶屋での代書屋の内職も忙しい。そんなのんびり男を焦らせたのは、幼なじみの紀乃。学ならずんば、恋もままならずー。どうする、五郎太!代書屋に持ち込まれる騒動、そして一進一退の恋と学業の行方や如何に。
引き篭もりの少女・江利子と、“絶対”と名付けられた犬のコンビが繰り広げるぬるい日常を姉の視線から描く表題作『江利子と絶対』。頭髪に問題を抱えた中年男・多田と、その隣人の帰宅を生垣に潜んで待つ女・アキ子。ふたりの悲惨な愛の姿を過剰なまでのスケールで描き出した『生垣の女』。問題児でいじめっ子の波多野君と、その手下の僕と吉見君。3人の小学生が迷い込んだ、窓のない屋敷は…。手に汗握る殺人鬼との攻防を描く、ホラー傑作『暗狩』の3編を収録。
鳥のように空を飛びたい!本邦初のハンググライダーを作った男・頓所好勝。彼と、その夢を共有した男たちの熱い闘い。感動のノンフィクション・ノベル。戦前、たった一人で見事なハンググライダーを作った男とは、どういう人物なのか?航空の歴史ともいうべき1900年代、表舞台に立つことはなかったが、空を飛ぶ夢の実現に賭けた男の人生を描く。