2003年9月発売
連続爆弾犯のアジトで見つかった、心を持たない男・鈴木一郎。逮捕後、新たな爆弾の在処を警察に告げた、この男は共犯者なのか。男の精神鑑定を担当する医師・鷲谷真梨子は、彼の本性を探ろうとするが……。そして、男が入院する病院に爆弾が仕掛けられた。全選考委員が絶賛した超絶の江戸川乱歩賞受賞作。2000年週刊文春ミステリーベスト10 第1位。(講談社文庫) 選考委員が大絶賛、満場一致の乱歩賞受賞作連続爆弾魔のアジトにいた、あらゆる感情が欠落した男。男の正体の解明に挑む精神科医と共に事件の核心にたどりついた刑事が見たものとは。新ヒーロー誕生の快作
シャーロキアンのクラブ「ベイカー・ストリート・スモーカーズ」のパーティーに出席した、桑原崇と棚旗奈々がまきこまれた連続殺人事件。しかも現場にはダイイング・メッセージが。現実の事件と「ホームズ譚」の謎が交錯する中、崇の推理がたどりついた真犯人とホームズの秘密とは?好調シリーズ第3弾。
かつてはキンジーを威嚇恫喝し、大いに恐れさせていた昔なじみのドーラン警部補も、寄る年波からか健康を害し、今は捜査の第一線から身を引いている。そんな彼が突然訪ねてきた。聞けば、かつての先輩である元刑事のステーシーが癌に冒され、余命いくばくもない。ステーシーの、そしてドーラン自身の心残りになっている事件の解決に手を貸してくれないかと言うのだ。事件は18年前、偶然にも彼ら二人が第一発見者となった他殺死体遺棄事件。郊外の石切場付近に打ち捨てられ腐乱していた、少女のものと思われた死体で、全身に多数の刺し傷が認められた。だが、多くの遺留品にもかかわらず、ついに死体の身元は判明せず、ジェーン・ドウと名付けられたまま、警察の記録書類のなかに埋もれていたのだ。退屈な日常の調査業務にうんざりしていたキンジーは、依頼を引き受ける。だが、二人の老刑事とともに遺体の発見現場に向かったキンジーは、そこで思わぬ事態に直面する…。1969年8月、サンタ・バーバラ郡で発見され、以来今日に至るまで身元不明のままという、現実のジェーン・ドウ事件にインスパイアされて執筆し、全米で大きな反響を呼んだシリーズ最新作。
「リリーはどこだ?」ナノテク学者ピアスの自宅に、男たちから熱狂的な電話が次々かかってきた。ピアスはその女に会ったことさえなく、明らかに間違い電話だった。しかし、リリーが評判の娼婦だと知るにおよび、ピアスは彼女についてインターネット上で調べ始めた。肩に届く黒髪、ブラウンの瞳、深い褐色の肌。粗い目のネットでできた黒いネグリジェで胸を包み、褐色の股間のラインととがらせた唇が男を誘う。淫らな美神がそこにはいた。リリーに惹かれたピアスは、ホームページの管理会社を訪ね、彼女が失踪している事実を知る。その直後、リリーを捜す彼の元に脅迫が…。人工的に創られた欲望空間の悪夢を描くサスペンス小説。現代アメリカ・ハードボイルド小説界を代表する著者の新境地。
東京・杉並区の連続殺人事件は、毎回死体の傍らに悪魔の絵柄のトランプが置かれることから“ジョーカー連続殺人事件”と呼ばれた。その容疑者・田宮は犯行を自供したものの、裁判では一転して冤罪を主張。同じ頃、息子を“ジョーカー”に誘拐されたと信じる母親は、息子を取り戻そうと孤軍奮闘していた。裁判を、そして母親を嘲笑う真犯人“ジョーカー”はどこに?驚愕の結末が待つ誘拐&法廷ミステリ。
旧制第一高等学校に入学した川端康成(1899-1972)は、1918(大正7)年秋、初めて伊豆に旅をして、天城峠を越えて下田に向かう旅芸人の一行と道連れになった。ほのかな旅情と青春の哀歓を描いた青春文学の傑作「伊豆の踊子」のほか、祖父の死を記録した「十六歳の日記」など、若き川端の感受性がきらめく青春の叙情六篇。
「最も多く愛する者は、常に敗者であり、常に悩まねばならぬ」-文学、そして芸術への限りないあこがれを抱く一方で、世間と打ち解けている人びとへの羨望を断ち切ることができないトニオ。この作品はマン(1875-1955)の若き日の自画像であり、ほろ苦い味わいを湛えた“青春の書”である。
男と女。2人をつなぐものは、愛の言葉と月の満ち欠けだった。彼女のアドレスに残された81通のラブレター。これは僕が2年間にわたって書いたラブレターである。相手はどこかに実在する女性。Eメールで送り、また送らなかった手紙もある。日付も、時間も、手紙も、これは現実のものだ。
衝撃のノンフィクション! ●地下鉄サリン事件を追う問題作 ●著者による書下ろし「解題」入り 著者初のノンフィクション長篇作品。 地下鉄サリン事件の被害者からのインタビュー形式での話題作。 普通の人々が、この日、どのように行動し、事件にかかわってしまったか、事実が語る書下ろし長篇。
ロンドンの法律事務所の書類金庫の中からある日、外遊中のはずだった顧客スモールボーン氏の遺体が発見された。事務所で煙たがられる存在だった共同管財人の彼を、なぜ、いつ、誰が、ただでさえ人目に付く事務所の中で、それも開閉に多くの鍵を必要とする面倒きわまりない金庫に、どうやって詰め込んだのか?チャンドラーの法律顧問でもあった英国の弁護士作家が、さりげないユーモアを込めて描き出した人間パズル。二十世紀ミステリの黄金時代を代表する正統的本格派ミステリの本邦初訳登場。
大学受験に失敗した諸口ヒカルは、有名作家である父親に抑圧され、鬱屈した日々を送っていた。恋人の萌子とオートバイだけが救いだった。しかし、萌子が妊娠してしまい、追い打ちをかけるように、父の盗作事件が発覚する。そして、ついにヒカルの鬱屈は臨界点を超えてしまうのだった…。風に吹かれて、転がって、痛いほどに純粋な青春が鉄馬に乗って、走り出す。行く先は、再生か破滅か。
精神科医・南川藍子の前にあらわれた三人の男たちは、それぞれが脳に「傷」を持っていた。試合中、突然マスコットガールに襲いかかり、殺人未遂で起訴されたプロ野球選手。制服姿の女性ばかりを次々に惨殺していく連続殺人犯。そして、事件捜査時の負傷がもとで、大脳に障害を負った刑事。やがて、藍子のもとに黒い影が迫り始めるー。人間の脳にひそむ闇を大胆に抉り出す、傑作長編ミステリ。
魏の曹丕、蜀の劉備、呉の孫権。天下は三分された。孔明に諌められ一度は東征を断念した劉備だが、関羽の弔い合戦を果たそうと画策。ついに蜀軍は呉に向けて東進する。孫権は苦しい選択を迫られた。劉備の軍を迎え撃つ間に、北方から魏に攻め込まれたなら万事休す。双方を相手に戦う力など呉にはない。止むを得ず陸遜の言に従い、魏の曹丕に臣従を申し入れるが…。
図書館を出たブルームは、モリーのために猥本を探し、酒場でナショナリストと口論。浜辺で若い女の下着に欲情、モリーら女たちに思いを巡らす。読みやすい訳文、詳細な訳注で大作の全体像に迫る。
僕の首の後ろにも、他人よりもちょっと濃いめの産毛が生まれたときから生えていて、これが物心ついたころから僕の抱えた爆弾だったのだけれど、十三歳になってすぐのある晩、自分の鎖骨をこすっていて、そこにいつもとは違う感触を感じてうつむいて、首元に赤くて長くてコリコリと固い明らかな鬣の発芽を確かめたとき、それまでは祖父と父と同じように背中に負ぶっているつもりだった爆弾が、気づけば僕だけ胸の上にも置かれていたと知ってショックで、その上さらにその導火線にとうとう火が点けられたのを実感して、僕は絶望した。-福井県・西暁の中学生、獅見朋成雄から立ち上がる神話的世界。ついに王太郎がその真価を顕し始めた。ゼロ年代デビュー、「ゼロの波の新人」の第一走者が放つ、これぞ最強の純文学。